表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
902/915

本物に触れて、本質に触れない

 白取モデルに曰く、魔素とは穴であり、通り道である。

 それは“向こう側”を覗かせ、エネルギーのやり取りをする。


 では、魔素の向こうには、どのような景色が広がっているのだろうか?

 残念ながら、人間はそれを見る事ができない。


 魔素は、そこを通るエネルギーによってのみ知覚される。

 魔素そのもの、その先にある世界、それは一切の干渉を受け付けない。


 人は、魔素から出たものによって、間接的にしか、“向こう側”を推測できない。

 それは考えないものとして、付き合っていくのが賢いだろう。


 


 本当に?




 本当に、考えないようにするのが、正しいり方なのだろうか?


 白取モデルは、未検証な事柄も多く、正式な論文としては未完成である。

 それを良い事に、数々の仮説や可能性が、読み手に投げかける形で盛り込まれている。


 その中に、魔力に関する項がある。


 魔力は、ディーパーとして研ぎ澄まされた者にのみ、光として見えるもの。

 ただその実態は、魔法未満ながら、影響力や効果を持った、エネルギーである。

 

 これは、相手の力が持つ性質を、直感的に感じ取った脳が、光学的な像として、その形を補正するから。

 というのが、従来の定説ていせつである。


 だが白取は、どうにも納得が行かないと、そう考えていた。


 ディーパーとして深まる。

 それはつまり、魔学の深淵へと近付くことであり、“向こう側”により近しくなる、ということ。


 そうなった彼らに起こる変化は、魔素の先が見えるようになる、

 どころか逆に、

 相手のエネルギーが見えやすくなることで、それが出る穴の奥が、見えなくなっている。


 幾つか理由は考えられる。


 普通は「穴」を感知できないが、より敏感になったことで、「何かが出てくる穴がある」と発見し、それが魔力の運動として視認できている。


 或いは、魔法の使い手は、何かを隠そうという意思が、無意識下で働いている。


 それとも、魔力を見る側の脳が、「見たくない」と、塞ごうとしている?


 魔素の向こうは、どうなっているのか。


 仮に、魔学的な感度が鋭敏な人間が居て、相手が不可視の魔力を使っていたら、

 その者は“向こう側”を、知ることが出来るのだろうか。


 では、「不可視の魔力」とは、どういった状態か?


 それは、何かの主張?

 それとも、何かの隠匿?


 重要なのは、魔力の色が感じられる以上、光か、それに準じる何かが、発せられているということ。


 プラズマが基底状態に戻る時、熱と光を発するように、

 何らかのエネルギーが、相手の視覚野に訴える、“現象”に変換されているということ。


 ならば不可視の魔力とは、その、敢えて言ってしまえば“余計”なエネルギー変換を挟まず、ただ純粋な運動量や効力のみに、全ての力が注がれている状態。


 誰よりも鋭い、改変・破壊力を持つ者が駆使する、


 頂点の、




 “最強”の権能けんのう


 


 と、言えるのかもしれない。


 例えば、窟法ローカルを起こす不可視の作用は、大抵の魔法より強いのと同じ。


 また、人間が見れる光の範囲は、非常に狭い。

 この世に溢れる殆どが、不可視光。


 ならば、見えない部分にこそ、本質があるのではないだろうか。

 不可視の魔力とは、最も本質に近いもの、ではないだろうか。


 ローカルも、そうなのだろうか?

 では、ローカルとは何か?


 そもそもダンジョンとは、魔学とは、どのようにして誕生したのか?


 他の自然科学と連続しているようで、まるで後から取ってつけたようでもある。

 

 作り上げる物質もエネルギーも不安定であり、こちら側に生み出したものは、時間と共に完全消失。


 親和しているようで、異物的。

 世界に食い込んでいながら、後付けとしか思えないことわり

 それによって、棲んでいる者達に適応を強いて、誘導する法則。


 それはまるで、




 ダンジョンの中のローカルである。




 魔素が人それぞれの形で定着し、条件によって異なる魔力を引き出せて、それで個人ごとに違った魔法が使える。


 たった2000年前に急に現れた、その特殊ルールこそ、ローカル的である。


 では、何のローカルなのか?


 最初のダンジョンは、オリジナルディーパーによって、踏破、枯らされた。


 それでも世界には、ダンジョンも魔学も残っている。


 それでは魔学とは、


 何によって、もたらされたローカルなのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ