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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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643.こっちにはもう、それなり以上の経験値がある!

「ひゅ、ゥゥゥウウウ…ッ!」


 バチバチバチリ!

 酸素と一緒に電荷をも吸い込むような、痛みに満ちた一息!

 

「ひゅ、オオオォォォ…ッ!」


 魔力爆破!

 白いドレスに大きな頭が乗っているようなシルエットの敵にぶち当てる!


 だがそれらは亜麻色の膜で己を守り、服の下から歯のついた麻縄を複数伸ばし、連続重撃(じゅうげき)で肉を削ごうとしてくる!


 輪に囚われたら、エネルギーも肉も吸われて噛み千切られる。

 そうでなくとも外側がぶつかれば、魔力が減衰し防御ほぼ無視のダメージとなってしまう!


「だったらァッ!ぴ、ぃぃぃいいいいいい……っ!」


 僅かに湧いた不快をしこたま張り飛ばすほどの大電流動!

 肉が破裂し、また治る!

 

 否!

 そこに再構築されたのは、水晶の腕!


「ひょ、おおおぉぉぉぉぉぉ……っ!」


 体内の電流から来る痛みをそのままに、体表に自家製ガントレットを構築!

 部分的な“嚆矢叫炎ナリカブラ”形態へ!


〈エヘヘヘ、キャッハハハハハハハハ!!〉


 ドレス姿のプーカが麻縄で跳ね打つ!

 1本を避けても次の1本が、それを躱してもまた1本が!

 隙を挟まず折り重なる、逃げ場なき鞭打ち刑!


 リボンと電流路と麻縄を、マフラーのようになびかせながら、進はそれらの中心に突っ込む!


 そう、避けない!

 受けて立つ!

 

 腕からの魔力噴射!

 麻縄の輪はそのエネルギーを吸って彼の皮膚を破ろうとして、


 吸い切れない!

 切断される!


 珪素で作ったスリット付きアーマーによる、高圧魔力噴射with高速回転刃!

 電流も流すことで、敵の吸収能力との相殺すら超えて、防御ごと一思ひとおもいに引き裂いた!


 本体の獅子舞ならともかく、眷属では彼の全力を受け止めきれない!


「これでもイヌ科でなあ!」


 その後ろを飛ぶ他メンバー、彼らを守るのは狼皮おおかみがわの騎士!

 

「ボール遊びは得意なんだよっ!」

 

 内壁や死体に撥ね返って加速するプーカ共や、白ゴキブリの霧。

 それらをダガーによる小盾フィールドや、シミター型魔具で払いける!


「先輩!これもどうぞ!」


 詠訵が投げ渡したのは、和邇の能力で作った剣に、詠訵のリボンを巻き付けたもの!

 ニークトは狼鎧から新たな頭部を生やし、それで剣をキャッチ!

 第3、第4の腕として死角を潰しながら、立体的な敵襲を捌き続ける!


「ヨミっちゃんの能力減衰は私の魔法で食い止めてるけど、燃費問題は結構まずいからねぃ!」

「長期戦はダメか…!プロト!調子は!?」

「これで17発目!」


 中央の獅子舞に刺さる雷霆らいてい

 そとぬのを裂きくそれは、けれど電流が内まで届いていない!

 火傷や痙攣の予感も見せず、“鳩槃カウンセラー”はビーズ・プーカで彼らを狙う!


「見れば分かる通りあんま良くない!」

「してやれることがない!気まずい!」

「でも倒し方はある!」


 プロトと並んで先導する進が喉をらす!


「一点に凝縮した火力を集中すれば、その部分だけ減衰フィールドを破れる!」


 今まさにそのやり方で、ドレス型の眷属を真っ二つにして、その論の信憑性を補強!


「全員の力を合わせれば!」

〈そして私が、それを許せば、という仮定の上での話ですね〉


 進が更に一体を両断!「!?プロトちゃん!止まって!」そこで虚空に向けて高圧魔力刃を繰り出す!


「な、なに!?」


 急制動!

 だが遅い!


〈不快にならないよう、魔力探知の範囲を狭めましたね?私の眷属で、問題無く減衰できる程度の量しか、散布されていませんでしたよ?〉


 そいつが言うように、モンスター達の周囲において、魔力による探知が及んでいなかった。

 だからその“網”を、直前まで隠すことが出来ていた。


「きゃ…っ!?」


 プロトの外装に食い込み、エネルギーを吸いながら中にまで入り、肉体に巻き付いたそれらは、細く長い糸、いや、髪の毛だ!


 数十m先から、複数のF型が髪の毛を伸ばし、“鳩槃カウンセラー”のそれと結び合わせて、進行方向に仕込んでいた。

 あとは勝手にプロトの方から、罠に掛かってくれるのを待つ!


「今切るから!」

〈いいえ、それでは遅い〉


 既に彼女の全身を縛り上げている。

 そしてその髪の一本一本が、そいつの能力を持っている。

 吸い上げ、おとろえさせ、台無しにする力。


〈“卑者はいつも加害側にビクティム・ブレイムド”。あなたのリソースは、私が全て使い切ります〉


 シールド、ボディースーツを食いながらもぐっていき、肉に切れ目を入れ始めている。

 

〈その電流を使えなくすれば、あなた達は不快を思い出し、今度こそ首をくくられます〉


 そして既に、魔力を吸い尽くせる状態にある。

 大きな掌で握り込まれた、無力な羽虫と殆ど同じ。


「アタシ、さ……、これでもハンセーして、勉強したんだ……」


 違うのは、プロトはヒトの脳を、高度な記憶と思考の能力を持っていること。


「電気についてとか、電気を使う道具とか、色々……」

〈……?〉


 “鳩槃カウンセラー”の指の間から、捕まえた命が液体のようにれ逃げていく。


〈吸えている……いや、しかし、こぼれていく……!?〉

「特に、パソコンの話とかって、ちゃんと理解するまで、何度も復習した」


 彼を囲む電流路が、不明なパターンで点灯と消灯をする。

 まるで一定の信号のように。


「ヤゴコロのオバサンから、ヘンシン魔法の原理として知っとけって、しつこく言われたから……!〉


 すり抜けた。

 プロトが完全に拘束を脱した!


「ええっ!?」

「プロちゃんそれどーなってんの!?」

〈だから!ヘンシン魔法だって!〉


 電流路を渡り矢のようにプーカ達を抜き去っていくライトイエロー!

 

 電光石火!

 雷黄らいこう鉄花てっか


 鎧のデザインが鋭角的となり、全身至る所がまるでランダムに見えるパターンでバラバラに明滅するその姿は!


〈“月は欠け蝶は舞うラブランデス・ラヴナンデス”!アタシは今、電流だッ!〉


 変身魔法!

 それも全身が別種のものに完全置換されている!


〈記憶回路……!そういうことですか……!〉


 “鳩槃カウンセラー”は迷宮を構成し、ミラーボールが如きライトアップを施している、ライトイエローの道を見回す。

 それらは光を発しては消え、消してはまた発し、その組み換えには、恐らく一定のパターンが存在する。


 PCは0と1、入力がないかあるかの2パターンを連ねて、データを記憶する。

 それと似たようなことを、これらの電流路で行い、自身を変換した情報を保持。


 それにより全く異なる姿になりながら、自己同一性を保持し続ける!


〈で、あるとするなら、解消の方策も容易にわかろうと言うものです…!〉


 単純だ。

 記憶装置を、

 この迷宮を破壊してやればいい!


 データ容量が一定未満となった時点で、彼女の身体は自己保存維持の為、自動的に魔法を解除する!


〈ギョヒヒハハハハハハ!〉

〈アヒッアヒッアハヒヒヒヒヒヒ!!〉

〈ヒィー!ヒッ、ヒギャッ、ハハハハハハハ!!〉

 

 獅子舞も、その眷属達も、ライトイエローに噛みつき、寸断していく!

 電源コードを噛んで断線させるネズミにならう!


 それらに円斧えんふが叩きつけられ、磁力で加速したボウガンの矢弾やだまが追撃!

 高圧魔力刃が断ち裂いて、リボンを撒かれた剣や爪、牙が斬りえぐる!


 更に一発、放たれた雷を背で受けながら、“鳩槃カウンセラー”はその口や髪で、何本も電流路を砕いていき、


 その内の一本から、鋭く尖った槍の穂先が放たれ、最も柔らかいであろう口蓋こうがい内部を狙って一徹いってつ


 それはプロトの体の一部、蹴りを繰り出した脚だ!

 右半身だけが電流路から現れ、刺突と変わらぬ足撃そくげきを打った!


 ライトイエローによってそこに引っ張り込まれる他の5人!

 彼らの全力攻撃が同じ一点に!


〈それで、〉“鳩槃カウンセラー”の口の中、〈私も同じことをやると、思わなかったのですか?〉その亜麻色が、濃度を厚くしていく。


〈私もまた、一つを集中して守ればいいと、その発想が〉「“我が家へようこそ(オイキュメニステ)”!」


 訅和の完全詠唱。

 壁が空間を密閉。

 獅子舞の頭を胴から切り離し、隔離する。


「口の中ばっか、気にし過ぎたねぃ」

〈一つ教えるなら、コアはそちらにはありませんよ?〉

 

 日魅在進の高精度魔力探知は、このローカルの中では使えない。

 だから、そのモンスターの核がどこに隠れているか、見つけることはできなかった。


 「へのへのもへじ」が崩れていく。

 そして獅子舞の胴体から、新たな頭が——


 


「気まずいよなあ」




 訅和の「家」から消える直前、“鳩槃カウンセラー”はそこに、既にプロトの半身が居ないと気付く。


「先生がケアレスミスしてるの、指摘するのって、ほんと、気まず過ぎる」


 ビカビカとキツい強光を発するライトイエロー、その肌を刺すような魔力の気配の中に、同じ色で光る電流路を巻き付けられた物体が、溶け込みながら飛んでいる。


 ライターの火を、太陽の白光びゃっこうに溶かして隠すように。


 それは、和邇のボウガンが放った一発。

 敵に当てられず明後日に飛んでいった、そう見せかけて、磁力を利用し、迷宮内をぐるぐると巡らせていた。


 魔力と光に紛れたそれは、加速し切った状態で、頭を再生中の獅子舞に突き刺さる。


 あらゆる意味で死角からの一撃。


 そして直前まで、防御は全く別の箇所に、重点させてしまっていた。


 杭が打ち込まれ、それが纏っていた“電流”が侵入する。


 人が化けたエネルギー、その手が遂に実体へと届く。


 ライトイエローの乙女が、


 ill(イリーガル)の内面に殴り込んだ。

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