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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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650.ちゃんと強いのが本当にイヤ

 丁都、浪川。

 その地下では、100人単位の隊員達が、穴を掘りながら壁を補強し、特定の形状のトンネルを作っていた。


 炭鉱夫たんこうふめいてピッケルを振るっているように見えるが、そのじつ彼らの手にあるものは、くわである。


 蛇皮へびがわに似た光沢を、暗黒の中でも浮かび上がらせる、魔の産物たる木目の農具。

 それらが岩を割り、土を耕し、魔法眷属たる植物が、爆発的に繁茂はんもしていく。


 草が結び合い、枝が絡み合い、それぞれが図形を作る事で、巨大な多重魔法陣を構築。

 ダンジョンケーブルを補助に使って、五十妹の詠唱成立用舞台をしつらえた。


 巨大な筒が少しずつ進みながら、落盤を防ぐ為に固めた内壁を、スコップやドリルで掘り進み、陣の破壊を試みる銃列。


 それらと相撲すもうを演じつつ、破損箇所は素早く修復。

 それはまるで、免疫と自然治癒。

 地下が一つの命と化している。


 「フェーズ5」。

 地下に大規模魔法陣回路を敷設。

 五十妹の完全詠唱によって、敵を焼き払う。


〈Not Bad!だけど!“千総フュージリアー”には火力不足、さ!〉


 ビルが傘のように上部を広げ、他の多くの眷属を守る。

 本体に到っては薄く赤らむだけ。

 一部の武装が使えずとも、9割方の主砲は無事だ!


〈さあて!〉


 キャタピラが前後に折れて、4脚の形で地に刺さり込む。

 細いサングラスにも見える、頭部のガラス窓がキラリと光り、上体がお辞儀のように前傾する。


 結界の、ある一面。

 一つのバリケードに向かって、彼女から生える大砲という大砲、その全てが口を開け、ありったけ吐き出す準備を終えた。


〈FIRE!!!〉


 砲口が上げる咆哮ほうこう

 群れを直感させる個体のいななき!


 魔具のスロットが火花を飛び散らし、ぺっぺとカートリッジを吐き出す!

 だがその瞬間、予備カートリッジによる第二魔力源に切り替わり、強制停止を辛うじて回避!


「カートリッジ交換急げ!」

「メインカートリッジ交換こうかーん!」


 その間に主要動力源の復旧作業が進む、

 が、当然それより“千総フュージリアー”の火力積み上げが上回る!


 ほとんど連射と言っていい猛攻により、飴色がバリケードの防御機能を完全に『XⅡ全機、照射開始!照射開始!』


 魔法による砲身への干渉が、突如一点にかたよった。

 そんなことが、全身の各所で起こっていた。


 弾の出口が潰され、暴発に次ぐ暴発で内側から四散する。

 

〈太陽が…!?〉


 五十妹の魔法、それは日光に当たっているものを対象とする。

 そして今、虫眼鏡で集められたみたいに、光が数十の焦点を結んでいる!


〈その……、車両……!〉


 バリケードを補強する設備かと思われていた、トラックに牽引されている装置。

 その上部が、消防が持つ“はしご車”のように、鎌首かまくびを上げて先端を開く。


 三角と四角で構成されたパラボラアンテナ、そう表せる装置。

 その用途は、キラキラ光るレフ板めいたパーツと、中央から点射てんしゃされる強い閃光、それらを見れば察することが容易!


〈鏡かあ…っ!考えるね…!〉


 “超交叉ちょうこうさ反射はんしゃ増幅ぞうふくきょう拾弐じゅうに型”。

 コールサインは“スーパーミラーXⅡ(エックス・ツー)”。

 隊員内での非公式別称は“ハッシャク”。


 壌弌重工が開発した専用魔具は、受けたのが単なる太陽光であっても、ミサイル撃墜が可能なレベルにまで、エネルギーを集中させる。


 反射させるものが五十妹の魔法ならば、対人対物対空ビームを発生させる事まで出来る!

 

〈だけど…!光をさえぎってしまえば…!〉


 軍事に関するテクノロジーの数々を、自らの身体器官として生み出せる“千総フュージリアー”。


 日が当たらないよう砲列を覆い隠し、表面のコーティングで光線をはじくことなど、思考不要なほどに容易い!


 ベキベキと変形し、全体がソーラーパネルめいたからおおわれる。

 唯一開いた部分から、無数の銃身が突き出て並ぶ。

 その様はたとえるなら、頭が上になったオウムガイだ。


 足の全てが殺人機壊さつじんきかいな、世にも珍しい多足類たそくるい


 これであれば邪魔されずに、暴弾裂破ぼうだんれっぱを垂れ流せる!


 という対策くらいであれば、人並みな脳ミソが付いている者は、誰でも思いつきそうなものだ。

 と言うことは、防衛隊だって発想している、そう考える方が無理が出ない。


 ならば、彼らが解答を用意していないなんてことが、あるだろうか?


N(ノーヴェンバー)各員!N(ノーヴェンバー)01!結果内への突入を開始!繰り返す!突入開始!』


 入場したのは、空を行き来していた降下部隊。

 一方向を除き、全体の弾幕が薄くなったのを確認後、即押し入り!

 一部のXⅡがしぼりを緩め、彼らを覆うように五十妹の魔法を照射。

 

 弾道を無理に曲げて彼らを襲っても、決定打を与えられない!


 到頭とうとう体表に到達!

 それぞれの魔具で外殻がいかくを三角形に鎔断ようだんしていく!


 電流や高熱、音響兵器で対抗するも、壌弌と五十妹の二重加護がかんばしく機能!

 これまた致命傷は与えられず、全てを振り落とすにも足りない!

 

〈離れなよっ!Ladyの体をベタベタとっ!〉


 壁に叩きつけようとするが、結界は防衛隊に干渉せず、潰すことができない!

 一部の外殻がトラバサミの動きで挟み殺そうとするも、回避されるか耐えられる!


「全身不謹慎モンスターめ!」

零輪れいわ丹本の放送コードじゃ余裕で規制対象だぞこのドンパチビッチが!」


 ここまでが、「フェーズ5」。

 身動きが取れなくした目標に、五十妹の完全詠唱を浴びせ、防御に回ったところへ、降下部隊が切り込んでいく。


 完璧な読み。

 完璧な連鎖。

 完璧な組み立て。


〈この僕が相手でなければ、だけどね〉


 殻が爆発した。

 降下部隊がポップコーンみたいに跳ねた。


 外殻の破片は、ローカルの効果で狙った場所に、

 鏡からの照射を遮る空間座標に配置され、固定される。


 数秒ほど、“千総フュージリアー”は日陰で涼を取った。

 熱中症対策は万全。


 本体から生える銃身全てから、滝のような制圧(ほう)しゃ

 継続的に強い負荷をかけることで、遂にバリケードの一つが境界を停止させてしまう。


 ここで彼女最初にやることは、

 結界内から速やかに離脱すること、




 ではなかった。




 期待値を更新し続ける彼らに、よりやる気と殺意とを出して貰う為に、嫌がらせをすることだった。


 頭部に当たる部分から、入れ子のような砲身が再びり出す。


 発砲は為された。

 太蔽洋を横断可能な威力の砲撃が、

 街のすぐ近く、ある施設に向けて放たれる。

 

 着弾地点には、


 行政の長と、守るべき市民と、子ども達、


 その全てが詰まっていた。


 あと瞬き何回かのうちに、一つの学園が地図から消えようとしている。

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