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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

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589.一緒に踊ってくれるか?

 凄い勢いで、窓の外が流れていく。

 席に座りながら、それをヌボー、と目に映す。


 電車、いや、座席の向きと、車両の内装からして、新幹線だ。

 どこ行きだったっけ?

 車内の表示を確認しようと振り返った。


 通路を挟んで向こう、反対側の窓際に、女が座っていた。

 駅弁を前に、面頬で半分隠れていても分かるほど、緊張した面持おももちをぶら下げている。


 どうやら、糸を引っ張って暖まるギミックに、興味津々らしい。

 分かる。

 俺もあれ、家族旅行で初めてやった時はびっくりした。


 箸を左右に豪快に割ってから、見てて不安になる不器用さで、肉を一つ挟んで持ち上げる。

 いつかのカフェと同じように、マスク部分が下に開く。

 便利なもんだと、しげしげ眺める。


 一口入れて、縦瞳孔の目をみはり、次に米に、コロッケに、ポテトサラダに、と、三角食べの形になってるのは、行儀が良いからってよりは、あっちこっちに目移りした結果、奇跡的にそうなっただけだろう。


 俺はそれを、窓辺に肘をついて、飽きもせず見続ける。

 弁当はあと2つあり、それを開くたびに目の色が変わり、それを見てると自然と笑みがこぼれる。


 ずっと、そのままが良いと思った。

 このまま弁当の中身が、いつまでも無くならなければいい、って。


 だけど、おかずもご飯も、いつかは尽きる。

 新幹線は、そのうち目的地に着く。

 俺も彼女も、その席にずっと座ってはいられない。


 でも、行き先は一緒だ。

 だから安心してたんだ。

 こいつはずっと、隣に居るって。


 彼女は駅弁を平らげた。

 満足そうに腹を何度か叩き、そのまま秒でウトウトし始めた。


 俺は、

 俺はこいつと、一緒に居たかったのか?

 同じ場所を目指して、ののしり合って、殴り合って——

 

——殴り合う?


 気付いたら、彼女がこちらを向いていた。

 

「あれは、ワタクシにとって、最良の日」


 “臥龍メガサウリア”。

 違う。その物語の名前は、


「“爬い廃レプタイルズ・タイルズ”……」

「あなたは、違いましたの?」


 勝手な事を言うなよ。

 あの時俺は、転げ落ちるみたいに、散々な目に遭ってたんだ。

 って言うか、物理的に落ちたし。


 でも、あれがきっかけだった。

 あの日があったから、今の俺がある。


 多くの幸運に恵まれた。

 沢山の奇跡があった。

 同じ事をやれと言っても、出来ない自信がある。


 あの日のあれは、“質”の話をするなら、

 撮れ高の話を、

 どれだけ見られたか、楽しませたかを語るなら——




「最高だったな」

「そうでしょう?」




 過ぎたから言える話だけど、

 二度と御免だけど、

 それでも言う。


 あれは、痛快だった。


「無名配信者、それも漏魔症を見に、10万人だからな」

「それだけの衆目の前で、意思が朧気おぼろげとは言え、してやられましたの」

「馬鹿正直に撃ってくれるんだもんな、真上に」

「次は負けませんの。と言うか、ワタクシはそもそも負けておりませんの」


 あいつが来たから、色々と引っ繰り返されたんだっけな。


「あの時と、同じか」

「あの時の、続きですの」


 そうか、俺達は、

 あの時の続きを、しようとしているのか。


「10万人も、100万人も、関係ないか」

「ええ。それら全てがあろうとなかろうと、もっと重要な一事がありますの」


 あいつが、何やら気まぐれを起こして、

 最弱を最強にするって、育成なんて面倒事を始めた。


 そんな事をする理由は、一つしかない。

 「面白かった」からだ。

 

「そうだ」


 俺達が、面白がらせたんだ。


「そうだった」


 ある意味で、始まった日。

 俺と、こいつと、その小突こづき合い、しょぱなも初っ端。

 

 あいつはそこに、何か可能性を見た。

 面白さを感じた。

 そのショーに、続いて欲しいと思ったのだ。


 たぶんダンジョンの歴史上、一番のイレギュラーなあいつを、

 俺達で、心躍らせた。


 あいつがなんで、俺とこいつを戦わせたがったのか、

 そう言われた時、こいつが何を張り切っていたのか、

 やっと分かった。


 あの日の完結編、因縁の総決算になるから。


 あいつが育てた娯楽が、どれだけのものになったか、

 その山場の一つになるからだ。

 

 そして、

 俺も、

 こいつも、


 そうだ、

 「同じ場所を目指している」。


 同じだったんだ。

 やっと分かった。


「ぐ……ッ!」


 立ち上がる。

 

「ふぅー……!」

 

 そいつを見る。

 正面から、真っ直ぐ。


〈!………〉


 時が止まった。

 須臾しゅゆの間、呼吸すら挟まず、二つの命が向かい合った。


「俺も、勝手なこと言うけどさ」


 謝罪の意も籠めて、話す。


「俺はきっと、お前に親近感を抱いてたんだ」


 待たせて悪かった。

 忘れてすまなかった。

 答えが出た、と。


「お前は同じところを目指す同志で、一緒に歩いてるのが、実は心地よかった」


 互いの間抜けさを知って、一つになって強敵に立ち向かって、同じ相手に狂わされて、振り回されて、


 何より、あの日の“伝説”の、共演者だったから。


「だからずっと歩きっぱなしで、腐れ縁のままでいたいって、そう思ってたんだ」


 カンナ預かりとなった、あの戦い。

 それがいつまでも完結しない、そんな理想の中で、ウトウト眠りこけてた。


〈チョロい男ですのね〉


 嘆息混じりの返事。


〈ホント、バカみたい〉


 その頭部に、嬉しげな表情を見てしまうのは、都合の良い頭のせいか。


「返す言葉もない。本当に、その通り」


 でも、決心がついた。


「俺は、お前と戦うよ」


 あの戦いが終わって、こいつと一緒にヒーコラ歩いてる日常を、絆を手放すことになっても、

 一人になっても、それでも俺は、やりたいことがある。

 欲しいものがある。


 その為に、


「俺はこれから、お前を殺すよ」


 ここで、決着にする。

 それが一番「面白くなる」なら、

 俺はそれを何より求める。


 俺の戦いは、最後まで俺の為だけのもの。

 その俺が言っている。


 こいつと、これを見ている彼女。

 どちらにとっても、最良でありたい。

 その欲望の為に、俺は戦う。


「なあ、“爬い廃レプタイルズ・タイルズ”」


 合掌し、反攻の準備を始める。

 

「最高の、」


 俺も、そいつも、一瞬だけ“彼女”を見た。


「最高の一騎討ちにしよう」


〈今更ですの〉


 相手も、半身で構えた。


(((あれ、ようやっと本編開始ですか)))


 カンナが伸びをして、それから少し身を乗り出す。


「ああ。悪い、待たせた」

〈まったく。相方あいかたが情けないと苦労しますの〉

「ごめんって」


 「それでは」、

 火山の貴婦人は、こほんと咳払いを一つ。


〈カミザ・ススムゥッ!!〉


 朗々と口上を読み上げる。


〈拳を焼き飛ばし、爆発を纏い、細胞をめっし尽くすこの私をッ!

 打てば打つだけ響いて返す、この“臥龍メガサウリア”をッ!


 お前は超えれるかッ!

 お前にてるのかッ!〉


 さてどうだか。

 もう賭けしか残ってない。

 思いつくのは、最後のわる足搔あがきくらい。


 それでどうなるか、

 そんなことできるか、


 分からない。

 分からないから、こう言う。


「やって見せる!」


〈それでこそ、男の子ですの!〉


 あの日と同じだ。

 勝って、細い糸を掴み取る。

 それしか俺には残されていない

 

 なら、カッコ良く飛び掛かってやる。

 それで健闘(むな)しく死すとも、

 この場の全員、最後まで笑顔だ!


 俺は意気揚々と、


 体内魔法陣を解除した!

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