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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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637.魔法効果だけでランカーになれたわけじゃない、ってことだわな

 二つの銃口から黒い閃火せんかほとばしる。

 吾妻の魔力を完全に模倣したものが籠められた弾丸。


 彼女は保有魔力のうち身体強化へ割り当てる分を増量。

 防御が許されない高速攻撃を連続側転回避!


 その先でゲートに!

 一拍遅れてロベが入り口を破壊!


 吾妻は、

 彼の前方、高さ数m付近に出現!


「途中で通り道をぶっ壊されるってーならよー?」


 ブーツに取り付けられたジェットで飛び蹴りを斜めに突き刺す!

 コンクリートが凹み砕ける!


「そーなんのを計算に入れた上で、ゲートを作っちまえばいーんだよ」


 ギリギリで避けたロベが拳銃を発砲する前に追撃!

 掌印を崩さず足技を浴びせ続け、転がり逃げる彼を立ち上がらせまいと路面を踏み壊す!


「無駄だ!」

 

 だがロベの方は直撃を避け、シールドで破片を受けながら、明後日の方へ撃ちまくる!


「お前に向けずとも、当たる!」


 飛び道具は必ず敵へと向かう、その効果が彼にのみ強く適用されている!

 弾丸は旋回して吾妻を横殴らんとする!

 

 だがそこで退いてはいけないと、吾妻はその覚悟を決めている!


「当たらねー!」


 極限まで強化された動体視力で弾道を見切り、純粋魔力の状態で取り出したエネルギーを固め、装甲として設置!


「当たらせねーぞ!」

 

 効果を効果で打ち消されるなら勝負のレベルを力較ちからくらべにまで落とす!

 チャンピオンの面目めんもく躍如やくじょ


 そしてこの時、本当の有利が生まれている!


「テメー!今、決める気で全ツッパしたよなーーーッ?」


 特製の弾丸とは言え、マガジン内の容量に入る弾数の制限、それから自由にはならない!


 火力をオールインして撃ち切ってしまった以上、再装填リロードしなければ、吾妻の絶対防御を無効化する銃撃が放てない!


 再び足裏にゲート開口!

 拳銃から単なるプラズマ弾が撃たれるも、呑み込みながら踏みつける!

 

 だが!


「おおっと!」

「ぢぃッ!」

 

 防御用に広げたゲートの一つがエネルギー量超過によって全てを素通しするようになり、そこから飴色がひらめき抜ける!


 金属衝突!

 ロベに当たる寸前だった右足を横から撃って、攻撃を押さえながらブーツの一部を破損させる!


「勿体ないよ!そんなすぐ終わらせようとするなんて!もっと楽しまなきゃ!」

「ほざいてろ片刈かたがり!」


 続けざまに防御の内へ侵入してくる砲火から逃れるべく、後ろ倒れになるようにしてゲート通過!

 

 空間を跳躍した彼女の行き先を確認しつつ、ロベはリリースボタンを押して弾倉を落とし、素早く新しいそれらを装填。

 

「ほうらっ!僕から(present)だ!」

「ウッゼーんだよ!」

 

 距離を取った後も飴色爆撃継続!

 両手の砲から機甲師団でも相手にするかのような破格の火力が投下される!


 吾妻はゲートで受け止めつつ、その出口を敵二人と密着するほど近くに開いて反撃!


 ロベはそれを拳銃で破壊。

 ヴァークは纏ったエネルギーの鎧が、ぶつかった自らの攻撃をそのまま吸収、抜かりなくその一部として同化してしまう。


 降った雨が水溜まりを作るように、

 飴色が吾妻をひたす池をし始める。


 留まっていたら、またゲート内が飽和し、やられる。

 それが分かり切っていたので、彼女の方から行動を起こすしかない。


 楕円の一つに飛び込む。

 狙うのは先程と同じパターン。

                                   イイ

 入口が破壊された瞬間に、どこに彼女が出てくるか。

 それは向こうからは分からない。

 だから猶予が生まれ、そこに付け入る!

                                イイイイイ

 吾妻は準備を整え、いつ外に放り出されてもいいように——




                           イイイイイイイイイイイ




 咄嗟に振り向く!

 そこには飴色の火線かせんがぴったりマークしている!


 この空間にいる時、時間がほとんど停止する関係上、見かけでは全てが同じスピードで等速直線運動することになる。

 だから、追い着かれることはない。


 恐れるべきは、この一発が、その使い手とどれだけ繋がっているか、だ。


 彼女のゲートの出入り口のうち、どれとどれが繋がっているのか、“enter”と“exit”のペアなのか、それは彼女にしか分からない。

 だからロベは片方を破壊して、自分の死角に回り込まれたり、見えないほど遠くに逃げられる前に、彼女を外に追い出さなければならなかった。


 だが、この飴色が、ヴァークの目や耳の役を果たすなら。

 その気配を、ゲート越しでも感じ取られるなら。

 

 奴は、彼女がどの出口から現れるのか、それを追跡できる!


「ちぃいいいーーーッ」

 

 魔力を集めて防御を厚く!

 ゲートから出る直前、出口の側が破壊されて投げ出される!

 中空の彼女へ、ロベが2丁を連発!


 魔力装甲で防ぎながら、背中に楕円を開き、背後から追っていた飴色に対処!

 だがヴァークがマイクロ・マルチ・ミサイルのおかわり大盛りを準備しており、存分に振舞ってくれる!


 上下から撃ち放題、誤射の心配も無い状態で、球形の火力に押し囲まれる!


「防御用のゲートはすぐに飽和する!新たな逃走経路は俺が破壊する!逃げ道は既にない!お前の負けだ!」

 

 亀のように閉じ籠るしかない彼女の状況は、ロベが言うように手も足も出ないと言う他ない!


「安心しろ!世界が“自由”の意味を思い出した時、お前も至高存在の一部として、永遠となる!敵も味方も例外ではない!」

 

 命と対話し、真実に向き合う。

 意見が対立する相手であろうと、それはとうといことなのだ。


「吾妻漆!誰にもお前を侮辱させない!お前は、誰もが信じうやまう対象として——」


「うっせーぞ……!」


 銃声と演説の隙間に刃を入れて、彼女の声が悠々(ゆうゆう)と通る。


「何言ってんのか、分っかんねーっ、つってんだろ……!」


 球が、緯度経度線を引かれたように、こまれにされる。


「なんだと…!?」

「俺は俺として、俺の力で名を残す…!」


 ブーツから推進剤を吹かして急角度降下をする吾妻!

 その背後から飴色が襲うも、ゲートに入り、その更に内側で、入り口が位置する方向へ開かれた出口から、飛び出す!


 自らの尾を噛むどころか、自らの胴と正面衝突する蛇といったさま

 そして正面から来るゲート破壊弾は純粋魔力の層で防御!


「モンタとリュージの名前も!俺と一緒に残す!関係ねー奴らの功績なんかと、ごっちゃにさせてやるもんかよ!!」


 距離が詰まる!

 あと少しで届く!


「いいや!こちらの流儀に従って貰う!」


 ロベはわざと狙いを外して発砲!


「何故ならここで死ぬのはお前だからだ!」


 弾道は180°近くカーブしながら側面のゲートを破壊!

 そのまま直進して彼女に穴を開けようとする!


 それを刈り取る吾妻のかかと

 脚を横に伸ばして独楽こま回転したのだ!


「だが、あの威力を受けて!何故魔具が破壊されない!?」


 特殊弾を撃ち切り、プラズマ連射モードに切り替えた2丁を、マシンピストルモードでバースト射撃させる彼は、それらを払い飛ばす彼女の足の残像に、赤き燃焼以外が混ざっているのを見た。


 飴色が。


「あれは……!?」


 最後に理解する。

 飴色が出て来る寸前の、ゲートの出口。

 それを足に設置し、振り回す。


 それによって敵の攻撃力を、完全に自分の近接武器として扱っている。

 

「なんたる…!なんたるわざよ……!」


 敵の攻撃が、異空間に入ってからどれくらいで出てくるか、それを体感に染み付かせた者のみが到る境地。

 あの中に呑まれたものは、その時点でおのが物とでも言いたげな、魔学において全く正解な傲慢さ。


 そして、追い詰められた時にそれを編み出す、自由で大胆な発想力。


「死んだ奴は殺した奴に従うってんなら!」

「お前は本当に、素晴らしい潜——」


 踵が袈裟懸けに落とされ、


「お前が俺に従うんだろーがっ!」


 肩から腹までのラインで上下に分断される。

 

——だが吾妻、お前も、奴らも、分かっていない


 彼は少しばかり、時計を早めたに過ぎない。

 もうその役目は、なかば終了している。


 そして、愚かな革命家をいいように利用している、そう考えている今回の黒幕達は、実のところ本質を見誤っている。


 汚い物を遠ざけ、厭な物を見えるところから排除し、生の臭さと死の冷たさの、両方を忘れてしまったから、

 だから彼らには分からない。


——AS計画の先に、

——“市民”達の、有力者達の、安心は、ない………


 彼らはより安定した支配を得ると、そう勘違いしている。

 義務や仕事がもっと楽になると、見当違いな希望を抱いている。

 だから、ロベが望んだ通りに、動いてくれる。


 自らの首を、絞めてくれる。


——死が、再び、日常に帰ってくるぞ………………


 そしてそうなったあかつきには、潜行者達は、戦士達は天に到達する。

 人がほうじる、絶対の地位に置かれるのだ。

 

 彼を蹴りて、チャンピオン同士の空中戦に移る吾妻の姿を最後に、


 彼の両目は、もう何も映さない、役立たずのガラス玉となった。

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