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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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651.バカは死ななきゃ治らない

びゅん、


びゅおん、


 飴色が押し退けた空気の端では、

 拳骨げんこつに似た爆音が鳴っているのだろう。


ぼン、


ぶおん、


 辛うじて残ったガラスや木の葉を、

 衝撃波が乱散らんさんさせるのだろう。


どんッ、


ゴォんッ、


 だが音よりも遥かに速く、

 まずその塊が一番乗り。


 何が起こったかの理解よりも、

 暴力にバラバラにされるのが先。


ゴォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!


 理屈で言えばそう。

 けれど学園に残るill(イリーガル)の眷属達は、爆熱で消し飛ぶよりも前に、命中の音を聞いた気がした。


 それは重く、痛く、そして無遠慮。

 意思も知性も計算もなく、金属質な空が落っこちてきたかのような、

 聴覚をかたきのように殴り抜く一撃。




ぴ、ぃぃぃいいいいいいいいいいいいい………っ!!




 それを、

 弦が鳴るような澄んだが切り裂く。

 



ひょ、おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………っ!!




 学園の職員達が復旧させ、“千総フュージリアー”が居る方角へと、新たに張っていた防御壁は、23枚。

 それらが割られている、その数秒、弾頭は減速していた。


 校舎や避難民収容場所から、敵を押し返しつつあった、防壁内の潜行者達が反応するのに、充分な時間。


 特に、高度な身体強化を持ち、魔学ジェットスラスターで空を飛べる彼は、真っ先に動き、その弾道に割り込むことに成功した。


〈ぴ、ぃぃぃいいいいいい……っ!〉


 表皮を珪素質に変換。

 高圧魔力噴射孔を構築。


 自身の前後に極めて強い推進力を生み出し、砲弾と正面から組み合う形に!

 挟み込んだ両掌りょうてのひらが、姿勢を安定させる為の飴色の回転によって、バチバチと手持ち花火めいてきらめきを散らす!


〈ひょ、おおおぉぉぉぉぉぉ……っ!〉


——いや、

——押し返すんじゃあ、ダメだ!


 止めきれない。

 ギリギリで止めたとして、残ったエネルギーが爆発して、大きな被害が出た後に、第二射が来る。


 肉体へのダメージが深くなり過ぎて、次の一発を止めに行けない!


 自分に巻き付けたリボンの減りの速さから瞬時に悟った彼は、背中側の秒間噴射量を微減させていく。


 すぐに寄り切られ、背後に張られた新たな壁に背をつけ、圧力で砕いてしまう。


 それでいい。

 

 この刹那で彼の意図を読み取ってくれたのか、それともリボンを通して思考が伝わる使い手からの伝言か。

 硬いながらも脆い、そういう防御を用意してくれている。


〈守って、勝つ……!〉


 彼の後ろから、様々な掌が添えられているような感覚。

 あるものは割れ、あるものは折れ、あるものは砕け、あるものは伸び千切れる。


〈勝って、守る…!!〉


 壁やら植物やら土やら髪やら鳥やら雲やら風やら氷やら、

 様々な魔法生成物が、衝撃を吸収、減速に力を貸す。


一本いっぽぉんッ!!〉


 勢いが充分に衰えたところで、彼は右腕を大きく引いて、


〈集中ゥゥゥゥッッ!!〉


 手首から先をドリルビットにし、弾頭の中心軸をつうかん一徹いってつ!!


 逆回転エネルギーをかけることで、遂に制止させ内部からの魔力噴射で粉々に破裂させる!


〈おらもう一本!っつうか幾らでも!ばっちこおおおおおおおい!!〉


 こちらに撃たれた砲弾を全て受け切れば万事解決!

 万丈ばんじょう血気けっきさからせる日魅在進!


 もう一つ内側、コピー&ペーストで築かれた、巨人像から生えた数十の掌の上で、彼を支える側に回った生徒達は、その背中を様々な思いを籠めて見詰めながら、次なる一発を前に精神の均衡を調ととのえる!




(((一二三四(緋染めの文よ、)五六(忌むものか)——)))


 “千総フュージリアー”シティに立つ、銃身で組まれた高層ビルの一つ。


 その屋上に腰掛ける、


 無邪気にも妖艶にも、

 極楽にも地獄にも見える、

 悩ましくみだれる万華鏡が、


(((——七八九十(悩ましき事、忘れまじ))))


 上機嫌に足をぶらつかせて、景気づけにうたむ。




〈そこまで言うなら!ご注文通り!〉


 “千総フュージリアー”は、鏡に焼かれては傘で守るという応酬も片手間に、外に飛び出して次なる一射を放つ!


 それは、


 遥か高くに上げられた!

 

〈へっ?〉


 砲塔が極端な仰角ぎょうかくを取っているのだから、当然である。

 波長の狭い振幅の片側を抜き出したかのような軌道を描き、弾頭はやや上から学園の中央を狙い、けれどさっきよりも到達に時間を掛けたので、当然のように止め切られる。


〈うおっ!WoW!〉

 

 “千総フュージリアー”が踏み切った大地がめくり上がり、根や草の力でそいつを結界内部に押し返した!


 そして地中から、新たなバリケード魔具が()()()くる!


P(パパ)01!第10号機を起動せよ!』

『了解!38式10号機、起動!』


 P(ポーン)達が、緊急時用に仕込んでおいた、追加の結界生成装置!


 スイッチがスムーズにオン!

 再度収監(しゅうかん)


〈友情…、それとも、誇り(Pride)、かな?〉


 再度全方位を閉じた結界内に突入し、表面を同じ形に切り取ろうとしてくる降下部隊。

 彼らに撃ち返して牽制し、日光を当てられては浮遊する破片で防ぎ、


 そんな中でも“千総フュージリアー”は、将来有望な新世代達に、自分と殺し合ってくれるヒヨッコ共に、思いを馳せる。


 矢張り、

 矢張りだ。


 やっぱりこの国は、ここに住む人間達は、

 まだまだ遊べる。

 まだ幾らでも壊し、殺せる。


 欲望に忠実に滅多打ちしても、

 打った分だけ、響いてくれる。

 壊れた後に、もっと良い感じに直ってくれる。


〈Amazing!素晴らしい!僕の墓場として、こんなにぴったりな立地は他にない!〉


 ついの居場所に、ここを選んで良かった。

 心から、そんなことをしみじみ思う。


〈これだって!〉

 

 その体表に刻まれた、正三角形の傷痕きずあとの数々。

 そこに増幅鏡が照射されるたびうずきが一層鋭くえる。

 

 原始魔法陣による強化。

 降下部隊は、この“弱点”を刻む為に、至近戦を挑んだのだ。


〈僕を脱がせる為に、そこまでするなんて!〉


 原始魔法陣に、選別機能は無い。

 故に、“千総フュージリアー”側の攻撃力すら、高まってしまう。


 それでも彼らは、その手段を選んだ。

 リターンを掴もうと、リスクを握り締めた。


 彼女を殺す、その為に。

 “愛されている”実感が、彼女の全身を弾丸めいて駆け巡る。


〈さあ…、次だ……!次はどうする…!〉


 彼女は更にギアを上げていく。

 内外の弾幕を厚くし、熱くしながら、

 軍事的テクノロジーによるからめ手を仕掛け始める。


〈次はどうやって耐える!次はどうやって返す!次はどうやってふるい立つ!〉


 燃える人間の悲鳴。

 怒号や爆轟。

 発砲のリズム。


 様々な物が、彼女の記憶から溢れ出す。


〈次はどんな引き金を引くのかな…!門戸開放?弱者救済?生態系保護?環境保全?義理人情?国際協調?政治?経済?富国?護国?自由?平等?それとも真理?


 どんな弾丸を撃ち出すのかな…!

 それはどれだけ広くを焼くかな……!


 あの島の泥沼のように…!

 あの街の火の海のように…!

 あの大きなキノコ雲のように…!〉


 息吹をあらげ、あえがせる砲身。


 いつしか彼女は、性的絶頂が体液の大量分泌を止められないように、

 飴色の破壊を噴き出させ続けるようになった。


 それにより、付近は更なる生存困難領域と化す。

 “千総フュージリアー”の輝きはいや増し、放出されるエネルギーは境界線にきずを焼き入れる。


 そいつが出せる、最高の火力。

 それが遂に、安全装置から解放された。


 























二乗にじょう三乗さんじょうの法則。知らないわけがないだろう?ill(アイ・エル・エル)


 一辺が1mの立方体。

 辺のそれぞれの長さを2倍にすると、表面積は4倍、体積は8倍となる。


 物体は大きくなればなるほど、その中身と比して、表面が占める割合が狭くなっていく。


 これが生物のように、内側でエネルギーを生成する機構の場合、それが熱として逃げていく面積は、身体が大きくなるほど、相対的に狭くなる。

 それが動いて、筋肉の運動エネルギーなどが発されていると、余計にその傾向は強くなる。


 縮めて纏めれば、「デカい動物は、体温が下がりにくい」。


 それは殆どのモンスターでも、同じことだろう。


「『デカい』は『強い』、だけじゃない」


 この法則に目をつけ、巨大であり、エネルギー生成力に優れるモンスターとの戦闘を想定し、防衛隊が用意していたプランがある。

 それを基盤として立案されたのが、ほん“バントウ作戦”である。


 結界等で密閉し、敵由来のエネルギーを籠もりやすくする。

 五十妹の魔法が利用する日光を使い、敵に高熱を押し付ける。


 降下部隊が原始魔法陣を刻み付け、それは日光と共に、敵が発した攻撃が持つ力も強化。それは恩恵でもあったから、“千総フュージリアー”は自慢の耐呪で解除しなかった。


 更にXⅡの焦点が、バレルジャケットを始めとした、排熱孔はいねつこうらしき部分を溶接、ふさいでいく。


 外に向けて開かれているのは、火か合金を吐く銃口のみ。

 そして、身動きが取れない敵は、そこから脱け出そうと、際限なく己の力を高めている。


 銃は連射が過ぎると、銃身が焼け付き、変形し、破損する。

 それは“千総フュージリアー”にとって、激戦の証明であり、戦場の花であり、一種の快感だった。

 彼女の物語に沿う、一節だったのだ。


 だから気にすることなく、もっと、うんと、気持ち良くなろうと、体内で魔素から莫大なエネルギーを引き出して、


〈あ〉

 

 今、彼女は光っていた。


〈あれ……?〉


 全身が、夜の蛍のように、柔らかく揺れていた。


〈あれ、おかしい……〉


 発射する度、銃身の一本一本が、よく振って開封した炭酸飲料みたいに弾け、バナナの皮めいてパックリ四裂しれつしていく。


「お前は確かに強い。だが、ずっと人間に混ざってきたと言うなら、最後にその大きさになったのはいつだ?」


〈は……?Ha?HA?hA?〉


訓練メンテおこたってたんじゃあ、ないか?」


 それは、表面から見えない体内でも、

 否、むしろ内部でより深刻に、進行していた。


〈ま、待って……!〉


 その間にも、XⅡが反射光の熱を追加。

 それを遠隔操作した外殻で防いでも、結界内全体の温度が上がり、熱さはどこにも逃げてくれない。


〈まってよ、ちょっと……!それは、ないよ……!〉


 何か行動を起こすたびに、崩壊は速まり、酷くなっていった。

 それはそうだ。


 力を抑えるのを苦手とし、快楽に抗うなんて考えもせず、他者に与えるなんて有り得ない。


 「えて諦める」ことから、最も遠いケダモノは、この罰から逃れられない。


〈まって、まだ…、まだだって……!〉


 中にある餌から指を放せないせいで、穴から手を抜けない猿と同じ。

 

 “千総フュージリアー”は、自らの興奮で、享楽で、

 休みなく撃ち続けた銃の末路、その物語に忠実に、自滅を迎えようとしていた。


〈まだ、まだ僕はやれるんだ……!〉


 肉体そのものの強度や柔軟性も伸ばさねば、身体強化で自壊するのと同じ。


 しかしそいつはここに到っても、まだ引き金を引くことで、事態を打破しようと足掻き続けた。


〈元気いっぱいなんだ…!まだ尽きていないんだ……!本気の破壊を見せられてないんだ……!〉


 その内に秘められた、真の強さ。

 それを発揮しようとするほど、全体が垂れ流れ、


〈もっと遊びたい…!もっとずっと、遊んでいたい!もっと!もっと!もっと、もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっともっと…も…っと……も…と……も………〉


 アツアツの溶岩みたいに、地面へとび広げられ、

 

 超高温の水溜まりとなってしまった。


よろこべよ、モンスター」


 降下部隊の隊長は、汗がつたう片頬を歪めながら、


「誰でも一度は夢見る死に方。腹上死(テクノブレイク)だ」


 軽蔑を籠めて見下ろしていた。

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