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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第三章:友達よりも敵が増えるペースの方が圧倒的に速い件

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56.それはズルじゃん part1

 俺は配信を頻繁に行っている。

 ニークトは決闘の映像を公開されているし、詠訵からの情報もある。


 互いが互いの山札の9割を把握済み。

 だから一手目は、どこまでも予想通りだった。


「“誅狼リューク”!」

 

 まずゼロ秒でニークトが魔法の簡易詠唱。

 その体表を覆っていく鈍い金色の魔力が、同色をした肉食の毛皮へと変化した。

 狩人が獣の皮を被るように、外装としての狼の姿。

 手足に外付けのえいそう、頭にヘルムとなったあぎと

 俺もモンスターの皮を被ってた時期があったが、あれはそんな見た目だけのものではない。実際に血と筋肉を伴い、防御力と攻撃力を、共に底上げする魔法の鎧だ。しかも、魔力で補修も可能と来てる。


 狼の口内から、ゴーグルの双眸が光る。この詠唱を完了出来た時点で、負けは無い、とでも言いたげだ。

 

 開始と同時に魔力弾を撃ちながら駆け出した俺だが、それでも止められなかった。が、それは分かってた。「できたら最高」くらいの感覚であり、その程度で妨害にならないのは、ある意味予定通りだ。


 俺の強みは、魔法を使ってるわけではない為、理論上は全ての攻撃を詠唱無しで可能とすること。そして、魔力操作の精度と射程だ。

 しかも、事前に詠訵に見て貰った時に知ったのだが、魔力に色が付いてないらしい。自分からは見えないもんだと思ってたから、これがアドバンテージになるというのは、嬉しい発見だ。


 奴に撃った魔力弾は、何の意味も為さなかった。当たった物が相手を揺らす事すら出来ず、だから外れた物なんて完全無視だ。


 それを戻す!

 正面から来る俺を斬ろうと踏み込むであろう軸足、その下に滑り込ませる。

 ナイフに纏わせた魔力回転刃で皮を突き破り、シールドに到達させ、ポイントを削る。今回は血管侵入による追加ダメージが考慮されているから、深く刺せればポイントを多めに奪える!

 そこまでいけなくとも、狼のガワの方に通っているらしい血管内に、魔力を侵入させる事は禁止されていない。潜伏させ、ここぞで起爆し、体勢を崩す事だってできる!


 一人挟撃作戦!シンプルだが、足運びだとかを重視する相手なら、モンスターだろうが有効な戦法だ。

 そしてニークトが、足を、

 浮かせ

 てない!


「ヌグ…!?」


 タイミングを外された!攻撃動作に入っていた俺は刃と魔力を引こうとして宙ぶらりんの状態になりそこに改めて踏み込むニークト!

 もろに食らえば体を両断された判定を受けるかもしれず、詰めれば腕にある爪の方で大ダメージを受ける。だから下がるしかない!魔力炸裂による後方緊急回避!が、剣で胸を浅く切られ、ポイントが結構減った。943点。

 そしてあいつの一歩、予想以上に速く深い。指を使っての一回転で加速、振りもスムーズだった。あの巨躯が更に膨らんだとすら感じてしまう。外から観るのと、こうして戦ってみるのとで、見え方がこうも違うか。


 最初の交錯は負けた。

 なら次だ。やる事は変わらない。

 あいつの意識外から魔力を飛ばし、動作を中断させ、その隙に刺す。ニークトはそれを分かっているから、今みたいなフェイントやブラフを挟んで来る。この読み合いを繰り返し、勝ち越せばいいのだ。

 特に俺は、一撃入れれば幾らでも次の一撃に繋がる。


 二度三度負けたくらいの負債は、必要経費だと全然割り切れる。


 クラウチングスタートめいた地面スレスレで構え、踏み切る!

 魔力弾を再度撃ちまくりながら接近!

 既に背後の近くにまで幾つか魔力塊を配置済み。俺は正面から、


 と見せかけて身体強化をフル出力にして時計回りに迂回!ナイフを逆手に持ち替えて横っ腹に刺す!

 のを奴は追えている筈だ。ならここで俺を迎撃しようとこちらに向き直るだろ!足下警戒で地面から離さないと言うなら、その右ひざの裏に特大の魔力爆裂をぶつける事で上体を上に向けさせ、俺を追う剣の横薙ぎを上方に流す!

 

 入れ!

 そう念じた一撃だったがニークトはそこで自分から足を浮かせ、俺の魔力を太腿辺りで受けて加速、鋭利な爪を持つ足で蹴り上げて来る!魔力炸裂回避をしながら、攻撃の為に使っていた右手で受ける、が、シールドで半減されて尚、鋭い痛みが数条襲った。

 距離を取り直して被害を確認。ボディースーツを破って、皮を切るまでは行っている。ポイントは…850点。


 ヤバい。今のはかなり痛めのが入った。

 そろそろ読み勝たなければ、それもカス当たりでなく、しっかりと取り立てなければ、点差が縮まらない!

 次だ。

 次を落としてはいけない。


——これならどうだ…!

 

 三度目の突撃!

 魔力弾の配置をしながら、俺は奴の二歩手前で「な!?」その一手を潰すようにニークトが急突進!ショルダータックル、しかも肩から追加の爪が生えている!

 到達タイミングが外された為にナイフはまだ腰だめの位置!一寸先の肥満体を刺せない!

 避けきれない、


 ならば、


 俺はしゃがむように肩の爪を避け、肘を横に曲げた左腕を前にした低姿勢へと移行。腰を入れてタックルを迎え撃つ!「ぐううう…ッ!!」重い…!が、俺は吹き飛んでない!

 さあ来い!この状態なら、俺はお前にナイフを刺せる!どうすれば防げるか?そう!膝蹴りだ!それが最短!膝からも爪を生やすか?それでもいい!どうせ大損害を受けるのならば、俺はお前に傷を刻める方を選ぶ!

 右膝を出すには、体重を支える為に、左足を寄せる必要がある。だからそれの移動先となるであろう箇所に魔力を「え?」


 一歩、更に深い。

 さっきまで下ろす気だった足が、その下に魔力が入った瞬間に、高度を変えずに滞空し、より先へ、俺の間合いの内側へと、踏み込む地点を修正した。


 当然、俺の魔力は用を為さず、そしてニークトの右膝が迫り——


「ガッッッ!!」


 最後の最後、胸の辺りにぶち当たると予測し、そこに魔力塊を割り込ませる事で、本当の直撃を辛くも逃れた。それでも、残ったポイントは、


——602点…!?


 いけない。

 これは、絶対に、いけない。

 

 認識を改めろ。

 こだわったら、次に取り返すとか言ってたら、そのまま終わる…!

 何か、おかしい。

 特に最後だ。まるであの時あの刹那、足の下に魔力が来るのに気づいた、みたいな。


——俺の魔力が、見えている?


 いや、「見て」はいなかった。だけど、何かの方法で、感知してるとしたら?

 方法はこの際置いておく。重要なのは、こいつ相手に意識外攻撃は厳しい、という事実だ。

 何か別の切り口が要る。


 どうする?

 こいつを倒すには?

 勝つには?


「どうした?終わりか?」


 狼の口の中、暗い闇から、冷たく諭すような声。

 「お前では、何をやっても、勝てない」、と。


「ようやく大人しくなったな。だが猿は猿。この場はどれだけ“お利口さん”でも、性分では野生を忘れられず、真の意味で人に混ざれない、だろ?それでもここに居たいなんて、鳴き喚くって言うんなら——」


——オレサマが直々に、檻に戻してやる。

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