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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十五章:カチコミの時間じゃい!

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683.キレ過ぎだろ part1

「やあ、ようこそ、わたしの“熱注昭ヴィヴァ・ザ・ディーヴァ”、改め、“盤魔鄽リーサル・イリーガル”へ」


 鋭利で高熱の砂や岩が積もる、燃える砂漠と火山の混合物。

 あちこちで火を立てる鉱物は、化石燃料なのだろうか?


「なんで名前が二つあるんだよ」

「わたしらの名前は、わたしらを承認する観測者が付けるんだ。今までその座は人間が占有してたけど、今やわたしらモンスターだって、決める側になれるってコト」


 「きみらとわたしら、主客しゅかくが逆転する日も近いんだよ」、

 マグマから頭を出す砂の丘、女がサマーベッドでくつろぎながら、見下ろすように言い渡す。


「わたしらが観測者に、定義者になるんだ!わたしら自身が何者かを決めて、わたしらがきみらのことを決める!世界の仕組みに近いわたしらモンスターこそが、きみら人間より決定者に相応しい!」


「つまり何?“自称”ってこと?」


 サングラス越しでも分かるくらいに眉が跳ね、演説に伴って広げられた両腕が、所在なげに宙を彷徨さまよい、やがて力なく落とされる。


「これだからどーにも、ガキンチョの相手はイヤだねえー……。知性(あふ)れる会話っていうのに付いていけないんだから、合わせるわたしらも苦労するよ」

「自分に酔ってるインテリ気取りって、割と陰謀論者と変わらないよな」


「何が言いたい?」

「いや、別に深い意味はないけど」


 なんだか、思ったより余裕が無いように見えてしまう。

 俺が油断してるせいなのか?

 それともこいつ、実は想像以上に「ちっちゃいヤツ」なのか?


「………きみはさあ、分かってない。分かってないんだ、無知だから」


「お前が口を動かすのは、単に見下して気持ち良くなる為か?それとも本気で、俺を説得できるなんて思ってたりする?『なるほど分かりました』って、俺が降伏してくれるって、期待してる……なんて、そんなわけないよな?」


「………」


「………ないよな?」


「きみらは世界の、本当の姿を知らない。どうやってこの世界が出来ているかを知らないから、わたしに逆らおうなんて間違いに、平気で手を染められる」


「おいおいおい本気かよ?」


 こいつ本当に、今から俺を納得させようって思ってんの?

 どこまで自分の正しさに自信があるんだよ凄いな。逆に尊敬しそうになるわ。


「聞きなよ。重要なことさ。この世界のり方についてさ。いいかい?この世界は侵略を受けているんだ!」


 また両手を横に開いて、なんだか凄いことを言ったふうな顔をしているが、こちとらテンションが冷めていくばかりだ。


「侵略っぽい事なら、お前のダンジョンが現在進行形でやってるな」

「わたしは守護者だよ。この世界を守る側さ」

「何?人間が環境を破壊してどうのとか、そういう手合いだったのか?」

「違う違う。わたしはきみら人間のことも、その歴史と軌跡の全てを、守ろうとしてきたんだ」


 言ってる意味が分からない。

 こいつのやってきたことと言えば、誰かを殺すことばかりだ。

 味方であるキャプチャラーズの面々、その命さえ平気で投げ捨てて、


 じゃあこいつは、何を守ってるって言うんだ?


「ダンジョンは物語、つまり誰かの記憶だ!だけど全て、ある条件に合致するものに限定されている!なんだか分かるかい?」


「……誰か、何かが“死んだ”記憶?」


「思ったよりやるね!そう!全てが“死”に関する物語!だけど、それだけじゃあない!」


 彼女は立ち上がり、弁舌に熱を入れ始める。


「忘れられた記憶!それさ!一度は世界から失われた物語!それが消滅を拒んで足掻いた結果、この世界に漂着し、残り続けようと侵略した!それがダンジョンの始まりだ!」


 忘却された、異世界の物語。

 それらが自らを残す為に、この世界に定着する質量を産み落とそうとした。

 それを成すまでの過程の姿、さなぎのようなもの。それがダンジョン。


「だけど、奴らが入り込もうとしたところには、先客が居た!歴史とは、連綿とつむがれた死の目録だからね!居場所を作るには、別の死を蹴落とすしかない!そうしてその小競り合いに負けた歴史も、ダンジョンへと落ちぶれてしまった!」


 在来種と外来種の生存競争。

 それがこの世界で起こっていたと、そいつは言う。


 この世界の過去を埋める、死を伴う物語。

 その領域における永住権の奪い合い。


「わたしはね!この世界の元の形を、ダンジョンなんてなかった歴史を知っている!どういう風に空白を埋めれば、“本物”に戻せるかを熟知している!


 元のわたしはきみと同じように、この世界の住民だったんだ!そして初めて、本物の質量を生み出したダンジョンとして、運命に選ばれた!


 もう分かるだろう?わたしには使命がある!だからわたしが、“永級1号”に選ばれた!この世界を、あるべき姿に戻す為に!」


 「使命」。

 つまり、物語の選別。

 外力にじ曲げられた歴史を、本来の姿へ修正すること。


「至難を極めたよ!結構な歴史が、閉窟や“席の喪失”という形で完全に忘却されていた!


 そうなったらもう、似たような物を見繕って埋めるしかない。微妙に違うけれど、それでも妥協するしかない。わたしの知っている世界との差を、なんとか開き過ぎないように腐心して……


 そうやって繊細な調整をしている間にも、外来種共は大量に湧いて、えていく!忌々しいったらありゃしない!」


 お立ち台の上でポジションを変えながら、身振り手振りまで演じてくれる。

 まあ、面白くないと言えば、嘘になる。


「“転移住民リーパーズ”!あれは滅びるべきだった!それが世界の意思だったんだ!ただ奴らが消えても、世界中のダンジョンはそのままだ!あちらを潰しても、こっちで再興する!


 一度に一万匹出て来るモグラ叩き!終わりが見えないイタチごっこ!


 手が足りない!わたしにはもっと!もっともっと力が要る!全世界のダンジョンを、完全にコントロールするほどの力が!」


 だから、勢力を伸ばしている、と言いたいのだろう。

 全ては「本物の世界」とやらの為だと。


「ダンジョンは残ろうとする物語……、つまり、魔法みたいに、人の認知でその力を強める?」


「そうだ!きみらがわたしのことを、この永級1号を畏怖してくれるほど、わたしは更なる高次こうじへと至る!わたしの大事業はその為にあるんだ!義は“環境保全キャプチャラーズ”にあり!」


「………よく分からないけどさ」

 

 さっきから聞いてて、何故か言及されてない点がある。




「お前が『外来種』じゃないって、どうしてそう言い切れるんだ?」

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