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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十五章:見てよこの層の厚さ!アツアツだぞ!

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420.そのー…、あんまり責めないで………

 世界大会優勝チームとしては不思議な話だが、彼らは担当教師から一通りの褒賞を受け取った後、それなりの小言も頂戴していた。


 「改善点の話なんて、今くらい良いじゃないか」という声もあるだろう。

 だが今回は大きな成功体験であるからこそ、それが必勝パターンではないこと、どころか危険な橋を渡る行為であった事を教えておく必要がある。

 ギャンバーはその根本が、遊びではないのだから。


 それに、憂いという不純物を先に取り除いていた方が、後の打ち上げで気持ち良く褒め放題、賞賛の嵐に出来るというもの。


 という事で、トロフィーの授与までの待機時間として、控室に戻った彼らを迎えたのは、それぞれの担当教師から——亢宿は通話で——訓示を神妙に傾聴する儀式だった。


 

 八志が4人に忠告したのは、「人に言い返す事に重きを置き過ぎるな」、という事だ。


 「見返したい」というモチベーションは向上心に繋がり、良い循環の呼び水になる事ができる。しかし軸や基礎として置くと、「あいつが嫌いな方に行こう」という行動原理へと変わり、自分のやりたい事、やるべき事を見ないようになり、この世で最も嫌いな誰かに取り憑かれた生を送る事になる。


「厭うている者とは、出来れば顔など合わせたくなかろう?」


 そう彼女に諭された教え子達は、矢張り自分達の考えなどお見通しかと、逆に嬉しそうな顔で大人しく頷いていた。


 自信を得た事もあり、彼らはそれで「り」、心ない連中の視線に振り回されるのはこれっきりだと、そう心に決めたのだと言う。



 問題は、パンチャ・シャンの方である。



「あいつが結構ややこしい事になってるってのは」

「承知しています。私もその『ややこしい事』の一部ですから」

「何かあったら国同士のイヤミ合戦からの国際問題化だってのも」

「無論の事です」

「無論じゃねえよお~……!説明してくれよおぉ~……!」


 ニークトとの対話によって、何一つ原因が分からなかった事で、彼は頭を抱えてしまった。


「他の奴らは」

「彼らは何も知りません。奴が相談したのは私と詠訵に対してのみです。その三者間の合意の上で、奴と詠訵を別行動させました。責任は、最も年長であり、このパーティーを率いる長であり、判断した当人であるこの私に」

「あー、いい、いい!それはどうでもいい!責任なんてのは大人の側でどうにでもなる!最悪俺の年俸やら査定やらがサックリ行かれるだけだぜ。それは良い」


 「そうじゃなくてだなあ」、

 ペチペチとスキンヘッドを平手で叩いて、飲み切れなかった苦渋を溢すシャン。


「本当に、カミザとヨミチの行き先に心当たりは、無いって事なんだな?」

「はい」


 端的に悪びれもせず言い切るニークトに、頭と肩をガクリと落としてしまう。


 決勝出場予定だった進がメンバーから外れた、どころか、詠訵と共に消息不明だと言うのだ。

 国際社会が未来を見据える試金石として、今大会一番の注目の的であり、クリスティアにも最重要護衛対象としての圧を掛け、丹本側も細心の注意を払っていた。その協力体制には救世教まで名を連ねている。


 そんな監視網を抜けて、二人は消えた。

 どこからどう抜け出たのか。

 そしてどこに、何故向かったのか。


 監視カメラにすら引っ掛からず、頼みの綱のニークトは知らないの一点張り。

 雲を掴むような話になってきた。


「本人は授賞式典には間に合わせると、そう言っていましたが」

「そういう問題でもねえんだよなあ……。俺はあいつらの教師で、その身柄を預かってる立場だからよ。あいつらにもしもがあっちゃならねえんだ。それは“教師”という職能の信頼、そして矜持にすら関わる話だぜ?」


 「ただでさえピリついてるって時に……」、

 その呟きを、ニークトは耳聡く拾う。


「何かあったのですか?」

「いやな?異常気象って言う奴かね?地球温暖化のせいか?まあとにかく、ここから東に行った先の、あの五大湖で——」

 



—————————————————————————————————————




 時は遡る。


 決勝戦開始から30分以上前。

 編成の最終調整に入った丹本パーティーの控室にて。


 ススムのスマホに通知が届いた。


 彼は端末を取り出し、それを確認して、

 

「ご、ごめん!ちょっと出て来る!」


 血相を変えて慌ただしく立ち、困惑する周囲に目もくれず、最も大事な話し合いの場から離脱。


「ススム君!?」


 それを追って詠訵が駆ける。


「な…!ええい…!少し待て!5分で戻る!」


 ただならぬ、「特殊な」事情が絡んでいると睨んだニークトが、少し遅れて部屋から飛び出した。


 進は詠訵と二人、少し先の階段、その下のスペースに隠れるように入り込んでいた。


「ここなら恐らくはっきりとは見張られていない…!」


 ニークトは鋭い嗅覚で付近を軽く洗い、ヒソヒソ声の話し合いを聞かれるほどの近くに、人員が配置されていない事を確かめる。


「何があった…っ?」

 

 鋭く問う彼に、進は蒼褪めた顔でスマートフォンの画面を見せる。


 そこには登録されていない電話番号から、メッセージアプリでテキストが送られていた。


 内容はこうだ。



『こちらキャプチャラーズ、電話を取るのをオススメ』

 


 彼が目だけで黙読した直後に画面表示が切り替わり、


 その番号からの着信が知らされた。

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