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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十九章:人も神も怪物も龍も、みんな等しく明日に狂う

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501.その名に懸けて part1

 最初の一体の時点では、特段の困難とも言えなかった。


 確かに犠牲は出た。

 出たが、不意討ちの初撃だけだ。

 優秀なB(ビショップ)陣が即応し、重要な臓器が滅多めったきにされた、ビリビリに破裂させられた、といった手遅れな数名を除き、前衛の再編成に1分も掛からなかった。


 メナロがメインで戦い、盾持ちと共に囲い込んで殺す。

 それで処理出来た。


 だが、最低ランク9の集団を、意識外からとは言え一撃の下で複数同時に撃破できる、それだけの力を誇ったモンスターが、


 9層の後半でW(ワジール)型を見るような頻度で現れてしまうと、

 英国紳士が紅茶を投げ捨て逃げ出す程の、最悪局面としか評しようがなかった。

 自惚れの強いメナロであっても、この戦場で自分達が、「弱い側」だと理解せざるを得なかった。


 “醉象ローカスト”のローカルは、「十人寄らばけんも形骸」。

 一定範囲に仲間の数が多いほど、それぞれの間隔が狭いほど、強さを増していくというもの。


 その法則による強化は、何故かバッタ共の方により大きく働いているように見えた。

 ill(イリーガル)ともなれば、ローカルの適用範囲をそこまで自由に出来るのか、はたまた“醉象ローカスト”が異形の中でも規格外なのか。


 どちらにせよ、推定W型が複数同時に現れると、それだけで壊滅が匂い立つ。

 更に一部のバッタには、“鳳凰トリッパー”の「味方が減るほど強くなる」ローカルまでもが付与されている。

 これは死んだ者が強ければ強い程、残された者をより高みに押し上げる。


 命を使い捨てられるモンスターと、仲間を一人でも多く残したい人間。

 この対比は、ダンジョン内の人間が常に抱える劣等性として、潜行者なら耳に胼胝タコが出来るほど聞かされる話である。


 メナロの舌はその苦味を、初めて口にしたような新鮮さで思い出した。


 盾持ちのR(ルーク)達なら、W型を一度は止める事が出来る。


 一度は。


 二度目、三度目、四度五度………。

 攻撃しては離れ、回り込んでは羽根や体液を撃ち、上から踏みつけ横から引き裂き、ヒット&アウェイを何度も繰り返されていると、堅固な壁にも綻びが生まれる。


 こちらの攻撃は殆どそれらを捉えられず、傷を付けても敵体内のL型に、即座に治療されてしまう。

 こちらも肉体を治すことは出来る。

 しかし意思や集中力、戦意や気合は同じようにいかない。


 消耗が早いのはどちらか、それが確然かくぜんとしていた。


 そこに、バッタ側からお代わり。

 推定C型を始めとした、W型に指揮される下等モンスター達。


 賑やかしであろうとも、ローカルのせいで居るだけで最大の迷惑。

 無視してW型だけを相手にする、という事が出来るほど、存在感を示さない相手ではない。

 かと言ってそれを減らすのに躍起になるほど、敵の最大戦力から目を離すのと同じになり、押さえ切れずに惨事を見る。


 結果、多正面たしょうめんを同時に相手にするしかない。

 言っている事がどれだけ無茶でも、やらねば敗けるのだ。


 ルカイオスに、敗北があってはならない。

 それは栄光あるエイルビオンに、二度と消せないきずを付ける事になる。


 国の歴史とは、人の命と比べてならない程に重い。

 それが穢れてしまえば、守り通して来た祖先に顔向けできない、だけではない。

無限の未来で生きる子々孫々に、屈辱と徒死としとが与えられ続ける。


 死ねば責任が取れる、という軽々しい問題ではない。

 世界が終わる日まで魂を焼かれ続けてもまだ足りぬ、誰にも受け止め切れない罪業となる。


 


〈〈〈グゥアラグゥアラグゥアラグゥアラ!!〉〉〉


 深緑の鎧が金の縁を浮き光らせ、要所からジェットスラスト!三つ首の竜がその身を一回転させるのを補助!

 輝く翼が光りの輪を描き、360°を焼斬しょうざん


〈〈〈ヒュゥゥゥウウウウウウウォォォォオッ!!〉〉〉


 頭が各々、顎を引いて弓のつるのように首を張り、


〈〈〈ドグァアアアアアアアアアア!!〉〉〉


 チューブを通る流体のように連なったプラズマ連射弾!

 ビビッドグリーンが昼間を過剰なまでに明るく照らし尽くす!

 草木の青々が目に痛いほど焼き刻まれる!


 バッタ共はまるで一般的イメージの緑色に戻ったかのように燃やし滅ぼされる!

 ドラゴンの首に脚だけで掴まる弓兵達が、魔具(きゅう)を速射し空から迫るトンボのようなシルエットの推定F(フェルツ)型を射殺し墜とす!


 地上からは旅装を纏った推定(グラーツ)型達が、小型バッタを吐き続ける推定M型を抱えて高々とホッピング!

 弓兵B(ビショップ)達と同じ高度まで上がって来ては撃って落ちるを繰り返す!


 一人が赤土の砂嵐のようなものを呼び出して散布!

 敵の視界を奪うだけでなく、バッタが触れた粒子が機雷と化してばくほう!表皮を凹ませ勢いと命を殺す!


 彼らが放つ飛び道具全般、あるBポジションの能力によって必中に導かれる!

 であればこそ容赦も遠慮も無く、撃って撃って撃ちまくれる!


 C型と思しき三角頭が地上から接近するのを、ドラゴンがジェットの排炎を表面から噴くシッポをしならせ叩き、そこに装備された鎧の鋭角部で断殺だんさつを仕掛ける!だが正面が異様に硬いそれは、直突ちょくとつした触覚を剣のように操り何合も打ち合ってくる!


 推定C型は他にも複数!

 竜を支える4本の後ろ脚を狙って頭から突撃!


 騎士の一人が右の前脚にまたがり、竜のその手に長く太い白銀はくぎんのランスを持たせ、それで1匹を上から突き刺すと、一時水銀のように液化して敵を溶け固める!

 

 翼で大気を叩き鎧の腹から炎を噴射する事で体を持ち上げ、後ろ脚の防具と爪とで残りも返り討ちにする!


 背をよじる動きとジェットスラストでビビッドグリーンの光を纏った翼を大きく横振り!F型に運ばれて空から降ってきたC型を胸から両断!

 そうして回りながら下方に再度火炎放射!ペンペン草一つ残さず根から除草するかのように、親の仇でも狙うが如き徹底ぶりで、灰となった原野に重ねて火を入れる!


 炭化した景色は、しかし竜の輝ける息吹に照り映えて、緑があった頃の記憶を残したままのよう!

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