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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十二章:取り返しのつかないもの

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613.両方が引き撃ちしても勝負は成り立つ

 ほぼ火球と言っていいエネルギー弾を撃ち、コア由来部分の質量が消失して軽くなったカートリッジを排出。新しい一本を刺し込んでセット。


 これで残り四つ。

 

『身体強化って便利だね…!まるで追い着けない…!』


 ディーズの嘆きの通り、逃げ回る魔法使い(ビショップ)相手に、彼らはあと一手を詰め切れていない。

 遠距離主体の能力ながら、近距離戦闘で充分に機能するよう、よく訓練されている。


『撃った!11時!距離100!道なりに接近してる!』


 曲がり角の手前で構えたスパルタクス。

 その頭上の窓を破って現れる、四角い耳と鋭角ボディの眷属。


 強固なシールドとアーマーで受けながら撃ち殺し、ジェネレーターのカートリッジを交換。

 残り三つ。

 

 超音速で壁を透過するような理不尽攻撃でないので、対処が間に合っている。

 だが消耗させられ、敗着に近づいていることは、否定できない現実。


 身体強化に過剰な魔力を回し、無駄に体外へ溢れさせてしまう相手なら、追跡も容易。だがそうでなければ、撃った場所から移動された時点で、ほとんど完全にロストすることになる。


 魔力探知による索敵だけなら、の話だが。


『速い…!けど動態検知には引っ掛かってる!マーク地点から北西方向!』


 ドローンは、もっと厳密に言えばそれらが抱えているカメラは、極めて高性能なオモチャである。

 魔力探知モードの最中にも、ハイスピード光学カメラが構えられており、一定以上のスピードで動くものが映ったら、自動的に撮影する機能付き。


 進行方向が分かれば、これまでのスピード感から、大雑把な到達地点を割り出せる。

 

 これで、足の速さ勝負にも大勝していれば、言う事ナシなのだが。


『うぅっ…!距離が縮まらない…!』


 彼はアーマーの身体能力拡張機能によって、補助的な高機動を手に入れているに過ぎない。ランク6の優秀なディーパーの身体強化と、並ぶことが精々で、悪ければ引き離されることすら有り得る。


 よーいドンで競走しても、間違いなく勝利はできない、ということ。


 追い着けないなら、減るのは彼らの方だ。

 長びくほど、相手が有利。


 だがこの指し合いは、駒1枚ずつでやってはいない。

 

『もう少し待って…!今、しぼってるから…!』


 ディーズが兵員を動かし、包囲を作っている。

 即死クラスの攻撃手段を持った集団を配置すれば、少しは身動きを制限できる。


『だからそれまで……、!次弾!正面!距離変わらず!だけど高い!』


 その報告が終わる前に、彼の胸に三連鋭角三角形が刺さる。

 射殺するもアーマーが破損、シールドも割られた為にカートリッジ交換。

 拳銃にセットしていたものも入れ替えて、未使用カートリッジは残り一つ。

 

 ビル上から直線最短距離で撃ってきた。

 連携で挟まれることを見越して、逃走より攻撃に比重を置き始めたか。


 こちらからライフルで狙おうとするも、ディーズからすぐに敵が離脱した旨を告げられ、すぐに追いかけっこを再開。


 このままだと、次の次で明確に負傷、

 最悪を想定すれば、3手で彼はられる。


『スパルタクス!次の角を左!』


 そうやって一刻の猶予も無い時に、ディーズは狩狼の逃走方向と正反対を指定してくる。


 何を?

 とは聞かない。


 彼はすぐに意図を読む。

 この状況を打破するには、それしかない。

 

『50m先!見える?』


 その予想はすぐに当たる。

 ディーズは最善手を引き寄せていた。


『!来るっ!』


 そこに、より遠くなった相手から、刺客が放たれる。


 今度は建物の隙間を縫うように彼に接近し、


 だが途中で異変に気付いただろう。


 スパルタクスが、速過ぎる。

 先程と比べ、明らかに加速している。


 そしていざ通りに出た時、相対速度が低下していたことで、これまでより軽傷で猟犬に反応。

 自分の後を猛追した触れたそれを、シールドが削り切られる前にプラズマ弾で熱殺。


 彼は“足”を手に入れた。

 混乱の最中さなか、キーを挿したまま乗り捨てられたバイク。

 それを法定速度の数倍で飛ばし、しかばねと車で埋まった道路を渡らせる。


 天候と相俟あいまって、ツーリングにぴったりな交通状況とは言えないが、彼が自分で何かを乗り回す時は、大抵が最悪のコンディションだった為、特に問題とは感じない。


 渋滞する蜘蛛の巣めいてゴチャゴチャした街中を、衝突が怖くないかのように、時に塀を蹴りつけ倒れるような方向転換をしながら、見ている側がハラハラする走りで駆け抜けていく。


『やった…!“網”に掛かった…!』


 更に罹患者達が、とうとう狩狼を捉えたようだ。

 

 敵も減速を余儀なくされる。

 これで一気に王手『うっ、嘘だろうっ!?』とはいかない。


『5人居たのに…!一瞬で…!?』

 

 身体強化と、焼夷弾も含めた合成眷属の強力さ。

 それらによって、こちらが想定した以上に、手早く制圧された。

 網は食い破られ、猛犬はまた自由に。


 多対一で囲い込み戦法を取るという算段は、これにてご破算である。


『ご、ごめん、もうそこに回せる戦力がなくなった…!』


 罹患者達の追走は、絶対に追い着けないのだから意味がない。

 なら新たにもう一枚、網を用意するか?


 否。

 この一箇所の為に、これ以上全体の人的資源を、薄くするわけにもいくまい。


 結局は、スパルタクスが一人で追い、一人で狩る、それが求められる局面。


『地図上に、幾つか建物をマークするね…!』


 ならば、その条件下で、出来るだけ有利を作るやり方を考えるだけだ。


『相手の動きを見て、そのどこかに先回りするんだ…!』


 ここから先、ビルがまばらになる区間が待っている。

 カートリッジも、最後の1本がまだ残っている。


 まだ敵の行動次第だが、もしこちらが一手でも、先んじることが出来れば、


 この撃ち合いが、的当まとあてになる、そういうチャンスが待っている。

 

 そうなったあかつきには、


 そこが決着の場となるだろう。

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