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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十五章:見てよこの層の厚さ!アツアツだぞ!

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403.乱入される事に定評が出来そう

「フランカ代表団は、恐るるに足らなかったと、そういう事でしょうか?」

「その通rむぐー!」

「ちょっ!トロちゃん先輩!流石に問題発言ですから!」

「そいつを後ろに下がらせトケ!」

「えー、失礼しました。ここからは私、辺泥・リム・旭が引き継ぎます」

「パーティーメンバー間の仲は良好みたいですねー」

「ええ…恐らく…」


 わあ、外行きの辺泥先輩だ。

 渋みを全面に出すと、雰囲気的に別人に見えるな………。


「パーティーがここまで勝ち進んできた勝因として、どんな事が挙げられるでしょうか?」

「それぞれ我の強いメンバーで、それだけ魔法が強力であること。その上で協調性をしっかり構築する事で、集団戦での個性の食い合いが発生しないこと。この二つが主要因でしょう。次点で、作戦立案の質の高さも、忘れてはいけない所です」

「作戦は皆さんでアイディアを持ち寄って作るのでしょうか?それとも得意とする方が?」

「主に六本木さんや私が骨子を作り、そこに全員で肉付けしていく形です。特に六本木さんの戦術眼には舌を巻くものがあり、日々学ばせて貰っています」

「メンバーと雖も、切磋琢磨するライバル、ですか。良いですねー」

「はっず、ヨイショやめろし………」


 世界大会経験者な事もあって、立て板に水でスラスラ言葉を流す辺泥先輩に、小声でツッコむ六本木さん。

 隣で立ってる狩狼さんが、それを横目に「きゃわー……」と漏らし、肘でド突かれていた。


 ところでこれは何をしているかと言いますと、見ての通りと言えばその通り、丹本のテレビ局の取材を受けています。

 

 次の試合の地形設定が始まるまでの間、アリーナの端っこで撮影する許可を取っていたらしく、ヒーローインタビューを申し込まれた。

 って言うか、話自体は準決勝進出確定くらいの時から来ていて、ただ負けた場合晒し者みたいになるから、「勝った時は生徒に話してみます」、という返答をしていたらしい。


 っと言うのを知っていたのは、シャン先生と八志先生の二人。で、八志先生は何やら別件で立て込んでいて、シャン先生は頭から完全にすっ飛んでいて、話すのがギリギリになったそうな。

 いや忘れないでくださいよそんな大事な事!って言ったら、


「あんな無鉄砲シフト見せられた側にもなれ!」


 と正論カウンターを食らった。

 その件については申し訳なくごめんなさい。


 で、


 いつぞやの囲み取材の時とは違い、ちゃんと有名人としてのインタビュー。本当の地上波デビューになるかとワクワクしてた俺なんだけど、色々と配慮があるのか、俺に話を聞く気は特に無さそうだった。

 じゃあ身バレを避けるミヨちゃんや、実家に変な流れ弾を当てられないニークト先輩みたいに、控室で待ってるべきかとも思ったが、「映る分には映って欲しい」、とのこと。


 「視聴者の興味の対象だから数字の為に出したいけど、根強いアンチ勢力もいるからデカデカと発信したくはない」、という裏でのせめぎ合いが見える要望だった。


 ミヨちゃんあたりは言い分の勝手さにプンスカ怒っていたけど、俺は別に、マイナスな取り上げられ方じゃないだけで嬉しいし、ススナーに「俺ここまで来たぜー」という躍進を見せたい欲もあって、「じゃあそれでいいですよ」と快諾した。


 こういう所でしっかり功績をアピールして、ディーパーのイメージアップを図って、風当たりを和らげていこうという趣旨らしいし、俺みたいな炎上リスクを薄めようという判断は頷ける。

 地上波に乗るのは間違いないんだし、漏魔症への偏見払拭の一助になるかも、という期待もまだ出来る。



 そして今、

——喋らないでいい立場で良かったぁ~~~~!!

 と心の中で車のマフラーみたいな溜息を吐いている。



 理由は辺泥さんとやり取りをしているインタビューアー、の横で放送席から何故か駆け付けている解説の人である。

 俺は知らなかった。

 まさか“あっしぇん”が世界大会の解説に呼ばれてるなんて。


 “爬い廃レプタイルズ・タイルズ”の攻略以来だろうか?あ、今は別のダンジョンに潜ったって記憶になってるんだっけ?ややこしいな……。とにかく、俺がカンナと逢ったあの日以来だ。

 あの高い槍型魔具を勝手に使った事、根に持ったりしてないよな…?

 後から管理企業越しに返却されてる筈だけど、破損とかしてるのを理由に弁償とか要求されたら、どのくらいの貯金が吹っ飛ぶ事になるんだろう?


 改めて、彼と会話しなくていい幸運に、涙が出るほど感謝する。

 俺の人生、歩けば棒に当たる犬みたいに、歩数を余計に足すとトラブルに巻き込まれる事ばっかりだったけど、こんな形で神回避というのは運が上向いて来ている証拠に………うん?カンナ?どうした?さっきまでもっと高い所に居ただろ?


(((ススムくん、あちらを)))


 左手で俺から右方向を示す彼女。

 言われてそっちを向くと、報道陣とか先生方とかが誰かと話している。

 シャン先生のデッカい背中の陰になっているせいで、こっち側からだと誰が来たのかよく分からないけど——と、先生がこっちを振り向いた。


「おおい、カミザ。すまん、お前に用があるって奴が」「いえ、ここで結構デス」「あ、こら、待ておい!」

 

 止めようとするシャン先生の前に並んで壁になる、サングラスに黒服の男性数人。

 彼らが作った道を、個性豊か、って言うか尖った面々がレッドカーペットの上みたいに堂々と渡って来る。


「あなたが“カミザススム”デスネ?お会いできて光栄デス」

「あ、どうも、“カミザススム”です。ハイ」


 先頭を進むアップバングな金髪の、スター俳優みたいな長身男性——男子?——が、踵に拍車がついたブーツをガチャガチャ鳴らしながら、俺の前で止まって右手を差し出す。

 俺は反射でお辞儀しようとしてから、慌てて行動を修正した為、中途半端に傾いた体勢で握り返すことになった。


 俺の事を知ってるのに、躊躇なく触りに来たから、多分良い人だな!というクソチョロ思考回路を一旦止めて、えーっと、見た事あるようなー……

 

 俺が記憶をまさぐってると、彼の後ろから女の子がひょっこり顔を出した。

 緑とかピンクとか毒々しい色のペンキをぶちまけたみたいな、ボサボサでボリューミーなロングヘア。前髪に遮られた青い瞳が、ジッと俺を睨んでいる。

 その子のビジュアルで思い出した。


「クリスティアパーティーの……」

如何にも(イエス、ウィー・アー)。ワタシはエドウィン・ドゥオーダ、こっちは愛しき妹のアルバ」

 

 ドゥオーダ兄妹ツインズ

 クリスティア代表の中心と言われている双子。

 背格好とか性格とか、一目だけなら同じ日に生まれたどころか、血が繋がってるとすら思えないだろう。


 彼ら二人は、クリスティアにおけるトップ層の配信者でもある。

 

 妹の方は、魔具紹介、改造、加工といったガジェット系のコンテンツをメインにしており、オリジナル多重魔法陣回路を組んだりして、変なロボットとか便利な道具とかを作っている。どっかの企業の商品開発部に目を付けられてるとかなんとか。


 兄はもっと過激と言うか、体を張るタイプの王道潜行系配信者だ。

 確かな戦闘能力と、魅せる戦い方という、直球に人気な通常の潜行配信に加えて、様々な近現代兵器や妹が作った魔具などを使った検証配信、みたいな事をやっている。

 元々裕福で、更に凄腕ディーパー且つ登録者億越えという資金力によって、毎度毎度ド派手な企画を持ってくる。


 ちなみに俺が好きなのは、ダンジョンを一日貸し切って銃火器縛りで攻略する動画だ。

 小銃を二丁持ちしてただけでも絵面が面白いのに、威力をちょっとずつ上げるのがメンドくなったのか、急に戦車砲みたいなのを背負い出した時は爆笑した。確かに破壊力は頼もしいけど、すっごい重くて逆に不便になってそうだった。

 自動装填出来るからって、ジャラジャラぶっとい弾丸引き摺るのはやり過ぎだって。


 ああ違う違う違う違うそういう話じゃなくて、


「あのー……あ、アー、ドゥー、ユー…?」


 テレビ局のアナウンサーの人が、「何の御用で?」という顔を全力で作ることで、言語の壁を跳び越えようと試みている。


「ドウゾオカマイナク。ワタシ達は彼だけに用があります」


 エドウィンさんの方は堪能な語学を駆使してズカズカ最終防衛ラインを踏み越え、俺のパーソナルスペースにまで突入し両肩を掴んで覗き込みながら——


「実はアナタに」「聞きたい事ですか?それともご意見が?何でもどうぞ!お聞かせください!」「お、おお……」


 俺はもうせめてもの威嚇に全力の笑顔で応じた。


 もう煮るなり焼くなり、全然良いですよ。

 カンナがバスガイドみたいに俺の注意を誘導した時点で、こういう事だろうと思ってました。

 藪から棒に意見陳述を求められたり、何かしらでネチネチされるのには慣れてます。こちとら「エゴに正直」で売ってますんで。

 俺を驚かせたかったら国防の長を呼んでください。


 あ、でも妹さんには、もうちょっと優しめに接してくれるよう頼んで頂けると俺が助かります。さっきから目つきが因縁付けるヤンキーみたいでとても怖いです。俺は魔素が無いと紙屑同然なんです。ちょっと力入れられるとズタメタです。今はディーパーに接するノリをやめて欲しい。


「ご丁寧に……な、なら聞くデス」


 エドウィンさんは咳払いと一緒に、自信が充溢した立ち姿に戻り、


「アナタ、領分を犯すつもり、アリマスカ?」

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