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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十五章:カチコミの時間じゃい!

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680.まあすんなりとはいかないか!

 豪水の柱は、階層のどこに居てもよく見えた。


 平坦に死滅した砂と灰の大地が、背の高い遮蔽を取り払い、視野拡張に一役買っていた。


 迷宮は、単調な滑り台と化した。

 ただ、味方が作ったものとはいえ、そこに飛び込むには勇気が必要だった。

 触れただけで人体が破壊されるような、激しい急流であったから。


 だが四つ足形態で走り回っていたガネッシュは、その抜け道へと喜んで身を投じた。

 本当に、心の底から現状を楽しんでいた。


 ダンジョン内での崩落など、滅多に見られるものではない。

 まして、ある人物の体内回路の影響力で、ダンジョンが一時的に変形させられるという、魔学界で大いなる意味を持つ一事。

 

 彼はそれについてらなければならない。

 可能な限り多くを得なければならない。


 その為には体感することだ!

 魔学において、実感以上の観測方法は存在しない!


〈さあ!どのような事が起こっているのですかな!?私に見せてくださぁぁぁぁぁっっっ!!〉


 強制落下!

 いや、途中で何度か計器上の上下が傾き、時に反転した!

 特定の階層では、下から上へと流れている!


〈空間のじれ!繋ぎ目を認識できないでしょうかっ!ああ!この記録はなんとしても持ち帰らなければ!〉


 彼が収集されていくデータと経験に喚起していたその時、横合いから巨大な振動がぶつけられ弾き出される!


〈オゴッ!なんとっ!ノイズですぞ!折角の機会と言うのに!〉


 苦情を言いながらも熱された砂の上で転がり多腕たわんの受け身によって起きるガネッシュ!


「ガネッシュさん!」


 上から降りて来た六波羅がそれを見て滝から跳び出し駆け寄る!


〈ぶぉぉぉおおおおおおおお!ホォォォオオオオオオオッ!!〉


 巨大な管楽器や弦楽器のセッションめいた重低音!

 それが水の柱に伝わって中から人を押し出している!


〈ぼぉぉぉおおおおおおお!ボォォォオオオオオオオオ!!〉


 横幅だけで数十メートルの鯨が顔を出す!

 デフォルメされたように丸く肥大な頭から、破壊的な楽曲をがなり奏でる!

 どうやらill(イリーガル)の一体!だが言葉の気配を見せてくれない!


「あんまり会話にはならなさそうです!」

〈同感ですな!学者と言っても、鯨の言語は専門外ですぞ!〉


 巨大水球発射!

 その圧倒的な気配は周囲の空間すら歪ませている!

 ガネッシュは聖水を染み込ませたスクロールにハーケンを刺して魔力抽入!六波羅のビートがそこに伝達!


 円柱型の防御フィールド構築!

 水球がぶつかり、中に閉じ込めた振動エネルギー解放!

 地盤の一切れごとごっそり吹き飛ばされる!


〈なんと!魔法陣を据えている地面ごと吹き飛ばすとは!なかなか頭が回りますぞっ!〉

「そうみたいですね残念ながら!」


 飛ばされる彼らの背中側から、またもや過熱が押し寄せる!

 マグマだ!

 重さを持った赤き波!

 

 六波羅が起こす振動が二人ともを沈まぬように上へと飛ばす!


 直立形態となったガネッシュがスクロールで作る障壁の形状を調整!より小さく集中的な流線形に!肩から生える腕で六波羅を担ぎながらサーフィンのようにマグマの上を滑る!

 

 と、彼らが渡る紅蓮の海が唐突に分かたれた!

 だんせつしたのは竜胆色だ!


「申し訳ないのですけど!」


 トロワは二人の近くにひらりと着地し、顔の前にレイピアを立て、彼らに背を預けるように立つ。


「もう少し賑やかになりますから!」


 鯨の反対から、巨大な何かの接近を感じる。


「トロワさん、あれは?」

「恐らくこのダンジョンのD型かと」

「マジかよ……」


 前門の永級D型、後門のill(イリーガル)

 どちらか一つではなく、どちらもが同時に迫り潰して来る!


 最悪のコラボレーションに3人で挑む!


 と思っていたのもつか


「「ええ、そのままこちらへ」」


 光輪にぶら下がりながら滝から現れる二人一組!

 彼らは誰かと会話しているようだった。


「「不思議な感覚です。近くなったと思えば、離れていくようにも感じる」」


 ナビゲートは困難を極めたが、しかし彼らには精神が繋がっている端末があり、ゆえに彼女を呼び寄せられる。

 

「「ですが……ええ、どうやら、こちらの精神に応じて、目的の階層を引き寄せられるようです。はい、ですから、もうじきに」」


 水流から彼を追うように、同じような二人がもう一組と、その片方にぶら下がる一人がポップ!


「「父の国を」」


 幾重にも張られた白い障壁が、鯨の音波水流砲弾の連発を耐える!


 そして水が止まり、全階層が再び隔絶!

 参加者が確定!


 鯨が頭をアコーディオン式に上下へ折り畳み、その大口をかっぴらいた!


〈ホォォォォォオオオ!ほぇぇぇぇえええええ!“鯨鯢ホエール”ぅぅぅぅぅうううううう!!〉


 中に詰まっていたマッコウクジラ達が合唱!

 ill(イリーガル)ネームを宣言する!


「ひゃー!まったく、スッゴいのに目を付けられちゃっちゃー!」


 一組減った“聖聲屡転ガヴリール”に同行する空中で、不敵に笑うリーゼロッテ!

 そこに大小さまざまなマッコウクジラが殺到していった!







 時間は少し戻って、8層。

 滝を生み出したニークトの前に、


「あれっ!?私が最初?」


 詠訵が真っ先に降り立った。


「私、何故か1層スタートだったんですけど……?」

「それは『真っ先に死ぬだろう』と8層に放り込まれたオレサマへの当てつけか?」

「そ、そうじゃなくてですね……タハハ……」


 やはり階層の繋がりは滅茶苦茶である。

 或いは、「一刻も早く」という想いが、彼女をここまで最速で運んだのだろうか。

 

 進と並び、最深部を目指す。

 その為にも急がなければ、という強い念が。


「他の面々は、『順に一つ下に降りるものだ』という思い込みで遅れているのかもしれないな」

「ああ……、ススム君、そういう律儀なことしそう……」

「見て来たように目に浮かぶ」


 顔を見合わせて苦笑しながら、とにかくこの場をモンスターから守ろうと周囲に警戒を走らせて、


 突如足元爆発。


「きゃっ!」

「なんだっ!?」


 魔具が破損!

 滝が止まり穴が塞がった!


「どういうことだ……!気配が……!」

「また見えないタイプの魔力……!?」


 惑う彼らが着地しようとしたところがまたも破裂!

 一瞬の爆炎に呑み込まれかける!


「こんこぉんっ!」


 リボンが作った球形障壁がオレンジ色に高く打ち上げられる!


「魔力爆破!」

「いや、違う……!爆発が、燃焼が見える……!」

「!そっか!じゃあこれって……?」

「ガスだ!無色無味無臭の可燃性ガス……いや、或いは、敵の魔力が、魔法が、消している!魔法によって見えないよう偽装された物質が、一帯に漂っている!」


 有害であったり危険だったりするものは、必ずしも分かりやすいとは限らない!

 敵の魔法は、そういう人体が検知せずスルーする劇物を辺りに撒いて、点火している!


「見つけろ!この能力、“提婆キャメル”とは様子が違う!」

「あの女の手先になってるヤツが……、これをやってるモンスター本体が、この階層に居る可能性が高い、ってことですね!」


 爆炎爆風爆撃が連続!

 彼らに足の踏み場を与えない!

 どこに避けてもその先に破壊が待ち伏せる!


 対処困難な感知不能爆薬の機雷きらいげん

 その中でill(イリーガル)と“かくれんぼ”!


 だが特殊ルールとして、鬼よりも隠れる側が格上!

 「みっけ」で勝敗を決してくれる強制力が不在!


 魔力と能力スケールで勝る相手を見つけ、自分達の実力で引きり出し、殺すことが勝利条件!


 相手がルール通りに負けてくれるまで殴り続けなければ、

 終わらない、

 終わらせられない!


 彼らに見つかることが、事実として致命傷でなければ、敵は何度でも隠れ直し、爆撃し続けるだろう!


「同時進行で“奴ら”と遊びながら、それに勝たないといけないわけだ」

「面倒ですね……!」


 炎や砂嵐を纏った軍団!

 

 探す側をこれでもかと妨害し、場合によっては八つ裂きにしたがっている勢力!


 非対称この上ないゲームが始まった!

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