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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十九章:人も神も怪物も龍も、みんな等しく明日に狂う

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522.異形を討伐せよ、偉業に到達せよ part2

『ま、待つのです……』


 その制止は、吾妻と対する側からではない。

 彼女の背中側、丹本勢力から為された。


『あなたの論は、戦術的合理性などではないのです』

「なーに言ってんだ?聞ーてた通り、これが今の最善だろーがよくノ一(クノイチ)ちゃーん?」

『一見理論立てていますが、その実あなたの目的は、シンプル一つなのです……!』


 乃ち、その手でill(イリーガル)の討伐をする。


『今奥に向かって、そこで敵性モンスターだけがダンジョンから戻った場合、私達の取るべき行動は、言うまでもなく全力離脱なのです…!ですが………』

「成程、こいつはそれじゃあ困るわけだ」

「おーいなんだよリュージまでノリわりーこと言ってよー」


 乗研が知る吾妻漆。

 その本筋根幹が変わっていないとするなら、


「『デケエ事』か。よぉく分かったぜ?魂胆が」


 世界最強と戦える機会、

 そいつらを国の“目”が見ている前で倒せるチャンス、

 彼女がそれを、タダで逃すわけがなかった。


「この島での戦闘が終わる前に、とっとと手近なイリーガルと一戦交えて、それで派手にぶっ飛ばせれば、テメエにとってはミッションコンプリートか。いや、そのまま進軍して、より沢山殺せばよりベター、か?どこまで欲張るつもりでいやがる?」


「リュージ、おいリュージー?何言ってんだよ、なぁに言っちゃってんだよー?留年のし過ぎで脳味噌ふやけちまったかー?ぬか味噌みそになって腐っちまったかー?」


 ズカズカと歩いて近付いた吾妻は、乗研の両肩を叩くように手を乗せて言う。


「デケー事やるにゃ、功績が、信用させる何かが必要だろ?デケー案件を回されるに足るヤツだって、証拠が要る。そーだろ?俺達が『ドデカいプラス』だって、『当たり前』じゃねー連中だって、そう見せなきゃ、偉くはなれねー。どんだけ俺がシゴデキでも、“上”に立つ事を認められねー。そーだったよな?」

「………!」


 予想、していなかった。

 予想以上、予想外に、

 彼女は彼の予想通りの言葉を吐いた。


 彼女はまるで、変わっていなかった。


「『コーケン』だよ。43回折った紙で、ケツ拭いてポイ捨てしちまっても許されるよーな、デッケー幸福を作んだよ。そーじゃなきゃ、マジにスゲー事をやったとは言えねー。その為に、ジョーシキから外れた、ヤベー功績がなきゃいけねーんだろーが」


 「だろ?リュージ」、

 肩と、それから胸板をノックするように叩く。


 そうだ。

 彼が、そう言ったのだ。

 そんなことを。


「まだ、そんなことを…!」


「まだってななんだよ?俺は最初っからずっと、その話しかしてねーよ。だからコーボクとかゆーショーに合わねー事もやってんだ。マジでドカンと、スゲーデケー事やったって、その満足と納得の為に、俺は進んでるんだぜ?」


「あんなのは、ガキの遊びだろうが……!」


「だからそのガキの屁理屈が、俺の人生で俺を一番納得させたんだって…!『納得』だ、リュージ…!その言葉の重さが分かっか?俺はずっと、納得行かなかった…!俺は他より何でも出来んのに、なんでこんなにしょーもねーのかって…!」

 

 けれども彼女は、「納得」した。

 してしまった。


「まだ俺は、ホントの『デケー事』、やってなかったんだ。ホントのホントに、ムズくて偉い事、手を出してなかったんだよ、リュージ…!お前がそー教えた…!」


『任務より功名心を優先する、危険な思想傾向なのです…!その私的主張をこの場で強行した場合、い、五十嵐特別防衛局長に、ご報告させて頂くのです…!』


「好きにすりゃーいーじゃねーか。だがよ、俺はそんなもんで止まらねーぜ?」


 彼女は遅延領域に背を向け、明滅する白金色へと歩き始める事で、反論に一切取り合わない態度を固持。


「五十嵐のオッサンはたぶんよー、俺の事気に入ってっからあんま言わねー。信頼関係とか、リョーコーな関係ってヤツ」


 「つっても、他の連中の手前ってのもあるだろーからよ」、

 そう言って身を反らしながら振り返り、


土産話みやげばなしくらいは、持って帰んねーとな?」


 例えば、

 永級ダンジョンの化身に人類が勝利する、

 その歴史的転換点を作った、であるとか。


「結果出しゃーいーんだよ。それに、他にもっとープランあるかよ?俺がどんなバカだろーと、作戦が合理的なら、テメーら文句言えねーだろ」

『………』


 黒衣は黙る。

 恐らくその口元は、強くきしんでいることだろう。


「やるぞ、リュージ。

 悪徳企業様なんか目じゃねー、倒すべき巨悪ってヤツだ。

 明胤生徒会総長なんて比べモンになんねー、最高の称号ってヤツだ」


 彼女に迷いはない。


 今の此処ここには、そういう職務だと割り切り、覚悟が済んでいる者と、


 乗研竜二その人だけ。


 「巻き込んでも良いやつ」しか、立っていないのだから。

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