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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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647.覚悟……な、なんか、覚悟極まり過ぎじゃない………?

『各B(ブラボー)小隊、遠隔魔法投射陣地に進入完了』

『各R(ロメオ)中隊、簡易陣地敷設(ふせつ)・展開準備、及び重機搬入準備完了』

Q(ケベック)小隊、準備完了』

『各P(パパ)小隊、掘削開始地点に進入完了』

『第一から第四降下N(ノーヴェンバー)部隊、間もなく現着』

『目標に接近。会敵予想時刻まであと3分』

『オメガ-1(ワン)、観測地点にて待機、作戦開始を待つ』

『了解、待機維持せよ、送れ』




『イ01(ゼロワン)、こちらCP、送れ』

『CP、こちらイ01、送れ』


 幾つかの護衛機に先導され、大きな2よくを持った高速輸送飛行機が、上空から丁都に入る。


 「護衛機」と言っても、銃器で敵を倒すのではなく、搭載魔具で盾になる役割の二人乗り小型機。

 特化した魔法が無くとも空を飛べて、通信機も一緒に積めるので、鳥や竜に変身する潜行者よりも、汎用性に優れている。


 まあ、巨大な鳥や幻想生物に変身して、随行ずいこうしている者も居るのだが。


『イ01、CP、ロ01から04はそのまま直進、目標との距離1000で降下開始、送れ』

『CP、イ01、了解、降下準備』


 その格納ブリッジには、2~30人の兵員が並んでいる。


「作戦説明で寝ぼけてやがったアホはいないな?」


 彼らの正面に立つのは、空挺部隊長。

 壌弌の姓を持つ、本作戦の要の一つである。


やっこさん、異国から遥々(はるばる)的当まとあて訓練のご協力におでくださったらしい!戦場では一言ひとこと礼をしておけ!」


「隊長、冗談でしょう?」

「あのデカさですよ?あれを外すような奴は、ウチの隊に居ませんよ」

「来てもらってなんですけど、訓練になりませんって」


「違いない」


 未曾有みぞうの強敵を前にして、彼らの筋肉は表情と共によくほぐれている。

 これからスキーに行くかのような気安さで、阿鼻叫喚への降下準備をテキパキ進める。


「まあいいだろうさ!世界で誰も討伐したことのない、ごたえのある強敵に、魔法をぶち当ててやりたいとか抜かす、お前達半人前どもにとっては、二つとない有事イベントだ!」


 人ではないから、心も痛まない。

 カートリッジ無駄遣いの心配も少ない。


 世界中に銃口を向けているが故に、どれだけタコろうと苦情は入らない。

 考えられ得る限り最高のパートナーと、死ぬまで踊り明かしていられる。


「ご親切にも胸を貸してくださるそうだ!ご厚意こういに甘えてキッチリとどめを刺して差し上げろ!」

「「「「「了解であります!」」」」」


『会敵予想時刻まであと2分』


 その時が近づいてきた。

 皆が装備の最終チェックを完了する。


「ちなみにだがな!ビビリだって言い出しにくくて参加したクセに、本番で尻を引きやがった肝の細え奴は、考課こうかに特大の罰点バッテン食らわしてやる!怖え奴は昇進に響かねえ今のうちに名乗り出ろ!」


 最後通告。

 一人残らずその表情を見て、皆が本心からここに残っていると確認。


「お前らの仕事はッ!?」


 そしていつものお題目へ。


「はっ!市民様より先に死ぬことでありますッ!」


「そうだ!俺らにムショみてえな寝床ねどこしか寄越よこしやがらない、薄情モンな文民共の為に、その心臓投げ売りしてやることだ!奴らが殺せと言ったなら!そのごめい通りに人でも畜生でも化け物でもぶっ殺ぉすッ!それが嫌だって常識人は、そいつも実戦じゃ減俸げんぽう間違い無しだ!今申告しろ!」


「いいえ!憤懣ふんまんはあれど、不満はありません!」


 口汚い暴言によって、士気がむしろ上がっていく。

 男女問わない強者達が、口の端に笑みを揺蕩たゆたわせる。


『会敵予想時刻、及び作戦開始予定時刻まで、あと1分』


 彼らはハッチの前に並び、それぞれが棒状の魔具を手に取る。

 それはよく見ると、全長の半分程まで、中心部分が開いており、二股の先端を持っている。


『ハッチオープン!』


 かまの蓋が、開く。

 眼下には無残に変わり果てた首都圏。


 ビル群が崩壊し、一度平らに近くなった後、木々の生育を早回しするように、銃砲の塔がニョキニョキと生え揃っていく。


 それを見てある者は義憤を、また別の者は闘志を燃やす。


『“バントウ作戦”、フェイズ1を開始する。降下開始、繰り返す、降下開始、送れ』

『CP、イ01、了解、降下させる』


 物が詰まったリュックサックと同等に大きな、四角く硬いパックを背負った者達が、足並み揃えて飛び降りていく。


 背中からジェットを吹かしながら、姿勢を棒めいて鋭くし、最短最速で地面へ向かう。

 誰よりも速く、何よりも危険な方へ。


 彼らは自死するのか?

 半分イエスで、半分ノーだ。


 彼らは死に自ら近付いている。

 だが死ぬ気は毛頭ない。


 勝って、守って、生き残る。

 その全てをやって、一人前。

 それが丹本防衛隊。


『降下N(ノーヴェンバー)部隊、予定時刻通りに行動開始を確認。各R(ロメオ)中隊、陣地敷設・展開作業開始、送れ』

『CP、R(ロメオ)01、了解、作業開始する』


 地上では折り畳み式バリケードを持った歩兵や、巨大な装置を牽引したトラックなどで構成された、R(ルーク)ポジションに当たる者達が発進し、“千総フュージリアー”シティに踏み入る。


 地上と、空。

 二方向から強襲されて、けれどそいつに焦りなど無い。


〈来たね!|帝国議会《Imperial Diet》諸君!〉

 

 楽しみの到着をよろこんでいた。

 馴染みとの再会を祝っていた。


 彼らをずっと待っていたのだ。

 その旧称が使われていた頃からずっと、彼女は彼らが大好きなのだ。


 地平線の向こう、数千キロ先を見るのをやめて、ホームパーティーのホストのように、玄関先での歓待に向かう。

 まずは景気づけに一発。

 

〈これを受け止めて見せてよ!みんな!〉


 地から、塔から、その身体から、無数の銃口が刺々《とげとげ》しく伸び、


 ほとんど一斉に火を噴いて、


 ちっぽけな寄り合いをぜ散らかす!


開戦(GONG)!〉


 夢にまで見た日がやって来た!

 

 “千総フュージリアー”は火薬をかなで、


 ソニックブームで晴れやかに歌う!


 ばくえんと、それから白く埋めるほどの湯気。


 それら沸騰ふっとうの痕跡をやぶり抜け、一人も欠けずに全速行進!


 彼らの前を守るのは、十数mの巨大な津波!

 ぶつかる銃器を折りならし、通った跡はペシャンコに整地!


〈波!いや、海だ!海だね!それは!〉


 銃弾を受け止める水の層。

 そして何より、国防の物語。


 この国を狭く閉じ込めて、

 様々な侵略から守った自然。


 大海原おおうなばらという、天然の結界!


 それを魔法に再現させて、攻撃を防ぎ、外を退しりぞけ、

 敵をバラして押し潰す!


〈だけどその海があったとしても、君達は一度負けたんだ!守ってばかりじゃ干上がるからだ!今度はどうかな?今回はどうかなァッ!!〉


 期待を籠めた眼差まなざしで、会いに来るのを待ちわびていた、


 乙女心(オトメゴコロ)に火をつける!

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