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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十二章:取り返しのつかないもの

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609.最善を尽くしてるのに

 運動エネルギーのアギトが大気ごと門扉もんぴを食い破る。

 オットーは魔法生成された壁に身を隠し、アーマーに刺さった弾を蛸足で摘出。

 口径はせいぜい7~8ミリ。


「マジカヨ…!」


 威力が想定より強い。

 一発でシールドを破られるとは思っていなかった。

 

 今も彼の背を守っている障壁が、恐ろしい勢いで割られていっている。


「単ナル、アサルトライフル、ジャネエナ……!」


 銃身を覆う角ばったカバーが作る、近未来的外見と合わせて、まるで未知の兵器。


 どうして彼ら漏魔症罹患者がそんなものを持っているのか。

 彼らを率いるロベ・プルミエルは何者か。


 それを詮索するには、まず対処し、勝利しなければならない。


「“神聖海棲釣足八本タナ・タプ・ハカハカ”!」


 完全詠唱によって伝達阻害の黒煙幕こくえんまくを吹きつける!

 これで一方的に視覚、聴覚、嗅覚を奪った!

 この中では大雨の脚音あしおといびつな狂騒曲を奏でることだろう!


 後衛から遠隔魔法によって火球や実体弾が飛ぶのに合わせて飛び出す!

 

 当てずっぽうの流れ弾を蛸足と再充填したシールドで受けながら「警告ハシタゼ!」射程圏内に入った5人を足の一本ずつで貫き殺す!

 

「クソバカが!残業を加速させやがって!」


 宍規は盾を構えながら全力後退!

 背後から何枚か楕円形の金属板が飛んで彼の前に突き刺さる!


 それなりの硬度を持つ物質だが、ダンボールにのみを入れる容易たやすさで破かれていく!

 盾もすぐにボコボコと凹み、穴が開いてボディシールドが削られる!


「ふざけっ、ふざけんなっ!」

 

 そうわめく宍規に二撃目を入れようとしていたスパルタクスだったが、最初に撃たれた瞬間にすぐさま遮蔽に隠れられ、姿を捉えられなくされてしまった。

 獅子の頭を貫く弾丸の角度を感知し、おおよその位置を割り出されたか。


 場所を移して追撃しようと顔を上げ、すぐ横に浮かんでいる異物が目に飛び込む。


〈しゅー、しゅっ、しゅふっ、ふ、ふしゅう、しゅうっ〉


 赤いワンピースを纏い、手足は長く、首が直角に折れた女。

 顔の穴が、全て口で構成されたそいつは、雨にも濡れず、

 どうやら彼の方を見ているらしい。


〈しゅ、しゅう、しゅぅう、しゅう、ふしゅっ、しゅうっ、しゅっ〉


 拳銃を抜いて連射。

 ブスブスと突き抜けるだけで効いている様子がない。


 バックステップで距離を取ると、目の前の空中が発火する。


「…!」


 更に突き出していた拳銃の先端が歪められ、炎に包まれたので手放す。

 銃はその場に浮いたまま、メコメコ丸められていく。


 空気の圧縮による急速加熱。

 それにより大気がプラズマ化したか。


 大通りを見れば、宍規を撃っていた者達の前にも同じ女が現れ、次々と圧殺、焼殺している。


 自動オート報復カウンター

 特定の対象を攻撃した者を、どこまでも追尾して攻撃し続ける。


 恐らく相手の生死を問わない最高出力稼働。

 スパルタクスはスリングでライフルを肩掛けに背負ってから疾走。

 

 建物屋上から跳躍し、背部や腰部ようぶ、脚部に取り付けたジェットパックを駆使して隣の建物へ。

 前転で衝撃を殺して着地。


「アバヨ!」

 

 蛸足がナイフを投擲し一人を殺害!

 2本ほど銃撃で吹き飛ばされるも、数本で車両を持ち上げて投げ飛ばし、数人纏めて潰し殺す!


 蛸足で銃を拾って斉射!

 数秒で爆発することを学習済みであったので、10発ほど垂れ流しては投げ捨てて、空いた足を墨に巻き込まれた敵の近くに飛ばして3連串刺し!


 そうやってR(ルーク)が開いた道に警棒型の魔具を構えた数人のN(ナイト)が突撃!

 それぞれの魔法や高い身体能力によって撲殺、斬殺による蹂躙、侵攻!


 迎え撃つ漏魔症軍団の頭領、ロベ。

 彼はトーチカとして改造されたトラックの荷台に立ち、金属壁きんぞくへきに開いた穴から銃口を覗かせ、全体を見渡しながらライフルを撃っている。


 指揮をしなければならないので後方に立っているが、敵が生み出す黒墨くろすみが一直線に、彼を目掛けているのを目の当たりにしながらも、一歩も退く様子を見せない。


 引鉄トリガーを引き続けるのでもなく、何発か撃って離し、何発か撃ってまた離しと、精度を重視した冷静な射撃方法は、彼が熟達した兵士であることを雄弁に物語っている。

 

 放物線を描き、そこを爆撃する魔法弾!

 直径数mを誇る青っぽい大火球!


 数人ほど蒸発させてまだ余る熱量を持ったされが、狙い通りの地点に直撃!


〈しゅぅぅぅ……!しゅっ、しゅうっ〉


 建物から建物へ。

 その間も女は追い掛けてくる。

 空気に点火し、雨に揺れる炎の尾を引きながら。


 一人につき一体レベルで数をそろえ、敵を攻撃、追跡させる、というのを、ダンジョン内でもないのに続けていられるとも思えない。普通はすぐに魔力が枯渇こかつする。


 だからこそ、敵から受けたエネルギーを利用するタイプの攻撃かと当たりをつけていたが、それならば時間経過で消えてくれなければ嘘である。


 恐らく召喚には敵のエネルギーを使い、それで殺せなかった場合のみ、任意の魔力供給をすることで眷属を維持する、という形式なのだろう。


 問題となるのは、その眷属を何故か殺せないという点である。

 彼が持つ銃であれば、魔力の塊であっても拡散させることができる。

 

 それはそういう武器であると、そう聞いている。


 もしや、追加で攻撃を受けたら、それを自らの動力として吸収してしまうのだろうか?だとしたら、使い手を殺す以外に、解除させる方法が無くなってしまう。


 もう一丁の拳銃を抜いて、考える。


 術者は車か何かの中に隠されているだろう。

 外から攻撃しやすいところに、これ見よがしに立たせる馬鹿はいない。


 それでは、どうやってあれを消せばいいのか?


「怯むな!撃ち続けろ!」


 青い炎に巻かれながら、しかし驚異的な軽傷で済ませたロベは鋭く命じる!

 銃砲と土砂降りのシャウトがり叫ぶ中で、無線を通じて兵を鼓舞こぶする!


 だが黒煙の勢いは止められない!


 すぐに手が届く距離に迫られている!


 そう、すぐそこだ。

 女はスピードを増しているように見える。

 

 中々死なないスパルタクスを、優先的に排除しようと、術者が本腰を入れているのだ。


 装備の機能で飛び逃げているが、カートリッジに限りがある以上、いつまでも続くものではない。

 機動隊が魔素生成装置を持ち込んでいるなら、魔力切れはまだまだ先。


 倒す以外に、助かる道はない。

 だが、どうやって?

 

 壁を蹴り、反動をジェットパックで制御し、ビルの隙間を跳び渡りながら降りる。


 重力による加速も利用して振り切ろうとしても、女はまだついて来る。


 地面に着いても、撒けていない。


 更に速さを増し、彼に襲い来る。


「スッコンデロ!」


 オットーは2本の蛸足でライフルを構え、トラックにかれた簡易城塞(じょうさい)、そこに開いた穴に発射!

 当然、ロベは身を引いて隠れざるを得ない!

 

 抵抗の弾幕が薄くなり、完全に道が開いた!

 蛸足を伸ばして「ナイニィ!起きろ!」

 



 深く食い込んでいたオットー達、その足の下の路面が盛り上がる。




〈シィィィィィィィィィ!!〉


 四肢を持つ、と辛うじて分かる融合体。

 丸く太いシルエットのそれが、アスファルトを自分の表皮として取り込みながら、樹齢数百年の杉のような両腕で上体を持ち上げる。


「ナッ、ンダァァァアアアアアア!?」

〈ッッッシィッッッッックシィイイイイイイイ!!〉


 絡みついた電線が、バチバチと無配慮なイルミネーションを点滅させ、り満ちる透明な玉粒たまつぶを気化させる。


 前傾姿勢で、ナックルウォークをするゴリラのように這い進み、途上の車両も建造物も道も人も呑み込んで、肥大化を続けながら正門へと圧し掛かる。


 シャワーのような魔法攻撃を下から浴びせられながら、

 表皮を犠牲に体型を維持し、


 飛び込むように、倒れ潰す。


「あー!いってぇなぁチクショウめ!」

「動かないでください!今治療します!」


 アーマーの一部を食い破られた宍規が、傷を塞がれていたその時、

『第一P(ポーン)隊!敵がそっちに』すぐ近くで連発される銃声。

 左手の拳銃で治療役の頭を撃ち抜いたスパルタクスは、反応して立ち上がろうとした宍規の脚にスナイパーライフルを押し付け、発砲。

 

「がアアアアアっ!」


 もだえる彼を追いかけてきた女に向けて宍規を蹴り飛ばす。


 一人を殺し、もう一人に重傷を負わせた。

 これが傭兵やならず者が相手なら、味方を巻き添えにしてでも敵を八つ裂きにする。


 それでは、法治国家の番人を自負する者達なら?

 

 宍規が圧縮される前に、魔法が解除された。

 仲間思いな良い部隊だ。


「!?てってめえ!?魔力が……!?」


 何か言いたげだった彼の至近で閃光手榴弾を炸裂させ、その場を去る。


 その間に、漏魔症の軍勢が前線を押し上げ、機動隊の車両に集中砲火を浴びせている。


 普通なら臆病風に乗って逃げていただろう。

 だがディーズが彼らの尻を叩いて回った。


 「あの中に居る本体を殺さないと、この恐ろしい能力に皆殺しにされる」、そう脅したのだ。


 警察と、教員。


 それぞれの任地で彼らが守っていた、


 ギリギリの秩序。


 それが崩壊していく。


 明胤学園は多数の民間人が逃げ込んだ内部に、


 神宿は避難未完了区域に、


 どちらも侵入を許してしまった。


 抑止されつつあった虐殺が、


 枷から放たれようとしていた。

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