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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

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581.負けるな!生き残れ!

 ただ立っているだけで、息も絶え絶えになりながら、ニークトは震える腕を苦心して押さえつけ、


「あ、ア……」


 その秘術を今まさに——


辺獄アマゾニン——」


 野山を駆け巡る風のように爽やかな一陣が、

 その胸をよぎって呼吸を吹き返させる。


——ぼっちゃん!


 聞こえる筈のない声を、彼の内側からどよもすベージュ色。

 

 ニークトは掌印を解いた。


——何を弱気になっている!


 己を叱咤しったし、脚を殴り叩いて震えを無理矢理止める。

 ここで彼が全てを分かった気になって、何にも挑まず勝手に自滅するのは、彼の戦友を侮辱する行為だ。

 

 確証もなく、彼らの力を合わせた程度では、あれに勝てないと決めつけるやり方だ!


——何をしている!ニークト=悟迅・ルカイオス!

——お前のトラウマに、奴らの誇りを巻き込むんじゃあないっ!

 

 彼らは戦うと言っている!

 ならば一か八かの賭けは、最後の最期にやればいい!


 今、彼と同じ場所に立っている者達は、

 守るべき従者であると同時に、

 肩を並べる戦士達なのだ!


「ウォオオオオオオオオオオオオォォォォンンンン!!」


 弱い負け犬らしく、見事な遠吠えを一つくれてやる。

 サイズの差をものともせず、岩で出来た亀っこ一匹、睨みつけてやる。


 散弾砲を装填していたそいつは、射貫いぬかれたように動きを止める。

 おそれたのか、単なる警戒か、もっと別の気紛れかは分からない。


 だが時間は作れた。

 その時間に、撃ち込まれる一発の魔弾!


「来たか!」


 狩狼の眷属!

 グレイハウンドとブラッドハウンドの二種を合成したそれが、彼の頭上を通って落としてたそれをノールックでキャッチ!


『サトジ!無事!?』

「当り前だ!」


 六本木のミーアキャット人形とライオン人形が伝える声に、一時的恐慌をおくびにも出さず自信満々で返答!

 

 それが良かったのか、彼女の側もまた少し落ち着いたようで、声の振幅を幾らか抑制しながら状況を共有する。


『こっちはヨミチとムー子がバチコリ!トロセンとカミザは捜索中!』

「上出来だ。D型……目の前のあの亀の置物だが、奴の砲撃が最大の脅威と見ていい。それに注意を払いつつ、可及的速やかに合流するぞ」


 ミーアキャットが生成するベージュの壁を斜めに構え、狼の皮鎧を再度装着し、走り出す準備姿勢を取る。


『けど、八志教室あっち側がどんな感じか分からない(ワカメ)なのがゲキマズ』

「問題ない。どうせじきに——」


 言っている間に受信した。

 世界大会で辺泥と決めた通信用帯域の超音波。


 向こうのメンバーは6人全員集合済み。

 A型が1体とその他多数。


「よし、大体の位置も分かった!シュロウ!トロワとカミザは!」

『僕、仕事早くなーい…?』

『私よ。あの子は中心点に見える塔みたいな構造物の中に連れて行かれたわ。しばらく会えないわね、あれは』


 既にトロワを見つけ、人形を一つ与えた後だったらしい。

 ただ進が完全にロストという悪いニュース付き。


「この際だ!奴ならなんとかする前提で話を進めるぞ!トロワ!プリムの誘導に従って退がれ!オレサマからも出来るだけ近付く!死ぬなよ!」

『誰に向かって物を言ってるの?』

『いけっしょ!トロセンにはパンダとワンコ渡してっし!』


「よし、それでいい!プリム達はそこから時計方向へ大回りに移動しろ!ヨミチ!最悪“あれ”を使ってでも二人を守れ!」

『了解!』


 D型が動いた。

 ニークトは先程からの攻撃で生まれた破壊(あと)によって、窪地のような地形が出来ているのを利用し、そこに一時避難!


 轟音と豪爆ごうばくが通過したのを見計らって、四つ足で走り出す!


「まず俺達5人を掻き集めつつ八志教室とランデブーする!プリム!俺達全員の位置はお前の能力が把握している!オペレーターを任せるぞ!」

『りょ!これでもK(キング)だし!やってやろうじゃん!』


 D型の口から巨砲!

 予備動作を見たニークトは大岩の影に伏せ隠れながら盾を展開!


 背中を抉られるも軽傷!

 まだ走れるならそれでヨシ!

 その間にライオン人形が傷を癒してくれている!


 続く散弾のあめあられの中、盾を張り続けながら疾走!


 行く手にG型らしき巨大ヤモリが十数体!

 突起だらけの胴をりつけ、サーベルタイガーのような牙を突き立て、敵の肉を削ぎ落とそうと狙う!


 シミターを回し振り連閃れんせん

 左手の小盾バックラーで1匹の攻撃を受け、外周に生やした狼の爪で切り裂く!


〈ギャッ、ギャーッ!〉


 上空からムササビのような膜を使って飛び掛かるF(フェルツ)型らしき影!

 跳ね上げられた後ろ足でその頭をガッシリと掴み、勢いを利用して前へと引っ張り落とし、そのまま諸共ゴロゴロと車輪のように回り進む!


 ストライク!

 ピン代わりのG型群が次々撥ね飛ぶ!


 足が曲がっていないワニのようなモンスターが吐く泥によってその速度が鈍ると見るや、F型を叩きつける反動で前方跳躍!

 その先にいたトーテムポールじみた形の1匹を潰し殺す!


『サトジ!そこから2時方向!』


 指定された方角から種々の首代くびしろが乱れ飛ぶ!

 

「硬いわねえ!強いのじゃあなくただ硬くて面倒なだけ!最悪よ!」


 トロワだ!

 この状況でも一向に口が減る素振りを見せない!


 その二人に並んで突進してくるC型3体!

 溶鉄色を発しいぼと溶岩を散布しながら本体の質量までぶつけようとしている!


 トロワの剣が蛇腹状に分解され、その先端から幾つかはニークトの爪や牙に宿る!


 竜胆色の残像が大気いっぱいに張り巡らされる!


 規則性のない格子模様のようなそれが敷き詰められた攻撃の全てを斬断ざんだん


 C型はマグマを噴きながら爆発四散!


 ミーアキャットの盾で爆風を受けてから外方向へと駆ける二人!


『だいたい50m!そのまま直進でよろ!』


 そこに撃たれるマグマ線流!


 トーテムポール型が一対の腕を合わせ、それで出来た筒から噴射している!


 あれはM(メイジ)型か!

 

 直撃よりも、囲うようにして動きを制限する意図を持つような弾道が、岩盤を焼き切ることで彫りを入れる!


 そこに現れる、全身黒色で滑らかなうろこはだの鎧、二手にしゅ二足にそくにトカゲの頭を持つ、シンプルながら隙の無い立ち姿のモンスター!


 その振舞いから分かる。

 

 W(ワジール)型!


 その尾は蛇の骨のような刃を持ち、さながらマグマをしたたらせるとげむち


 更に左手には巨大な籠手ガントレット


〈コォッ!コォッコォッ!〉

 

 奇妙な鳴き声で群れを統御し、


 まだ数が少ない方から、


 ニークトとトロワの二人からりに行く!

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