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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十五章:カチコミの時間じゃい!

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667.フ……ッ、最高に仕上がったキレ者感……

「こう争と、車どろぼうの話を聞いて、おいかけた、ってことですか……?」

「ああ、うん……あ、でも、捕まえる為じゃなくて、君達の安全の為にね?」


 二又の後ろ髪を肩の前に垂らす少女から、ヘンな奴を見る目を返される。


「ガネッシュさん。ちゃんと翻訳してくれてます?」

「私は学者ですぞ?」

「前から言おうと思ってたんですけど、それって全ての理屈をスキップできる魔法の言葉じゃないですからね?」


 と、二人で顔を見合わせて丹本語で話していたら、怯えた目を向け直されてしまった。


 ああごめん。そうだよな、知らない言葉で目の前で自分達のこと相談されるの、ストレスだよな。


「何が、ほしいん、ですか……?アタイたち、何で、かせがないといけない、んですか?」

「ああー……、そういう理解になるのか……」


 「命を助けるなんて、何かしらに利用する為に違いない」、彼らは、少なくとも女の子はそう考えているようだ。


 たぶん、纏め役なのだろう。

 さっきから彼女しか話してないし、他の3人は彼女に引っ付きながらも、守るような姿勢を取っている。


 まあ、気持ちは分かる。

 俺もそういう手を喰らった覚えがある。


 丹本より死が近く、未成年が本人の意思に関係なく戦わされるこの地では、頻繁に起こっていてもおかしくないだろう。伝聞なのか経験則なのかは定かじゃないが、その警戒は当然だし正しい。


「えーっとね」


 体を大きく見せないよう、膝を折って視線を合わせる。

 「もともとそんなに大きくないだろ」とか言わない。

 ちょっとは伸びたんだぞ、これでも。


「まず、俺はススム。よろしくね」

「……サラーサ」

「サラーサちゃん。俺は割と遠いところから来たんだけど、土地勘が無くてさ。案内してくれる人が欲しいんだよね。どこが危ないとか、聞きたいし」


「………そのためだけに、アタイたちを?」


「ほら、ここらに住んでる人って、怖い人が多いじゃん?変に後ろ盾がある人と接触すると、何してくるか分かんないし、騙されるかもしれないからね。その点で君達は、とっても安全、でしょ?」


「あんなに強いのに、そしきがこわい、んですか?」


「モンスターとは慣れてても、人とは戦いたくないから。それに、トラブルに対処する自信があったとしても、そもそもそういう面倒に巻き込まれない方が、どう考えても得でしょ?人の街でくらい、物騒な話とは無縁にくつろぎたいんだ」


 「胡散臭い」という声が、少年3人の目からビリビリ響く。

 まあ、嘘だからな。俺、1年くらいこの辺ウロウロしてるし。


 「助けに来た」って言っても、用心深い彼らは信じてくれそうにない。

 少なくとも、残り時間が足りなさそう。


 だったら、信頼を得るのは諦めて、信用を取ることにした。

 スッゲー適当だけど利害関係をでっち上げれば、「何したいか分かんない正体不明野郎」よりはマシな印象になる。


「君達みたいな孤立してる子達が、俺みたいなのを騙すのって、ほら、無謀だろ?」


 抗争のドサクサで、少年兵が車2台で逃走。

 俺が得た情報は、そういうものだった。


 襲撃した側か、壊滅した側か、どっちの戦力かは分からなかったけど、組織にいないと生きられない少年少女が、命令にそむいて持ち場を離れたのは確かだ。


 死んだも同然な彼らは、どうする?

 どこまでも、野垂れ死にを覚悟して、行けるところまで逃げるだろうか?

 それか、命を賭け金にして、一発逆転を狙うだろうか?


 俺がそうだったみたいに。

 

 じゃあこの近くで、人生を一変させる希望が、最も密に詰まってる場所とは、どこなのか?考えるまでもなく、ここ、“不可踏域アノイクミーヌ”だ。

 彼らはここに、未来を求めて突っ込んだんじゃないかと、そんな考えが浮かんだ。


 若干精度が怪しい予想だったけど、こうして彼らを保護できたのだから、そこまで大外しはしてなかったみたいだ。

 

 というわけで、彼らは元の居場所を失くしている。

 頼れる先が無く、だから戦力はこの4人で打ち止め。


 さっき散々格上だって見せつけた俺と敵対したら、全滅以外の道が無い。

 「当面は俺に逆らえない、無害な奴らだ」、と俺が考えていると、彼女は想定してくれる筈。


 彼女達を「使う」ことにメリットがあって、そして要求自体はそこまでハードルが高くないと、そう思ってくれればいいのだ。

 

 子ども達がある程度こっちの言うことを聞いてくれて、思ってもみない行動を取らない大人しめな状態となって、俺とガネッシュさんに連れられて“検疫線”の向こうに戻る。


 で、あとはしかるべき機関に繋げて、保護させる。

 ガネッシュさんはそういうところにも顔が利くのだ。

 これで万事解決。


「……ちょっと、考えていいですか?」

「いいけど、あと5分くらいで決めてくれると助かるかな」


 女の子が頷いてから、彼らは額をこすり合わせるように内緒話を始めた。


「どうでした?『合理的に取引するお兄さん』キャラ、出来てました?」

「ところどころに無理があった気もしますが……この極限状態の勢いで誤魔化せる範囲ですな。名演技でしたぞ」

「いぇいっ」


 どうよ!

 俺だっていつまでも交渉ベタじゃないぜ!


(((年端も行かない子ども相手に、化かし合いの勝利で得意顔、ですか)))

(やめろよ人の事を同年代以上に勝てないから雑魚狩りしてる小物みたいに)

(((どこに事実との相違点が?)))


 ぐぬ……っ!

 どうにか言い返そうとして、否定できないことが分かり悲しみがあふれていく……!


「称賛させて頂いた筈ですが、何故そのように悔しげなのでしょうか?」

「気にしないでください……」

「もしや、“可惜夜ナイトライダー”が見せる人格と会話を!?どんな内容か是非お聞かせを!!」

「お問い合わせは墓の下までどうぞ」


 こんな情けないやり取りを記録に残せるか!

 何なら墓を暴かれても教える気ないから!

 死後も永久に封印指定だ!


「あの……っ」


 と、そこでサラーサちゃん達の意見が纏まったらしい。


「えっと、右から、アフロがワヘド、ボサボサなのがアシャア、ボウズ頭がイスナーン、です」


 サラーサちゃんが手で示し、一人ずつ名前を明かしていく。


「取り敢えず、成約ってことでいいかな?」

「はい……おねがいします……」

「うん。サラーサちゃん、ワヘド君、アシャア君、イスナーン君、よろしくね」


 どうやら、彼らを守る為にく神経は、最低限で済みそうだ。

 順調順調。


「よし、みんなで生きて、“不可踏域アノイクミーヌ”を出よう!」


 制限が少なくて済むのなら、俺がしくじる道理なんてない。


 この救出作戦は、勝ったも同然である。

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