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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十四章:リアルタイムで世界を変えろ

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2061/8/31 07:00~2061/8/31 08:00

 パトカーがまた1台、隣の道路に入ってくる。

 交通の混雑度合いが高い24区内に入れば、追跡の手を緩めざるを得なくなる。


 その前に止める!

 彼らは当然そう考えており、だからこそここで決めるべく、なしの全力を投じてきている!


「見えるだけで10台以上居ますよ!」

「関係ねーな!“虚世マキャーラ”!」


 速度で負けて徐々に追い着かれていたのを、ゲートを通って道を幾らかかっ飛ばすことで距離を稼ぎ、再度後方へ引き離す!


「あんま魔力を使い過ぎんなよ!」

「節約して欲しーんだったらもっと飛ばせよ!さっきから何回追い着かれてやがんだよ!」

「エンジンが爆発していいならそうさせて貰う!」


 進行方向の両サイドにある建物の上階からプラズマ弾幕!

 ここまで来たら進路予測も待ち伏せも簡単か!


「金ピカ高級車をボカボカ撃ちやがって!気後きおくれってモンを知らねえのかよ!」


 乗研先輩の黄金板が前方に回って全て受け切る!

 そこで前に滑り込んでくる車両数台!

 防御が薄くなったところを見計らい、バリケードとして道を塞いできた!


 吾妻さんの簡易詠唱でそこを越えるも、飛行型眷属やヘリコプターからの俯瞰追跡は振り切れない!


「飛ばされねえよう掴まってろよ日魅在ァ!」

「心配ご無用ですっ!慣れてますからっ!」


 クリスティアに行った時に味わったリーパーズの運転と比べたら、ゴールド免許をあげたいくらいの丁寧さだ!

 まあマシンスペックが死ぬほど落ちてるからなんだけど!

 

「渋滞がねえのはありがてえな!あちらさんの交通整理のお蔭ってか?頭が下がるぜまったくよ!」

「皆さんのお仲間の援護は期待できませんかね!?」

「山から逃したので全力だろーよ!他は全員ぜーいんとっ捕まってるだろーな!」

「警察が優秀で何よりですね!」


 車両越しの攻防となると、離れ過ぎてて俺の魔学回路攻撃も使えない。

 六波羅さんは、佑人君の安全確保にほぼ全神経を向けており、指一本ですら余計な動きができない。


 乗研先輩と吾妻さんの二人に、何とかしてもらうしかない!


「左に引っ張られるぞ!掴まれ!」

 

 右への急カーブ!

 からの一度左へ!

 

 曲がった先に待ち受ける車列!

 装甲車も含めて、狭い幅を長く埋めている!


 吾妻さんの魔法は、ゲートや中に通したエネルギーの大きさ、二つの口の距離によって、魔力の消費量が決まる。


 車と5人分の質量を、遠くに転送しなければならない、今みたいな状態だと、かなりの消耗を強いられる!


 加えて、ゲートが開けるのは彼女の視界内。

 この行列の端が見えない以上、パトカーが詰まっているど真ん中に、自分達を放り出すことになる!


「装甲車だけ抜けてくれりゃあいい!」


 乗研先輩が叫ぶ!


「あと、上だ!できるだけ上にしろ!」


 僅かな逡巡の間を挟んでから、ゲートが開く!

 飛び出した先はパトカーの絨毯の直上!


「“罪業と化ける財宝(ファーヴ・ナックル)”!!」


 黄金板が道を作った!

 真下と両端からの攻撃を防ぎながら100m先まで繋がっていく!


 その効果が正しく発揮されたら、タイヤの摩擦を送り返されて止まってしまうけれど、そうなっていないということは、乗研先輩の意思で機能のオン・オフが選べるということだろう。

 

 これで幻覚作用がちゃんと働いてくれればなお良かったんだけど、残念ながら常時解呪系魔法をぶつけられているらしく、まるで惑わされてくれそうにない。


 たぶん空路で張り付いてきているどれかの効果だろうが、こっちから手を出す手段が無い以上、甘んじて受け続けるしかないのだ。


「少し浮くぞ!」


 内臓だけが肉や骨から離れて宙ぶらりんになった感覚!

 少しして落下の圧がり上がってくる!


 ガツンと尻を叩く硬いショック!

 ガリガリとフレームが削り合う音に不安にさせられる!

 

 どこかでガラスが弾けた後に、足の側がガクンと上がり、また少しの浮遊感と、二度目の衝突!

 パトカーを潰しながらその上を走り抜けたのだ!


「もっと優しく着地できねーのかよ!」

「魔力節約だ!それよりそろそろだぞ!」


 朝が早いからか、建物の密集度が高くなってきても、通りに人や車が全く見えない!

 目指している先、ニークト先輩の家まであと少し!


 残りはほぼ直線路な道なりのルート!

 他より大きな西洋屋敷が、目で見分けられるところまで来ている!

 

「アクセル全開でいくぞ!ガキをしっかり掴んで——」

「待てリュージ!道の形がナビとちげーぞ!」


 乗研先輩がペダルを踏み込んだその時、道路が盛り上がり上へと傾いていく!


 いや、これは、町の一区画が変形している!?


「違う!この感じ、変身者です!」

「それがこれを起こしてるってのか!」

「って言うか今見えてるこれ自体が変身した姿です!」

「んだとぉっ!?」

 

 バネ仕掛けのジャンプ台みたいに、来た方へ跳ね返される!

 ぐるぐる回る視界の端に、建物やアスファルトが乗せられた土の塊の下から、複数の脚が伸びているのが見える!


 擬態?それとも土壌になることで、何らかを成すという物語か?

 何にしろ、俺達はまんまと引っ掛かった!


 後ろに迫っていた飛行眷属達や、パトカーからの遠隔魔法弾、それらの只中ただなかに投じられてしまった!

 

「“虚世マキャーラ”!」

 

 ゲートを通すことによってなんとかルカイオス邸方向に飛ばし直す!

 だけど、空中で回転しながらだ!


「“罪宝ナックル”!!」


 乗研先輩が黄金板をぶつけ、衝撃を全て返す能力によって止めようとする!

 だけど1枚や2枚では足りない!

 何段階かに分けて減速、なんとか正しい上下で接地!


「クソッ、マシンがイカれてやがる!掛からねえ!」


 昔ながらの鍵をすタイプのエンジンを、何度も回してスタートさせようとするけれど、空振りするかのような抜けた駆動音。

 

 更に、俺達が回転ジャンプで芸術点を稼いでる間に、パトカーが周囲をロックしていた。


「待たれてた…!完全にここに来ることを読まれてました…!」

「おい!成金女!お前の能力で——」


 乗研先輩が助手席の吾妻さんの肩を揺さぶるけれど、


「おい!」

「ワリー、な、リュージ……!」


 彼女は前に伸ばした手の先に黒い魔力を集め、それが雲散霧消うんさんむしょうしていくのを見ていることしかできない!


「今の、思ったより…!けっこー、ガクンって来たぜ…!」

「ここに来て魔力切れかよ!」


 外では重たいスモークが下から車を囲い、粘りつくように覆いかぶさっている。

 あれも何かの魔法らしい。

 何をしてるのか詳細を見抜くには……クソ、魔力が足りない…!

 

「こっからは徒歩だな。走れるか?」

「絶対に吸ったらヤバい煙が待ってるんですけど」

「しゃあねえだろ。なんとかそのガキだけでも、あの屋敷の敷地内に放り込むぞ」

「俺の解呪があれば、なんとかなると……、いえ、なんとかします…!」


 六波羅さんの頼もしい一言に、俺達は頷いて車のドアを〈その連行ちょっと待ったぁ!〉


 パトカー円陣の一箇所が左右に突き破られる!

 現れたのはアイボリーに光る象だ!


「ガネッシュさん!?」

〈探究と進歩を!真理を優先させて頂きますぞ!〉


 象は長い鼻で俺達が乗るスポーツカーを巻き取ると、止まらない爆速疾走と共に振り抜いて、


 投げたあああああっ!!


「うわああああああっ!?」


 何らかの文字の軌道を通ってルカイオス邸を守る塀の中にピットイン!


 本人以外の関係者全員、たぶん総理やill(イリーガル)すら唖然としていた隙に、ガネッシュさんは走り抜けることでその場を辞して、障害レースの馬みたいに壁をジャンプで跳び越えて逃げ込む!


 嵐のように通過したフィールドワーカーは、治安組織をメタメタに妨害、


 そのままシレッと有力者のお膝元に滑り入った!


 この人、学究がっきゅう一筋みたいな顔して、結構ちゃんと抜け目ないよなあ………

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