表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

821/978

592.見せ場だ!張り切るぞ!

 その数割を珪素で置き換えられたとしても、

 日魅在進は、人間である。


 心臓によって押される血液で、肺で取り込んだ酸素を全身に伝える。

 それが彼の基本的な生命維持。


 そして魔力の生産という面においては、魔素という物質を取り込むにしても、「魔素」と呼ばれた穴の向こうでエネルギーを起こすにしても、やはり人間としての、動物としての基礎的活動を軸としている。


 呼吸、

 呼吸だ。

 それがどうしてもネック。

 足を引っ張る。


 根っからの珪素生命である“臥龍メガサウリア”と違い、溶岩と火山性ガスばかりの環境での、生命維持という経験が浅い。


 それでも、相当な魔力出力を誇る現在の彼なら、生きるだけなら可能なのだ。

 生きるだけなら。


 問題は、

 今は一瞬の隙、一指いっしの無駄も惜しまれるような、極限の打ち合いの最中、というところにある。


 酸素で回せなくなった体内システムを、魔力で間に合わせるとして、心臓を無理矢理動かし、それで起こった血液流も利用して全身に配るとしても、


 どうしても、ロスになる。


 本来それは、横隔膜と肺によって、ただ吸って吐くという習慣を続けるだけで、満たせていたエネルギー。


 全身至るところに、本来そこになかった物質を埋め込んで、拒絶反応が出ないよう精密制御し、遅れ過ぎないよう反応を加速させている現在、不随意運動という名の自動運転が止まり、やらなくて良かった筈の処理が増えるのは、敗着への行進そのもの。


 何せ、普通の身体機能全般を、1から100までマニュアルでやることになるのだ。

 補助、強化の手間とは、比べものとしての余地すらない。


 ガスが充満し、酸素が薄く、気温が高い環境。

 “爬い廃レプタイルズ・タイルズ”の中、“臥龍メガサウリア”のすぐ傍とは、日魅在進という命をいじめ抜く。


 あまつさえ、である。

 今の彼は、全霊探知の先へと至っている。

 五芒星魔法陣の助けがあろうと、維持だけでも困難。


 そして戦闘の興奮状態の中で、アドレナリンが疲労を忘れさせようと過剰分泌、体力の限界についての自覚症状すら奪ってしまう。


 死神が、音もなく忍び寄っている。


 殴っては壊れ、壊れては直し、

 その応酬の果てにあるものは、“臥龍メガサウリア”の粘り勝ち!


〈持久力で、ワタクシが負ける筈が!〉


〈ぴ、ぃぃぃいいいいいい……っ!〉


〈筈が……!これは……渦……!?〉


 “臥龍メガサウリア”が見たのは、いつか共に見た漏斗ろうと雲。


 空中に散布された塵が、相手のカクカクした歯列の内に吸い込まれていく光景!

 それは口腔内こうこうないに入る前に払われているように見え、恐らく必要な成分以外は全てされている!


〈ひょ、おおおぉぉぉぉぉぉ……っ!〉


 急激に吐かれる肺内の空気、その最後に魔力爆発!

 気体が周囲に散らされ、混ぜられ、作られた負圧に急速吸引される!

 

 溺死対策の為に習得し、“北狄ゼブラ”との戦いで披露したフィルタリング技術、

 その効率を上げ、気体や元素の選別にまで踏み込んだ、アップグレードバージョン!


 更に吸気は魔力噴射のエネルギーを受けて熱せられており、反応をより容易にしている。

 肺と血管の酸素のやり取りがより高速化されるということ!


 呼吸は、今!

 逆に、強化された!


〈だが!制限時間が数秒伸びた程度!〉


 このままでは勝てな〈グヴぁッ!?〉


 連撃。

 これまでで最速の攻撃が来た。


 ここに来て、更なる成長?

 何が起こった?


〈!!〉


 彼女は熱エネルギーとして見ているが、

 色の変化として語るなら、


 進の体表が、赤みがかっている!


〈熱……!?どこからそんなに、急に……!〉


 言ってから、それが愚問だったことに気付く。

 さっきから、そいつは熱を贈られまくっていた。


〈お前の地熱を、利用させて貰った……!〉


 他ならぬ彼女が、彼の中までマグマをドバドバ注いだのだ!


 それで体全体を熱し、体内エネルギーを上昇させ、反応を加速させた!


〈オオオオオオオオ、ガアアアアアアアアア!!〉


 一息もつかせぬ連撃!

 左右を織り交ぜた連続コンビネーションパンチ!


 彼女の攻撃も防御も、受ける事をある程度許容できるようになった彼は、相手の腕とプレートを削り、その身をっていく!


 甲皮の面積が減っていき、全身が寝ぼけた溶鉄色の垂れ流しになっていく!


〈まだあああああああ!!〉


 縫い留められていた後ろ脚の下が爆発隆起!

 熱と圧力と体液、それらを操って地面を変形させる!


 足をかせながら身を引き、会心の右拳突(けんとつ)を外回しで撃ち込む!


 だが進は先んじており、自らの肌を焼かれる超近接、いやもはや密着!

 背後を通過する腕の爆発を受けながらも崩れ切らない!


 そこを狙った左フックを、後ろに重心をズラしながら回避、と併行して放つ右フック!

 彼を殴ろうと前に出てきた頭部に命中!

 攻防一体の後退あとずさ拳骨ゲンコツ


 噴火!

 激発げきはつ

 反応装甲が間に合っていない前面をぐちゃぐちゃにとろかし砕く!

 

 尻尾の突き刺し!

 左横に半歩避けながら腕を回して掴み、敵を引っ張り寄せようとする!

 

 だがスカートプレートがそれに巻き付けられており、直前で開いてから彼にがっちり食い込み拘束!

 進は内から両腕高圧魔力噴射と共に押し曲げて、開く!

 

 尻尾二撃目!今度は腹部が開いている!

 放射状に配置された噴火加速で推進したそれは進の尻尾ケーブルが絡み合うことで止められそうになる!


 高圧の火山噴出!

 赤き溶断ようだん

 

 “臥龍メガサウリア”の尻尾は先端を相手のそれに絡み付け、突撃と噴火で珪素の甲殻もカーボン繊維もめ壊してじり斬る!


 ケーブルの残片ざんへんが飛び散り、その腹から背にあかぶちの黒が貫通!

 尻尾突き三段目!

 

 フットワークを、今度は一方的に喪失!

 著しく巨大な右腕が引かれ、守りの上から砕き散らすべく解き放たれる!


 その時彼らの間に、一つの物体が、尻尾の破片が落ちてきた。

 砕けて上に飛んだ後、加工されて正三角形になったそれが。


 千切られる直前、既に内部へ魔力は通してある。

 その真ん中を魔力弾が抜け、彼女の胸を叩く。


 爆轟波解放、

 HEAT弾型だ。


 進は腹の傷を拡張されるに構わずそのまま間合いへ。

 右手ドリルで穿突せんとつ

 ひらりと回り落ちていた原始魔法陣をくぐらせて、さきほどの痕に二度目の強掘きょうくつ

 

〈“爆轟真徹(BEATスマッシュ)”……!〉


 魔力爆破と高圧噴射で火山からの衝撃の全てを相手側に返し、


 ガス発泡による爆発を爆風で封じ込め、


 腹部付近でこもらせて、

 

 回転刃付きの右腕を真一文字に払った。

 

 そこから上が、


 軽く離れて宙へと跳んだ。




ぴ、ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいぃぃぃぃぃ………——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ