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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十五章:カチコミの時間じゃい!

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672.「最悪」を実行させないために part2

「全部杞憂に終わるかもしれないけど……」


 進は少し考えて、しかしハッキリと首を横に振った。


「『大丈夫かも』で大量破壊兵器を撃ってみる、そんなのを人間の常套手段にはしたくありません」


 丹本は過去、ドミノボムの実地試験場にされている。

 その後、100年経とうとも、根拠なきレッテルを投げつけられること含めて、今も被害は尾を引いている。


 「どうなるか分からないからやってみる」、人の探究心は可能性を開いてきたが、時に何かを不可逆に破壊する。


 ドミノボムが完成した時より、それを「試しに」で人に向かって撃ってしまった時の方が、人類は何かを踏み外していた。


 同じ事を、また起こさせたくはない。

 進の個人的感情としては、それが結論だった。


「「我々救世主教会もまた、ほとんど同じ考えです」」

「私達救世教にとっても、聖都はじゅーよーだからね~。人のデッカい罪と、結び付けたくはないんだよにぇ~」


 “聖聲屡転ガヴリール”が言い、リーゼロッテが繰り返し頷いて見せる。


「少なくとも、ほかに手があるうちはにぇ、きょくたぁんなやり方に走らない、節度ある人類で居たいじゃぁん?」


 「意外と害が少ないかもしれない」、「少なくとも自分達がどうこうなるわけではない」、「何かあっても、顔も知らない遠くの誰かが痛い目を見るだけ」、それでトリガーを引く軽率さは、人が克服すべき想像力不足の一つ。


「「そういった経緯の上で、我々は貴方に協力を要請しに来ました。“日進月歩ノン・フイト・ウナ・ディエ”」」

 

 進は求められている役を理解した。

 断るという考えはなかった。

 

 どちらにせよ、やるつもりでいたことだ。

 もっとじっくり真綿まわたで締め上げるつもりだったが、こうなった以上、速さ優先で最短経路をぶち抜くしかない。




「“提婆キャメル”は俺が殺します。今からASAPで」


 


 話は決まった。

 時間もそこまで残されていない。

 準備もそこそこに、すぐに出発する必要がある。


「「“聖都奪還エディクタム・ニコメダ”作戦として、既に国連には実行を通知済みです。各チャンピオンの能力行使についても、承認を得ています」」

『丹本側も、準備に必要な手続きは達成されていると考えて頂いて結構です』

「ルカイオスも右に同じだ」


「距離的には、飛行機で北側から回る方が近道ですよね?」

「「いいえ。現在“不可踏域アノイクミーヌ”北部は、とても侵入に適しているとは言えません」」

 

 3D地図が地中海側にズームし、様々な画像や動画を表示する。

 

「「ここ数週間、“環境保全キャプチャラーズ”側からの侵攻が激しく、“不可踏域アノイクミーヌ”内の主力が集中的に投入されているようです。ill(イリーガル)本体の目撃事例も確認されています」」


『モンスター側だけじゃなくて、人類側もピリピリしてるので、協力してくれるかと言えば難しいのです……』


『彼らからすれば、自分達から離れた南部に大規模攻撃が仕掛けられ、モンスターの勢いが削られるのは、逆に願ったり叶ったりですから。クリスティアに睨まれ、余計なタスクで戦線が崩壊するというリスクを冒して、我々を通すメリットがありません』


 そちら側は隷服教のテリトリーでもある為、救世教を軸とした彼らの言う事を、すんなり聞いてくれるかが怪しいのも問題である。


 交渉が成功したとして、その時間のロスは未知数。

 残り時間2日ちょいという状況で、チャレンジしたい困難ではない。


「制空権の奪い合いも加熱していて、対空砲火もいつも以上に激しいらしい。空を飛んで突っ込むのは危険だろうな」


「「よって我々は“ここ”から、このIUSSM(ユースム)前哨基地から陸路で出発し、北部人類戦力と対峙中の“環境保全キャプチャラーズ”の背面を突く、というルートを決定致しました」」


 地図上に大陸を縦断し、それから地中海周りをぐるりと迂回する線が伸ばされる。


「その方が、飛行機で行くより自分達の身を守りやすいし、誰にも文句を言われず、結果的に最短で永級1号に着ける、ってことですね?」


『航空機で向かい、撃墜された場合、そこからの移動が魔法と徒歩のみになりますからね』

『最初から車で行く方がトータルでプラスなのです…!』


「休み無しで昼夜ぶっ通しで飛ばして、まあ車の速さならちょうど1日くらいか?途中で休憩や妨害、地形の問題が挟まっちまうだろうが……、南部が手薄になっているってのも考えると、時間的余裕はあるっちゃあるか」


「イフリ大陸と中東地域の間にある運河、あそこを渡る方法も用意してあるんですよね?」

「「無論です」」

「でしたら、我々も志願者のみ同行させて頂きます」


 そう言うジャバリ少尉は、さっきから基地内にあれこれ指示を出し、出発と撤収の準備を進めていた。


「危険だよぉ?私達も正直、あんまり全員を守り切る自信ないしにぇー……」

「問題ありません。この組織に入隊した時点で覚悟は出来ています。それにあなた方が成功した時、永級閉窟をすぐにでも国連に通知する役が必要でしょう?」


 母体の一つに国連を持つ彼らであれば、速やかで政治的な力を持った、事態収束の報を届けられる。


 制限時間ギリギリ、あと一分、あと一秒でカウントダウンが完了するとなった時、「遠隔通信が不調でダメでした」では、報われないというものだろう。


 永級1号の外で彼らが待機し、いつでも長距離に報告を飛ばせるよう設備と態勢を整えていれば、その恐れをより小さくすることが出来るのだ。


「ここは私達の故郷ですからね。私達の手で取り返さなくっちゃ」


 全ては希望を少しでも広げる為に。


 世界中から集まった勇者達による、原初の永級討伐任務が開始された!

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