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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十九章:人も神も怪物も龍も、みんな等しく明日に狂う

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511.フェーズ1

 さらさらと流れる無風の麦畑。

 羽音に覆われ根から齧られ、

 不毛に均されまた生えて。


 実りと荒野を周期的に繰り返すのを、早回しで流すような、

 匂いも味もある白昼夢。


 その一画を、全身無遠慮に乗せて踏み潰す、飢餓に苦しむ食い意地の化身。

 それはご馳走を探している。

 この階層から出ていない筈の、食べにくいフルコースを血眼になって。


 高く持ち上がる六つの複眼。

 その2列3対が黄色を発し、隅から隅まで見て回る。


 何も無い空間に揺らぎ。

 クレーンの如き関節を持った前肢で、自らが纏った粒を一掴みし、カタパルト機構そのままな動きで放る。

 いじめられっ子に土をぶつけるみたいに、大雑把に投げつけた。

 

 魔法で作られた、水のスクリーン。

 だがその後ろには何もいない。

 

 また外れである。

 先程から何度も、あれを見つけ、突き破り、落胆させられている。

 切なげに鳴る胃腸にも、いい加減に怒気が混じり始めており、


 それを気遣ったのか、腹を押す者が現れた。


〈………〉


 宇宙の塵が、川に落下したのに似ている。

 カーボンブラックが貪食流に穴を開き、音はその後からついて来た。


 巨体を僅かに凹ませた弾頭は、衝突時の圧力によって周囲に棘や破片を放散。

 それが小虫達を巻き込んで引き裂き、減速し勢いを失った所で炎へと変化、燃え広がる事で群体装甲の破損を広げる。


〈いぃたぁぞぉおおお〉


 魔力の気配がおこった場所は見逃されず、バッタ玉が投げつけられる。

 

 魔法製光学迷彩スクリーンの後ろに、触れる物を欠損させるフィールドが張られ、その中に並ぶ一人、魔具と半ば融合する機械兵が砲手である。

 

 背中から伸びる簡易アーム、その左側に搭載されている武装。

 分解された状態で全身のあちこちに取り付けて運び、戦場で組み上げて使う事のできる直方体型の戦車砲。


 出番は武装使用制限解除時のみ、つまり魔法使用に何の縛りもない時だけしか現れない。

 故に籠める砲弾や継ぎ目のパーツは魔法生成が前提、排莢機構すら存在しない専用武装仕様。

 

 そこからまたクラスター砲弾を一発放ち、研究者が持ち込んだ空中投影型デバイスに表示された魔法陣を通り、弾頭が加速して威力を増す。

 反動で砲口が持ち上がり、背中が仰け反るのをジェットノズル二門を噴かせる事で耐える。


 先程とほぼ近い場所に着弾。

 巨虫の胸部分から現れる、バッタの頭部二つ。

 その唇が開き、中から尖った頭の二匹が発射される。


 C型。

 その質量が防御壁ごと人間共を破壊すると思われたが、着弾前に飴色の銃砲撃を浴びせ掛けられ、頭の半分を焼け落としながら左右に逸らされ、二つの大きな土砂(ふん)しょうで敵陣を飾り立てる。


 再三のカーボンブラック砲撃。

 砲頭は発射直後、触れた肉を抉るようなねつえんを節々から吐き、内部の冷却に努める。

 熱が上がり過ぎれば、変形や故障の原因となる。その為あまり無茶な連射は出来ない。


 一方、バッタ特攻弾の方は、もっと便利に使い潰せる。

 胸部から生える頭から、それぞれ2体ずつ計4体の中型バッタが射出。

 これも飴色が迎撃。


 だが焼き裂かれたそれらの腹から大量の小型バッタが溢れ出る。

 キャリアー係のV型だ。

 次々と撃ち込まれるそれらから飛び出る、小さな食いしん坊共を飴色で撃ち落とす女。

 外から回り込んでそれに近付くのは、ジェットパックのようにF型を背負い、銃のようにM型を抱える、直立バッタの姿をしたG型達。


 銃撃戦。

 詰め込まれた所から、ローカル強化された脚力で飛び出る小型バッタ共を、躱し、或いは飴色で防ぎながら、両耳を曲げてサブマシンガンを、両足の先からライフルを連射し、両腕で対物機関銃と迫撃砲を酷使して、ブレイクダンスのように踊り転がるチャンピオン。


「HAH!HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!」


 彼女は笑っていた。

 網膜を埋め尽くす捕食者と消化液の中にあって、

 時に飴色で全身を覆い、翼を作り、

 迫り来る砲弾達や銃兵達を纏めて殺処分しながら、


「BLAM!BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!」


 心底楽しそうに踊り明かしていた。


〈いぃけぇえええええ〉


 巨虫がその体高を落とし、


 跳んだ。


 人間達に影が落とされる。


〈警告〉

〈走りますぞ!〉


 黒ききょかいの背に、2対の板が開く。

 翅だ。

 硬い前翅まえばねと、透ける後ろばね


 それを使って自由落下より遥かに速く着地。

 半径2~300mにまで影響を及ぼす大陥没。

 土色の水面に雫が落ちて波紋が広がったかに見える、破滅的大地破壊風景。


 すぐさま這い広がる黒。

 それに追われるは、アイボリーの象。

 猛スピードで走る、学者の疾駆形態。


 その背を両脚で挟み、尻尾ユニットを手綱のように口に引っ掛けた機兵が、後ろ見ながらクラスター砲撃を継続。

 同時に中型腕が持つ砲型魔具二門や、その他の腕から放たれる焼き払い攻撃によって、近付くバッタ達を弾き殺していく。


 飴色の翼が彼らに続き、黒い瘴気の真っ只中で、狂笑と共に暴れ回る。

 まるでヘドロに沈んだ海から、焼けたトビウオが跳ねているようだった。


 巨虫は翅の展開を継続、それで空気を押し、逆関節の後ろ肢で地面を蹴り走り、背からジェットを噴射して駆ける巨大ロボットのように、猛スピードで追走。


 胸部からの攻撃は、弾速を上げる為に空気抵抗の少ないG型を使って、依然継続。

 3、4発に1発は命中コースに入るが、大型腕の表面にカーボンブラックの金属で作られた、即席傾斜装甲によって衝撃を上手く受け流され、正面から芯を捉えた当たり方が出来ずに軌道を逸らしてしまう。


 視線の先には象牙とカーボンブラック。

 肢のすぐ近くに舞い踊る飴色。


 それらに飛び付き噛みしだき、貪り食ってやろうと涎を垂らし、それを高速散弾として吐きかける。

 機兵が球のように凝縮した炎を砲型魔具から放ち、その熱量で蒸発させて難を逃れるも、その時弾けた一部が霧雨のように広がり、カーボンブラックの表面を劣化させる。

 けれどさしたる問題ではない。新陳代謝を起こし新たな炎で魔法生成装甲を張り替える。


 地獄に繋がる穴から鬼が呼ぶようなひとひびき。

 それは巨虫の辛抱が限界近い事を示しており、


「っしゃあ、上出来や」


 全神経が、下側に集中している事を示していた。

 

「汝ら褒めて遣わすわ」


 灰色の雲の上、


 空挺降下部隊が腕を鳴らし、


 得物を抜いた。

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