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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十六章:どれもこれも、もう止められない

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434.怪獣には怪獣をぶつければいい!

 他ダンジョン産であるモンスターのill(イリーガル)化。

 それらに異なる性質やローカルを付与すること。


 モンスター同士であるからこそ通用する例外手、だと思っていたのだが、“靏玉エンプレス”からディーパー相手でも可能だという衝撃的暴露があった。


 え!?ウッソだあ!?

 と言いたい所だろうし、俺も普通にそう思ったのだが、説明を聞いてみれば「確かに…」感がある。


 あいつはこう言った。


「魔学的回路を持っておるのだったら、どんな物にも憑けるぞえ?」


 あとこうも言った。


「憑かれた物が無事であるとは限らんが」


 じゃあダメじゃん!

 と言いたいのを引っ込めて、より辛抱強く話を聞いてみる。


 俺達の魔学的回路と、イリーガル側の魔学的回路、二重に通すと言うか、それらを融合させると言うか、とにかくなんかかんやする事で、一時的に力を貸す事は出来る。

 が、免疫機能みたいなもので、自分と全く性質の違う魔力を回路内に流されると、普通に拒絶反応のようなものが出る。


 モンスターは自我が希薄だから、それによる痛みは軽微で済むけれど、俺達みたいに複雑な自意識を持ってる生物に同じ事をやると、最悪精神が破壊されるという。


 説明が終わっても「コワー!?」という感想が一切動かないのも逆に凄いが、まあ呑み込めはした。

 要は俺が自分をしっかり持って、どこまでが自分でどこまでが借り物かを認知し続けていれば、ちょっと頭がゴチャるくらいで落着するということだ。


 とまあ人生終了並のリスクがある話の上に、憑依する側の気持ち一つで自分の回路に直接攻撃されるという特大爆弾まで抱え込むので、そこの「信用するかしないか」の牽制し合いの時間が必要だったのだが、


 ミヨちゃんが居たのでそこらへんはオールオーケーだった。


 彼女の魔法を俺の内部と深く繋げ、負担分散や咄嗟の治療が出来るので、「どうなっても何とかなる」空気になったのだ。

 持つべき物は背中を預けられる友達である。

 ニークト先輩と言い、どんどん頭が上がらなくなってるのだけど、と、友達だし、ちょっとくらいはね……?


 というわけで、俺にイリーガルを憑依させつつ、負荷やデメリットはミヨちゃんに緩和をお願いするという形が完成した。


 魔素不足問題は“暴風ハーヴェスター”が補ってくれるし、色々と至れり尽くせりである。


 憑依する側が誰になるか、という選択が残っていたが、なんか他を押し飛ばす勢いで立候補して来たのがメガちゃんである。


「お姉様の手を煩わせるまでもありませんの!この!ワタクシが!斯様な不届き者!成敗してくれますの!」


 っていうのを言いたいだけだろお前。

 とも思ったのだが、地面に着けば発動するローカルや、能力によって体を硬くし遠距離攻撃も授けてくれるとあって、相性は良さそうだと了承した。




〈どけぇ!お姉様に良い所を見せるのはワタクシですの!〉

〈やめろ!暴れんな!俺がやらなきゃ意味ないだろ!〉




 で、早くも後悔に襲われている。


 こいつ、やかましい。

 そして、重い。


 憑依された瞬間、全身に鉄の鎧を溶接されたような苦しみに襲われた。

 ミヨちゃんの助力もあってそれは何とか耐えたが、手に入ったボディはデカいし小回りが利かない。

 相性どころか、俺の良さを完全に殺された感じもする。


 けど、まあ言うまい!

 俺が売りにしてる“軽さ”が“暴風ハーヴェスター”にとってオヤツみたいなものらしいのはその通り。

 ちょっと風に煽られたとしてもビクともしないこの重厚長大な肉体が、ごうらんを耐えるのに優れているというのは動かし難い事実。

 

 このまま行く!

 この力で敵を消し飛ばす!

 気分は複数人で操縦するタイプのスーパーロボット!

 

〈来た来た来てるぅ!〉

〈防御しなさいちんちくりん!〉

〈やってるって!右から!〉

〈こっちも守り厚くするね!〉


 敵の豪風に乗ってこっちを目掛けるあぎとに俺の魔力をぶつけてから3Dパズルのような構造の右腕で受け、そのピースの一部をズラして内に流れる体液を外に解放。

 そこに溶け含まれていた物質が急減圧によって解放されガス化、泡となって弾け出て、ゴツゴツの破片と化した表皮を撃ち飛ばす!!


 相殺!

 拳に拳をぶつけて無力化するような攻撃的防御策!

 皮膚を剥がすような痛みはあるが実質的なダメージはゼロ!


 そしてぇっ!


 これだと死なないだけだけどっ!

 ご安心ください!

 こっちから叩き込むアプローチ手段もちゃんとご用意しております!

 

〈とっととぶっぱなしなさい!ちんちくりん!〉

〈よっしゃあ!SHoooooooT(いっけえええええええ)!!〉


 尻尾を内に畳んで筒を作り、肩に担ぐように構える!

 ガスをたっぷり含んだ体液を付け根に集め、そこを押さえているパーツの一部を外に向けて開ける事で圧力急転直下!

 

 発泡!

 それと合わせて魔力爆破!

 発砲!

 その弾頭の後ろから何度も魔力炸裂!

 

 砲塔となった尻尾の中を多段階加速しながら飛翔!

 灰色を横切り緋が穿うがたれる!

 風が纏う雲を切り裂き俺達を見下していた両目の中程、眉間があるだろう点にピンポイントジャックポット!!


〈やった!〉

HIT(入った)!〉

〈確実に獲ったァ!〉


 弾は衝突によって砕かれその内部にも“臥龍メガサウリア”の体液を閉じ込めていたから減圧発泡が発生している!

 放出された可燃性ガスと酸素に高熱が引火し連続誘爆!

 凶威的ダメージ!

 鮮血のように炎混じりの黒雲が噴き出し敵の悲鳴が〈いやっ!?〉健在!?何も変わらずまわるヴェールの向こうから不思議そうに瞬きを続ける双眸!


〈当たってないか効いてないかどっちだと思う!?〉

〈そんな、当たらなかったんですの!効いてない筈がっ!!〉

〈この雲そのものに変身してて打撃を受けにくいとか、そういう可能性は無いの!?〉

〈それでもワタクシの連鎖爆発と熱を受ければ何か魔力から揺らぎが伝わる筈!!〉

〈ちょっと待って!今確認する!〉


 ここにある嵐の中に奴が紛れているなら探知できる!


〈ミヨちゃん!ちょっと俺から流れ込む情報量多くなるから!気をつけて!〉

〈アレをやるの!?ススム君!〉


 合掌!

 鉄の扉を閉じ合わせるような、いつもより大きく重い音が響いたからびっくりしたが、とにかく全霊探知状態に没入!

〈ひゅ、ぅぅぅううう…っ!〉

 魔力は、

 敵の体は、

 ここに居ない!

 散ってもいない!

 もっと上の方に、大きな塊として存在している!

 

〈ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!〉

〈なん、ですの…!?いた…っ!?これ…!?こんな、うぅ…っっ!?ちんちく…っっ!!〉

〈これが、すすむくんが、いつもみてる…!おぇ…っ!〉

〈あいつ…!やっぱり、ひとつだ…!わかれて、ない…!〉


 これだけ大きい相手だと、当たらなかったわけでもない!

 じゃあ本当に、単純に効かなかった!?

 こっちが出せる最高威力の遠距離攻撃だぞ!?

 単純に硬いのか!?

 なんとか殴りに行くしかないって事だろうか?

 しかしこの強風の中、自由に飛べるわけがない!

 何とかして傷をつける方法を探さないと、先にこっちの集中力が切れて削り切られる!


 いや、っていうか、

 こいつ、デカ過ぎってより、広過ぎ——


〈!!つぎ、くる…!〉

〈わかって、ますのぉ…!〉


 肌を刺し剥がすような風の強まりを感じる!

 次の攻撃だ!

〈ひゅ、うううぅぅぅ…っ!〉

〈…!ぐ……!!〉

〈あっ、ミヨちゃ…!〉


 いけない!

 この状態だとメガちゃんはともかく、ミヨちゃんに掛ける負担が大き過ぎる!

 一旦全霊探知を切って——


〈あがっ!〉

〈ぐぅぅぅ!?なんですの!?ちんちくりん!止まるな!何があったっ!?〉


 お、おかしい。

 呼吸が、ヘンだ…!

 別に、空気はちゃんと吸えているのに、苦しい…!


 続かない…!

 胸も喉も物理的な意味で張り裂けそうだ…!

 詰まっている!

 攻撃どころか、魔力の循環の維持すら危なくなっている!

 この体が動かせない!

 保てない!


〈まさか…!これ…っ!?〉

〈早く立てええええ!来てますのよおおおおお!!〉

 

 態勢を立て直し切れない俺達に、


 戦艦の主砲みたいな威力の散弾が殴り込んだ。

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