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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十四章:リアルタイムで世界を変えろ

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2061/8/31 11:00~2061/8/31 12:00 part2

『サトジ!完全詠唱でなんとか——』


「しっかりなさい!」


 ぴしゃりと、涼やかな竜胆色が、岩を一つ割り砕く。


「このダンジョンのどこに居ようと、どの道質量の増大に巻き込まれて、ペシャンコになるだけ!」


 そうだ。

 この空間が閉じられたものである以上、いずれは逃げ場がどこにもなくなる。


「逃げることを考える必要なんてないわよ。活路は、奴に向かう方以外に無い!私、間違ったこと言ってるかしら?」


「そ、その通りです!」

「前進あるのみ、か!どうにもしゃくだが、脳をトロワ仕様にするべきか!」

「どういう意味よそれ!」

「確かに、まだ成長し切ってない状態でここまで近付けたことを、幸運と言えるかもしれません!」


「でも、どうするんですっ!?このままあいつの所に向かっても、たぶん重力で潰されますよ!?」


 ミヨちゃんが言うように、今、あの岩の周囲にどれほどの力が掛かっているのか、考えたくもない。


 到達するだけで、そこに立った敵の形を平らにする。

 なんて画期的な防御フィールドだ。

 

『そこで、だ』


 次に聞こえたのは吾妻さんの声!

 

『引っ張る力がヤベーってんなら、それをポジティブによー、捉えさせて貰うことにしたぜ……?』


 黒いゲートが方々に出現!

 中から黄金が輝く尾を引き落下!


「そうか!物体生成系の魔法なら…!」

「質量を持ってる!重力をこっちの武器として使える!」


『金ってのは、比重が、密度が高い。それも、金属の中でも特に、な』


 乗研先輩がそう言いながら、ゲートに追加の流星をぶち込む!

 

『俺の黄金は偽物だがよ……、“罪業と化ける財宝(ファーヴ・ナックル)”、思い込みには、重さもあるモンだ』


 黒焦げた岩に、金色がギラリと突き刺さっていく!

 お寺の鐘をいたような悲鳴!

 だが表皮が割れ飛んでも、全体を貫通できるほどの力はない!

 

 内側まで刺さることはあっても、ピンポイントにコアを撃ち抜けない限り、破壊を上回るペースで膨れていく!


『やっぱ足りねえか…!』

「いえ!先輩!そのまま続けてください!」


 俺は隕石の迎撃を一時中断し、「ぴ、ぃぃぃいいいいいい……っ!」全霊全力で没入!「ひょ、おおおぉぉぉぉぉぉ……っ!」腕の一部を“嚆矢叫炎ナリカブラ”状態に変え、その表面をバキリと剥がす!


 良い感じに鋭くなるように成形し、「トロワ先輩!ちょっと借ります!」先端に竜胆色を纏わせて、高圧魔力噴射で加速させた右腕で投げた!


 魔学的生体ピッチングマシーン!!


 それは中に籠めた魔力で加速、軌道調整をしながら、黄金の衝突痕に突き刺さり、砕ける!


「もうひとぉつッッッ!」


 再構築した腕の表皮をさっきと同じ要領で、剥がし、水晶の刃にして、投げる!


 竜胆色の効果で、今度はもっと深くに届く!


 このやり方は、実質俺の皮膚を投げ込んでいるようなものだ。

 そして、その中には魔学回路、つまり魔素という通り道と、魔力というエネルギーが入っている。




 だったら、衝突時の感触が、俺まで伝わってくるのは道理!

 これを繰り返せば、敵の内部を完全把握できる!




 だけど、俺が外れたことで、隕石への防御が薄くなっている。

 そこを狙って大小数々の隕鉄来襲!


 それらを避けて隙間を通し、象牙色に包まれたビンが俺達に当たる!

 それが割れて、中の聖水が魔力に反応!

 防御膜を作ってガード!


『そちらの作業に集中を!』


 ガネッシュさんからの援護だ!

 瓶が尽きない間なら、俺達を持たせてくれる!


「見つけた!」


 撃ち込むたびに、魔学回路の形状を大まかに掴み、八投目で遂に捉えた!

 コアはそこか!


「吾妻さん!これからビーコンを発信するので、そこを囲むみたいに黄金板を降らせてください!」

『いーぜ!やってみろ!』

 

 魔力で掴んだタヌキ人形を飛ばし、敵体表近くの一箇所に滞空させる!

 注文通り、その周囲を円状に切り取るみたいに、黄金板が連発される!


 俺はストックしていた水晶刃を左右2発連続投擲!


「出てこい石コロォッ!」


 掘り当てた!


 黄金を前に逃げ場所を失っていたコアが、今ので完全に露出した!


 コアはもっと深くへ潜ろうとして、


 その下にゲートが開かれる!


『見えたな?俺の視界に入ったな?テメー、終わったぜ!』

 

 岩石体から切り離され空中に放られるコア!

 俺はそれを目掛けて、連投れんとうを——




 コアが、砕け散った!




「な!?」

「やったのか!?」

「いや、まだとどめは…!」

 

 けれど確かに、そこにある質量が、巨大な力学が、ジワジワと消失していくのを感じる!


 まさか、これって!


「自害しやがった!俺に殺されると、ダンジョン自体が消えるから!」

しつけが行き届いてんなあ!使い捨てに手間かけやがる!』


 「使い捨て」!このill(イリーガル)はそういう役回り!

 文字通りの鉄砲玉!

 いや、大砲クラスの破壊力だったけど!


「“提婆キャメル”…!あいつ…!」


 同じイリーガルでも、リーパーズの間に見えた気がする、仲間意識や親愛のようなもの。

 それが感じられない気がするのは、俺が甘っちょろいだけなのか。


「おい!集合だ!急げ!」


 物思いにふける余裕は用意されていない。

 俺達はこれから、大量の警察の前に放り出されるのだ。


「今からこのダンジョンは崩壊します!」

「災害救助のような名目で、丹本の人員がルカイオスの敷地内に入って来ている筈だ。総理派の潜行者で固めた隊が」

「幾つかのグループに分かれて、一斉に散開が一番いいか?」


 さっきの奴が弱めだからか、それとも自分の死後すぐに崩れるように設定したのか、ダンジョンが消えるペースが早い!


 あと十数秒で、ここには居られなくなる!


「皆さん!俺に考えがあります!乗研さんに協力して欲しいんですが——」


 


「確保ォーッ!」


 機動隊員が一斉に飛び掛かる!

 展開された黄金板は一瞬で幻覚効果を解除され、単なるドーム状の壁と化したその積層を、玉ねぎのように外から一枚ずついていく!


 数十秒掛けて、遂にその内側に踏み込み、そこで構えた被疑者達を打ち据えようとして、


 空間にひびが入った。


「これは、幻覚能力!何故!?」

「さっきは、他に神経を使ってた。それに、無理して能力を行使しても、ゴールがバレてたら意味がない。リスクと期待値が見合ってなかった」


 最後の層を剥いた先には、六波羅ただ一人。


「手の内を隠して、正解だったよ。俺の解呪なら、『なんとかなる』んだな、これが」


 乗研の黄金板に干渉しようとする敵の魔法効果を、六波羅の魔法効果で相殺した!

 しかも、一部の黄金板の解呪は問題なくさせてやることで、全ての黄金が目に見えていると、誤認させた!


「彼の代わりに言うと、“罪業と化ける財宝(ファーヴ・ナックル)”、見えているがゆえに、見えなくなるものもある」


「しまった!」


 気付いた時にはもう遅い!

 六波羅の首に魔力貯蔵封じの枷が嵌められる!

 けれどももう周囲には、他のメンバーの影すら残っていない!


 そして、最も厄介なのは、


「ど、どっちだ…!?」


 本命の仨々木佑人がどの方角に逃げたか、分からなくなった!


 彼が佑人に同行すると、正反対の方角に逃げたグループは、真っ先に彼の魔法の効果範囲から外れ、見つかるだろう。


 その早さから、逆に佑人が向かったのがどの方角か、特定しやすくなる。

 だから彼は、出来るだけ長く、広い範囲をカバーできるよう、その場に残ったのだ。


 そして恐らく彼は、佑人の行き先を知らない。

 意図的に、見ないようにしているだろう!


「まだ遠くには行っていない筈だ!探せ!」


 神出鬼没のチャンピオン二人や、強力な幻覚を操る男、融合能力を持つ少女、気配察知に長ける少年等、潜伏に向いている者ばかり。


 たった一瞬で、彼ら全員が行方不明となった。

 それを数十分で全て見つけ出し、その中で本命を見極め、確保する。

 ディーパー追跡に長じる丹本警察といえども、それはあまりに困難を極めた。


 そして、決死とも言える全力の捜索(むな)しく、







『12時、じゃな』


 タイムリミットが、来てしまった。


『出番じゃ、“確孤止爾アトモス・スフィア”』


 指令は、確かに下された。


「イエス、プロフェッサー」

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