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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十三章:呪いが解ける時

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636.そこで出て来るのは違うじゃん

 灰の午後に、星無き夜天やてんが口を開く。

 黒い空に、熱の軌跡と光点の群れが散りばめられ、

 まるでミルクティーの川が氾濫するさま


 吾妻の周囲にゲートが一斉に展開され、そこに飴色が吸い込まれたのだ。

 

 バイク型が接近。

 今度は魔力の揺らぎを観測し、ゲートを避けながら彼女を殺しに来る。


 それが黒の楕円と擦れ違う瞬間、その中を通って飴色が放たれる。

 友軍の銃撃。

 近過ぎる。ローカルが弾道を修正する前に車体を削り取ってしまう。


 両輪を前へ派手に投げ出しながら横転、そのまま転がっているところに別のゲートが通過。

 豆腐めいたサイコロ形に切り分けられて四散。


 彼女が立っているだけで、敵が勝手に遠隔攻撃力を与えている。

 ヘリコプター型も戦車型も、攻撃密度を上げるほど、自分達が避けられなくなる。


 その中を突き進むロベ。


 後方に開くものは全て引き離し、そこから出た飴色が自分を避けるだけのスペースを作る。

 近くに開いたものは、黒に染まった剣で斬り散らす。


 彼の魔法は、戦う者達の魂、その集合。

 自らと共に戦う者であれ、敵対する者であれ、戦闘となったディーパーの能力を、彼も使えるようになる。


 彼の神話では、彼ら真実の体現者達は、一つに集まり「至高存在」という概念に統合されている。

 つまり本来は、歴史上存在した、あらゆる魔法戦士の力を行使可能。


 けれど、彼はそこまで思い上がれていない。

 今自分と戦場を共にする何者か、それが彼の魔法の適用範囲の限界。

 

 それでも、吾妻が持つ絶対に近い防御・及び攻撃。

 それを抜く力としては最適任!


「お前は既に、無敵ではない!」


 ロベが居場所を晒せば、吾妻は彼を最優先に狙いに来る。

 相性が悪いと分かっていても。

 という遠照の読みは、見事に当たった。


 ロベは剣を最短で突き、細長く見える体を目掛けながら、左手の機関銃による銃撃に後を追わせる。

 十兵衛をとしたのと同じやり方。


 余韻を引く金属同士の衝突。

 耳に痛い波は雨粒を砂のようにぜさせる。


 剣先が打ち上げられた。

 金属質なブーツ型魔具。

 それが数箇所から細く火柱を上げ、姿勢制御しながら二撃目。


 魔具の機構が作動。

 足裏にゲートが設置される。

 飴色の連射を吸い上げながら膝を伸ばし、剣を根本近くから折り取る。

 

 ロベの魔法は、吾妻の魔法を相殺できなかった。

 何故か?


 魔力量に格差があり過ぎたからだ。


 ロベの使うコピー魔法は、「彼の魔力量の範囲内でのみ実現できる規模」に留まる。


 研ぎ上げられた技量を相棒とし、老齢というハンデを抱え、多数のモンスターで弱らせた後だった、正村十兵衛(世界10位)には勝てる。

 だが、吾妻のような、純粋な才能の塊相手では、普通に押し負ける。


 相殺により、互いに削り合うか消滅させ合うかしていれば、量が多い方が勝るのは自明。


 魔具による有利も、吾妻が専用魔具のブーツを持っていたことで、帳消し、どころか差し引きマイナスもあり得る。


「足りてねーぞ!」


 そこからの連撃により、剣の残りとマシンガンを喪失。


「覚悟か、考えか、技術か、金か、それか力か!勝つために何がいるのか知んねーが!」


 背負っていたライフルを構えた時には、逆の足の膝で銃身が折り曲げられていた。

 その次の蹴り上げで断ち割られ、二つのゴミへと生まれ変わる。


「なんもかんも!全部足りてねー!」

 

 下がってから別の得物を抜こうとしているロベ。

 吾妻の連蹴れんしゅうは長さが伸びるように彼を追跡。

 隙を許さない。


「じゃー、勝てるわけねーだろーがッッッ!」

 

 当たったところが異界に持って行かれる攻撃を、足元や回避先にゲートが開かれる分も含め、紙一重でロベはかわし続ける。


 銃兵共は、次から次へと形を崩され、彼女に引っき傷一つ付けられない。


「決まりだな!おっさんよー!」


 ブーツが地を砕く。

 その破片がゲートを通り、ロベの後ろから右肩甲骨付近へと突き刺さる。


 詰み(チェックメイト)を宣言!

 どちらに避けようと何かしらゲートに呑まれ、骨肉こつにくの大部分が欠落する!


 ロベでは抗することが出来ない!



 

 だが!




「!」


 シールド越しにも衝撃が来た。

 吾妻の背後。

 ゲートの一つが吸い込める分を超過したエネルギーを通してしまっている。


「突破された!?」


 別のゲートに飛び込んで緊急回避。

 支柱の如く極太の飴色がそこを通過。


「んだよ、あのバ火力!?」


 彼女は攻撃が来たらしい方向を振り返り、面倒になったと舌を打つ。


「おい!俺達は今、大事な話してんだ!入ってくんじゃねー!」

ケチケチ言うなよ(Why not)?つれないじゃあ、ない、か」


 飴色の大翼たいよくを背負い、鳥類を模したような同色の外装を纏う女。

 その鎧は、よく見ると絶えず火種を投げ入れられた、破壊の流動である。


「ロベ、ロベ、ローベェエェエェエェエェ……!」


 触れる全てを蒸発させながら、ビブラートを利かせるアルトボイス。


「ロベ?もういいだろう?ロベ、なあ、ロベ・プルミエル」

 

 右手に持ったガトリングガンに、左手を突っ込む。

 腕が両側に開かれ、チェーンガンと速射砲の二つに分かたれる。


「ここだよ。ここだ。ここしかない!ここらが使いどころだよ!」


 言われた彼は、両腕を交差させ、腰の横のホルスターに手を掛ける。

 抜かれるのは、2丁の自動オートマティック拳銃ハンドガン

 

 一つずつ、マガジンに弾が入っているかを確認。

 上下逆方向を向かせ、銃身上部を引っ掛けてから、それぞれの銃口が向く方へ押し、スライドを滑らせてチャンバー内に弾丸を装填。


 二つのあなが、

 鬼のげいが、

 吾妻へと定められる。


 危険生物が目の前に転がっていた時の、生理的な忌避感にうるさくせっつかれた彼女は、見当がつかないながらもゲートを通って場所を移す。


 そして、異空間を通る途中で、



 

 唐突に、意図していない場所に放り出されてしまう。

 



「なんだ…っ!?」


 横っ腹からしたたかに打ち付けられる寸前で受け身が間に合い、大きな行動不能には繋がらずに済んだ。


「なんだ……ってんだ……!」


 しかし、結果的に無事だっただけ。

 彼女の魔法に異変が起こったことは、目を逸らせないほどハッキリとした事実。


 彼女は移動する前の立ち位置、そこを囲む楕円を見た。


「………!」


 そのうちの幾つかが穴を穿うがたれ、破れ、溶かされるチョコレートみたいに、散り消えていった。


「その銃…、そのたま…!」

「魔法の効きの為だ。教えておこう」


 白い硝煙を上げる二つの玩具を持ったロベが、奇襲では殺せなかったと見切りをつけ、認識共有による威力上昇を仕掛けた。


「多重魔法陣刻印型の弾丸。俺の魔法効果を、ほぼ完全に乗せることが出来る」


 彼女の防御を貫通する弾丸。

 一発一発が、工芸品並に精緻せいちで高価なそれは、


「俺はこれを、まだ大量に持参じさんしている」


 マガジン一つ分だけでは終わらない!


「そして、分かるだろう?俺の魔法が、剣ではなく、弾に乗った意味が」


 先程までは、剣で守りを無効化してから、銃で撃つという二段階認証で、彼女の内臓までの通行を試みていた。


 今は、「相殺」する魔法効果そのものが、音速を超えるスピードで、ローカルによって彼女を追う。


 それも魔法陣によって、効力を大幅に引き上げられているわけなのだから、そこらのゲートを一つ二つ消した程度では、弾丸に込められた魔法は消えない。


 ロベはこれで、近付かなくても良くなり、

 吾妻の方は、防御も回避も困難の頂点に。


「はっ、上等…!」


 彼女は攻撃的に歯を見せる。


「目で見て合わせりゃいーんだろ?」


 「それが出来れば苦労はない」、

 十人中十人がそう言うだろう台詞セリフで、見事に対策を確立。


「来いよ、誰でも使えるオモチャで、セコセコやるしか能のねーダメオヤジ」

「おーい、僕も居るって、忘れてないかーい?」

 

 殺し殺されは、より間合いを縮めて、


 互いの喉元を握り締められるほどに。


 “号砲雷落ワールド・ウォー”立ち会いの下、即死と即死の向顔マッチアップ


 その火蓋は切って落とされた。

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