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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二十一章:ゴングを鳴らせ!ガチンコバトルだ!

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568.最新魔学論考 part2

「しかし、魔素には濃薄のうはくという概念があります」

「そそそ、そうなのです!ダンジョンから漏れるその振る舞いは、物質的なのです!」


 付き人コンビの疑問など、白取は当然想定している。

 いいやむしろ、そこに説明がつけられるからこそ、彼はその説により可能性を見たのだ。


「魔素が濃いとは、それだけ穴が大きい、という事でしかないのだと、私はそう考えます」

「穴が……、って言うと、えー……、『ダンジョンが魔素』って言ってましたよね……?」

 

 進が言う通り、白取はあれ全体が、極大の通り道だと考えている。


「ダンジョンがそうだとして、じゃあダンジョン外で感じる微量の魔素は………、あ、そっか」


 先に何故、「前提」の話がされたのか。

 彼はそれを理解する。


「ダンジョンと魔学回路が同じ……。つまり、『大気中にある魔素』って言うのは、俺達の体内の魔学回路の話だった、ってことですか……?」

「ええ。私はそう見ています」

 

 魔学回路は、魔素を加工して魔力にしているのではない。

 魔力は、魔学回路という名の魔素を通ってやって来るのだ。


「ダンジョンの中では魔力の補充が速くなり、魔法が強力になる。それは……、ダンジョンという広い通り道の中であるが故に、向こう側の現象を容易に持ち込めるから、ということでしょうか」


「ってもよー、魔素ってのは見えねーだろ?魔学回路だってそーだ。ダンジョンはバリバリ見えてんぜ?」


「我々が見ているダンジョンは、魔素を通ってこちら側に引き込まれ、配置された物質やエネルギーです。魔素そのものを見ているわけではありません。プラズマを見ることは出来ずとも、それが基底状態に戻ろうとする時に発する光なら、我々は見ることができる。ええ、それと同じ話でしょう」


 だから、魔学回路そのものであるモンスターコアを使い、そこから出るエネルギーを大規模設備で増幅、制御すれば、模擬戦で使う疑似ダンジョンを生成できる。


「謂わばダンジョン内は、常に魔法が発動されてる状態、ってことだよね?」

「そしてその核は、人の意思のような、指向性、秩序を持ったエネルギー、その大規模バージョン、のようなものの筈です」


 集合的無意識のような、人間の意思を束ねたものか?

 それとも、自然現象が偶々(たまたま)整列したものか?

 その辺りについては、今は何とも言えない。


「私が考える、ダンジョン発生から魔学回路獲得までのメカニズムはこうです。


 まず、何か大きく、そして秩序立ったエネルギーが、現象界で生じる。


 それはメタ次元において、甚だしく強力な、範囲は広がらずに出力だけ一点に集中して重なるような、そういった高密度な作用力となる。


 そのエネルギーは、狭い範囲に強く働く為に、次元の壁すら突破し、下位次元も幾つか突き破り、現象界まで貫通させる。これが魔素であり、ダンジョンです。


 現象界には爆発的なエネルギー生成が起こり、エントロピーのルール通りに、それは拡散していく。


 けれどそれらの一部は、周囲の秩序立ったエネルギー、つまり人間の意思に反応、作用し、恐らく人間の脳科学的、生理的機能によって、精神感応のようなものを引き起こし、再び一点集中型エネルギーに並べ直され、メタ次元から現象界までを二次貫通。


 この時、恐らく付近の次元の壁は、大穴の影響で脆くなっており、より小さなエネルギーでもつらぬけるようになっていると推定されます。下が空洞になっている床の一点が破壊されれば、力の釣り合いが乱れ、その周囲がボロボロと崩れていくのと同じように。


 それは“人間”という秩序に伴って穿うがたれた穴であり、故に人間と共に存在するようになる。これが魔学回路です。


 大穴、ダンジョンは閉窟時までずっと残るので、周囲の壁も脆いまま。それがある限り、秩序立ったエネルギーが近くで発生すると、小規模な穴がそこに開くようになります」


 ダンジョン生成が広範囲に漏魔症や潜行者を生み、平時のダンジョンでも魔学回路獲得の場として利用可能。

 魔法、魔学回路は、人間の中にある「物語」にしか宿らない。


 その一連が、解説されてしまった。


「この理論で言えば、重度漏魔症における異形化も、腑に落としやすいでしょう」


「最初に開いた穴、ダンジョンの一部って扱いなんだね」

「秩序をうしのうて拡散しきる前のエネルギーを浴びてしもうて、その体ん中をダンジョンが貫通しとるわけやな」

「それで、その根源になってる秩序に上書きされて、人間の意思っていう小さな秩序はかき消されて………」

 

 ダンジョンが持ち込む魔法現象の端っことして、作り替えられてしまう。


「それが当たってるならよー、俺達はちゃんと思い込めさえすれば、どんな事でも出来んじゃねーか?」


 吾妻がむしゃぶりつくように指摘する。


「道は開いてんだ。向こーにはこっち側にあるモンが、あれもこれもデッカくなって転がってるわけだろー?そっから好きなよーに引き出しちまえばいーのさ」


「残念ながら、と言うべきでしょうか。私達は既にそれを、ある程度実現しています」


 メタ次元から、好きなエネルギーや物質を持ってくる技術。


「乃ち、自らの持つ物語という、極めて個人的、内面的事象を由来として、特定の秩序に従わされたエネルギーを持ち込むこと。これが既に、『自由意思の下に向こう側から引き出している』、という状態であると言えるのです」


 そしてそれは、“物語”という高度な整序せいじょを持って、ようやく可能となったこと。

 単なる思いつき程度の強さでは、具体的な形にならず、ただの流れや爆発に——


「それが、魔力なんですか?」


 真っ先に進が気付く。


「物語を伴わない、その場の意思だけのエネルギー、それが……」

「恐らくは」


「で、ですが、私達は毎回、物語を思い浮かべるわけではないのです…!」


 魔法発動のたびに、意思を整理しているとは言い難い。


「……詠唱、やろうか……?」


「はい。それもあります。ですが、」


 もっと前、


 先に押さえておくべきキーワード。


「“形”。それこそが、ただの魔力ヴォランターテを、魔法マギアにするのです」

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