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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

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597.複雑怪奇なりぃ………

「ニハハハハハ!やっ、おっひさ~~!カルミナ・ルームゥ!」

「うぇっ!?」

「なぁ~にぃかなぁ~?そのかおはぁ~??ニッハハハハ!」


 配信活動を再開し、夏休みも始まって、さあバリバリやっていくぞ!となったところで、またしても甲都にお呼ばれしてしまった。


 というわけでまた面白い話が聞けるかと思って、ノコノコやって来た俺を待っていたのは、ウォーターブルーの長髪だった。


「酒カ……、リーゼロッテさ……、えっと、皇女殿下……?」

「ニハッハハッ!いいよいいよぅ~!リーゼロッテでさぁ!」

「り、リーゼロッテさん……」


 今にも飛び掛かって来そうな彼女を前に、腰を落としてジリジリと後退する。

 この人、スキンシップが激しいからニガテ………。


(((あなたはそもそも女性に触れられること自体が)))(おっけー!俺が悪かったからそのへんで!)


 っていうかこの人、飛行機内で会った時はあんなに大人しかったのに、どういう劇的変化?人格入れ替わった?

 ………もしかして、ただ酔ってるだけ?


「「リーゼロッテ。そのあたりで」」

「あ……、う~い。分かってりゅってガヴリール」


 俺の頭に浮かんだ世にも恐るべき想像を散らすように、別の声が横から割り込んだ。

 救世教のしろ装束しょうぞくを着た二人組が、外側の手同士を組み合わせて、指で一つの輪を作っている。


 ………一歩間違えると、ラブラブで記念写真撮ってるカップルみたいな体勢だ。

 内側の手で互いを抱き寄せ合っているところとか、特に。


「って今、ガヴリールって言いました!?」

「「こうしてお会いするのはお初でしたね。ススム・カミザ」」

「あっ、ドモ……ヨロシクデス……」


 コメツキバッタに変化へんげする勢いでペコペコしてしまった。

 「向こうにはその文化がなかったハズ」、というところまで頭が回るのが少しでも遅れれば、「ははーっ!」と土下座までしていたことだろう。


 だって救世教会の最上層に属するチャンピオンだよ?仕方ないじゃんこちとら小市民なんだから。


「「そうかしこまらず。我々は代弁者でしかありません」」

「そ~そ~、もっとハグとかしちゃっちぇ~」

「「あなたはもっと畏まりなさい」」

「はいは~い」


 こ、こんなカジュアルな感じで会える人達じゃないと思うんだけど……、これ、なんで呼び出されたの?


「やあ日魅在君。よく来てくれたね」

「い、五十嵐さん!これって一体……!?」


 ここで五十嵐さんに助けを求めてるあたり、俺は随分と毒されてしまった。

 その人、少なくとも名目上は、丹本潜行界のトップだって言うのに。


 この場の全員が初見だった場合、俺は卒倒そっとうしてただろう。

 免疫の大事さがよく分かる。


「彼らと、機密レベルの高い情報を共有したかったんだけどね。そうしたら君にも関係ある話だから、同席して欲しいって、彼らから要請があったんだ」

「お、俺に……?」


 え?なに?カンナのこと?ちょっとした実験とかなら協力できるけど、あげないよ?


「あー、まあ“ニャイトライダー”の話も関係あるけど、別にもらっちゃおう、ってわけじゃないからにぇ~?」

「な、何も言ってませんけど?」

(((あなたは本当に、もう………)))


 待って!ごめんって!気を抜いてたの謝るから!諦めないで!

 

 俺の顔が分かりやす過ぎる問題をなんとか横に持って行き、それぞれが思い思いの場所に座った。

 ガヴリールさんも座布団で良いのかな?ってか二人で密着して並んで、四つの座布団で作った正方形に乗ってるの、シュールだな……。

 

「「さて、先日エイルビオンの永級第8号、非公式名称“爬い廃レプタイルズ・タイルズ”が閉窟しました。これにより陽州から永級ダンジョンが一掃されたことになります」」


 やっぱり、俺が倒したill(イリーガル)は、入れ替わるんじゃなくてダンジョンごと消えるらしい。カンナの影響だろうと思う一方、じゃあなんでカンナ本人が殺した時はそうならないんだ?という疑問が出てくる。


 まあこれは謎でもなんでもなく、俺に殺させないと面白くないからって、加減してた可能性が高いんだけど。


「「それに伴い、これより益々の混乱が予想されます」」

「えっと、ごめんなさい………」

「「いえ、あなたは身を守ったに過ぎません。我々はせきもんに参ったわけではないのです」」


 逆に、俺とそれなりにいい関係を保つべく、呼んだのだと言う。

 まだ話が見えてこない。


「「プロジェクトAS(アルファ・シエラ)について、お耳に入れたことは?」」

「アルファ……えーと、この前、五十嵐さんから……」


 なんでも、去年の夏休みとか、今年に入ってからの世界大会とかで、俺が狙われまくっていたのは、詳細が分からない計画のせいであるらしい。


「当然、君達はその言葉の意味を知っているよね?」

「ま~にぇ~」

「えっ!?マジですか!?」


 うおおおお!救世教の偉い人ともなるとムチャクチャな情報強者だな!


「それを教えてくれるってことですか!?」

「「いいえ。そこまでは出来かねます」」

「あららっ?」


 え、そういう流れじゃなかったの?今の。


「教えてあげたいにょはあ、やまやまなんだけどにぇ~」

「まあ、君達の立場では難しいだろうね」

「そう、なんですか?」

「「本計画はクリスティアが主導となり、陽聖諸国、救世主教会、及び央華といった、現代列強のせきを持つ者の中でも、一部の人間のみが知るものです」」


 そしてそれを外部に漏らすことは、他の国との関係を冷え込ませる、どころか一発で急速沸騰からの爆散に繋がってしまう、らしい。

 国際社会で主要な位置を務める強国同士の連帯の中で、マッチ棒をこするようなことはしたくないのだと言う。


 まあ要するに、「みんなにはナイショだよー?」という約束で集まったのに、それを破ってしまったことがバレたら、教会やキリルが他の国から、「なにしてくれてんだテメエ!」と落とし前を付けさせられることになる、という話だ。


「それだと、ここでこうして話すのも、危ないんじゃあ……?」

「まあにぇ~。だからこりぇ、だいさーびす、ってやつだからあ。すごく感謝しなさい」

「ど、どうも……?でもなんで?」


 結構な「危ない橋」である気がするんだけど。


「「一つには、我々が漏魔症罹患者救済へと舵を切ったことです」」

「漏魔症……?なんでここでその話が……あっ」


 え、俺が狙われてたのって、カンナがどうとかじゃなくってそっち!?


「実は、ナイトライジャー、なんて曖昧なものより、ろーましょーとしてのきみが、ジャマに思われてたわけぇ」


 ってことは——


「『アルファ・シエラ』って、漏魔症に関係することなんですか!?」

「けぇっこう、主要な位置を、しめてるんだよ~?」


 しかも口振りからして、良さげな関わり方はしてないのだろう。

 漏魔症の可能性を認識した教会が、乗り気じゃなくなってるんだから。


「「付け加えるなら、あなたの利害とも正面から衝突するような内容です」」

「まあ、実際殺されそうになってるわけだし、そこはなんとなく分かります」

「「あなたは現在、丹本国の所属となっていると、各国諜報機関にはそういった通達が回されています。そしてこの国は、ダンジョンの発生件数が多いこともあって、世界2位の漏魔症大国です」」


 「アルファ・シエラ」を推し進めると、どの角度から見ても、丹本と大々的に敵対することになる。


「「漏魔症の能力開発、ダンジョン関連事業利用、その可能性が持ち上がったこと、そして丹本国が、“可惜夜ナイトライダー”保有国としての実効力を示したことで、状況が変わりつつあります」」


「ちょっと前までは、僕達相手にレイドすることは、さしたるリスクじゃなかったわけだ」


 今は、「あそことやり合うの、無傷じゃ無理じゃない?」、という空気が強くなってる、ってことか。


「「加えて、聖国による裏切り、という疑惑が濃厚になっています」」

「裏切り?クリスティアが?」


 裏切ったのはどっちかって言うと、勝手に先走った央華じゃなくて?


「「彼らがill(イリーガル)勢力と通じている、その公算が高くなったのです」」

「えっ!?イリーガルと!?……あ、でも確かに、あいつらクリスティアで高級車乗り回してた!」


「え?」

「「はい?」」

「あ」

「おーい、日魅在君?」

(((駆け引きの時間をテキパキ省略、ですか。見事な時短じたん術です)))

 

 やっぱ俺土下座した方がいいかな?


「まあいいや、どうせある程度は察されてたことだと思うし」

「スンマセン………」


「えっとぉ、勢力がふたちゅ、あったと思うんだけどぉ、どっちぃ?」

「“リーパーズ”って呼ばれてる方です。“靏玉エンプレス”とかがいる方。確かにあいつなら、あの“靏玉エンプレス”なら、クリスティアを丸め込んで同盟を結ぶとかやってても、おかしくないです」


 人間社会に隠れてるとは思ってたけど、デカい国とズブズブ状態にまで食い込んでたとはね。


 でも思えば、クリスティアの監視に囲まれたスタジアムの中にフツーに侵入して、“提婆キャメル”の通話直後のピンポイントタイミングで俺達の前に現れて、サラッと誰にも見られず連れ出せてたわけだけど、クリスティアと“靏玉エンプレス”がグルなら、おかしいところは無くなるわけで………


………あれ?


「でもそう言えば、“靏玉エンプレス”は………」

「「はい。永級の状態から推し量るのであれば、既に討滅済みでしょう」」

 

 メガの奴も、リーパーズがバラバラだって言ってたっけ。

 

「「モンスターと通じるという不届きな行い、見過ごすわけにはいきません。現在クリスティアは、水面下で立場を危うくしつつあるのです」」

「自分のトコについてた勢力がやられちったんだとしたらぁ、よけーに焦ってるよにぇ~」


 教会は今回の襲撃を、クリスティアの暴走かもしれないと考えていた。

 だから、次があるかもしれないと、警告に来たのだ。


「近いうちに、またなあんか、やらかすかもしれないにょ~?」

「「我々は現在、どちらの敵でも、味方でもありません。クリスティアもそれを悟ったのか、最新の動静どうせいを我々から隠匿し始めています。本日はそれを示す為に、こうしてまかした次第です」」

 

 「何かあっても、クリスティアのヤローのやらかしですよ?」、っということである。

 彼らは止めたくても止められない。

 「止めたい」と明言もしない。


「ごめんにぇ?私としては、ホントはぜぇんぶ教えたいんだけどねぇ?」

「大人ってのは、面倒なんだよ。色々と」

「そ、そうみたいですね………」


 ここでの正しい反応は何なのか分からなくなった。

 「ふざけやがって」と怒ればいいのか、「言ってくれて助かる」と歓迎すればいいのか。


 今それなりに、国際社会が安定状態っぽく見えているのは、こういう「どっちを勝たせてもいけない綱引き」みたいなのを、世界のあちこちでなんとか調整している人達が居るからだろう。


 そう思うと、全然「安定」してるように思えなくなった。


 いつ、どこで、どんな爆発が起こるか、誰にも分からない。

 

 実際にこの前、俺の敵リストの中に、隣の国が唐突に参戦して、颯爽と退散していったのだし。




「「それと、もう一つ」」

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