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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

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595.事件が終わって一安心の時間

「って感じで、やってみたら思ったより良い感じに………あれ?みんな?」


 連休明けの火曜日、22日。

 第15号棟の第一教室で、俺がどうやって敵を倒したのか、相手との会話とかははぶいてみんなに解説していたら、なんか変な空気になった。


 お、おかしいな……?

 一度、先生達とか、五十嵐さんとかにも報告して、その時も微妙な顔をされたから、分かりにくかったかと思って、説明をもっと洗練させた上で話したんだけど………?


「ご、ごめん、どのへんが分からなかった……?」


「最初から何一つイミワカンナイッス」

「僕の灰色の脳細胞が理解を拒絶します」

「っつかバカじゃね?前からだけど、バチクソのバカじゃね?」

「ひくわー……」

「パネェ……!!」

「シャン先生が頭抱えてた理由がやぁっと分かったねぃ」

「自分が教えたことが元で、こんな暴挙に出られたのだから、ああもなる」


 え゛っ、シャン先生、そんなに困ってたの……!?

 何か知らないが、とんでもなく申し訳ない事をしてしまった。


「スースームーくーん?」

「ひぃっ!?はいっ!?」

「自分の体を大切にって、私、あれだけ言ったよねえ…!?」

「そ、そうしないと、勝てなかったから…!」

 

 ミヨちゃんに凄まじい勢いで怒られてしまった。

 この前の決闘の時と、あの島での無茶行動の時と、最近は連続でやらかしている気がする。


 いや、聞いてくれ。

 俺だって本意じゃないんだ。トラブルがやたら俺のこと好きなだけなんだ。


「あ、そう言えば、医療棟に入院中、乗研先輩からも連絡来たんだよね」

「あら、あの男、なんて?」

「普通でしたよ?『くたばってねえならそれでいい』、って言ってました」


「これは相当心配してたねぃ」

「ドチャクソ焦ってたっぽくてウケる」

「潜実大での訓練中に心労からぶっ倒れてなければいいがな」


 そ、そうかなあ……?

 確かに身を案じてくれてたっぽいけど、乗研先輩はドライでクールなところあるから、そんなに分かりやすく狼狽うろたえたりはしなかったんじゃないかな?


「ってかどっちかって言うと、みんなが無事か気が気じゃなかったですよ。ダンジョンモンスターの大群の中心に、いきなり放り込まれたんですから」


「あんただけはーなっつーの」

「お前に心配されるほど落ちぶれてないぞ無法チビ!」

「余裕だったわよ」


 ほんとかー?マジで言ってるかー?


「あと、訅和さん達も」

「えっ、わたしぃ?」


 彼女と後輩君の二人は、八志教室の控えメンバーと一緒に、観戦席から他の生徒を逃がす手助けをしていたらしい。


 俺が呼び込んだような騒動だし、そういう罪も覚悟してカンナを抱え込んでるわけだが、今回のことで人死ひとじにが無かったことは、素直に喜ばしい。

 

 学園の先生方の貢献が大前提として、みんなの勇気あってこその結果。

 俺みたいな自己中と違い、立派な人達だ。


「3人とも、ありがとうね」


「っっっさーーーーーっす!あざざっした!!!」

「うるさっ!?発声時には意識して力を抜くことを、英明な僕からお勧めさせてもらうよ。それと、先輩から礼を言われるのも変でしょう。先輩も僕達と共に戦った側ですよ」


 来栖君と二瓶君は照れ臭そうにしていたが、


「ああー、うん、まあ、うむ……」


 訅和さんだけは、なんでか気まずそうに見えた。

 ただ「そう見えた」ってだけで、気のせいかもしれないけど。


「ところでニークト先輩」

「なんだ?」

「実際どうやって勝ったんです?」


 ずっと報告する側だったせいで、みんなの方がどうやってあれを切り抜けたのか、実はまだ具体的に聞けていなかったりする。

 どんな活躍があったのか、結構気になっているのに、知る機会が全然無く、軽く飢えているのだ。


「そりっ!聞いてよカミっちー……!」

「うおっ!?」


 と、急に机を叩いて身を乗り出す狩狼さん。

 どしたどした……!?


「マジバチコン激エモだったー……!」

「えっ、そんなすごいことになってたの!?」

「これで伝わるのもよく考えたらおかしいよね」

「言語とは何か考えさせられますね。この僕の広大なイマジネーションに宇宙が広がります」


 確かに流れで理解できるようになってるけど、そもそもおかしい気がしないでもない。

 が、今はそんなことどうでもいい!

 俺はまた、重大イベントを見逃したんじゃないか!?


「えっえっえっ、それって、なにっ、ゲキアツイベントが……!?」

「鬼エグ…!ろくピがニクセンに」「ちょいちょいちょおい!?ムー子!?何言う気!?」

 

 やっぱそこ二人か!


「そう言えばおニク先輩、D型の突撃から六ちゃんだけ回収して守ってましたよね?」

「それがどうしたのかしら?人形をほぼ失って、あの中で一番弱い状態だったから、優先的に安全確保しただけじゃなくて?」


「そうだ。あのまま放っておけば戦死する確率が高かった。戦術的な意味でも、(キング)が欠けるというのは重大問題だからな」

「そ、そうっ!そゆことだしっ!」

 

 くっ……!ニークト先輩にとっては本当に「そういう事」らしい!

 確かに正しい判断だけど、今話してるのはそうじゃない!


「お前達もこいつを見習って、少しは全体を見る目を養え」

「うっ…!そ、そうだしっ!」


 そしてそうやってサラッと褒めるー。

 そういうところだぞ!この鈍感系!


(((減点をおしらせいたします)))

(ナンデ!?)

(2億点くらい持ってっちゃっていいよ)

(ミヨちゃん!?)

 

「実際にこいつは俺の考えに合わせ、あの場で最適な動きを取り続けていた。最後まで全体を統御していたのはこいつで、A型とD型のコンビに一挙の打撃を入れるやり方もこいつの発想だ」

 

 「A型とD型のコンビ」!?!!!?

 サラッとヤバ過ぎる構成と戦ってない!?


「なんでみんな生きてんの!?」

「なんでだろうね……。でも確かに、六ちゃんがいなきゃ全滅してたかも」

「お蔭で全員が助かった。お前の閃きはいつもパーティーを救ってくれる」

「う……うひゃう………」


 わあお、追撃が入った。

 とうといね。

 

「ヘビ化してんじゃーん……!」

「ムー子……!黙って……っ!」


 なんか新しい単語が出て来た。

 ヘビ……?


 ………あっ、「カエル化」の逆で「惚れ直した」ってこと!?

 そこは「王子様化」じゃないんだ!?どうでもいいけど。


「まーまー、バンジージャンプなんで細かいことはオッケーッス!」

「もしかして“万事解決”?」

「それッス!」

「みんな死なっで、…っんと、よかっです……!」


 八守君と来栖君が総括そうかつした通り、「誰も死ななかった」。

 今回の件は、それで「万事解決」なのだ。


 なのだが——


「……ススム君?」

「うん?」

「大丈夫?」

「えっ、何が?」


 とと、気を抜くと顔が物を言い始めやがる。

 辛気臭しんきくさい感じは、今は出したくない。


「俺は平気だよ。みんなのおかげで」

「………そう?」


 万事解決、

 それでいい。

 そういうことにしておこう。


 モンスターを倒して、ハッピーエンド。

 世間のそういうお話を、否定する意味なんてない。

 あの戦いは、「めでたしめでたし」で終わりでいいんだ。


 でも、

 俺だけは、




 俺だけは、あいつのことを覚えていよう。




 あいつという物語が、この世に確かに存在していたことを、

 確かに一つ、命を落としたことを、

 今日、俺が殺したことを、


 ずっと、忘れないでいよう。


 みんなの談笑の輪に混じりながら、

 

 密かにそれを、胸に決めた。

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