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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十五章:見てよこの層の厚さ!アツアツだぞ!

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396.剣士VS騎兵

 世界ギャンバーU18大会2061年。

 準決勝1試合目。

 フランカパーティー対丹本パーティー。


 ほぼ平坦な地の随所に、空っぽな甲冑の山が積み上がり、見晴らしを邪魔する合戦場。


 試合開始から10秒。

 その中心を端から端まで、濃い青紫色の光線が横断。

 射線上の障害物を消し飛ばし直線路を作る。


 開始から15秒。

 線の片側に金色のあぶみを付けた、つややかな赤毛を流す大柄な馬が到着。

 青紫のブロードソードと、同色の小さい丸盾、バックラーを持った男が、それに跨り金の手綱を握る。


 25秒。

 一度半身を上げいなないた後に、極めて良好なスタートを切った名馬が、踏んだ場所を砕きながら驀進。

 その毛と同じ色のエネルギーフィールドを纏い、敵陣へ真っ先に切り込まんと気炎を吐き、戦場の中間に差し掛かる。


 直後、その進路上に躍り出る一人。

 先端と根元が竜胆色に輝くレイピアを閃かせ、馬の鼻先、触れた物を細砕さいさい物に変えるエネルギー膜に、その剣を二度突き立てる。


 両者共に地を削りながら背後へり下がる。

 進行が停止。


 少女が細剣を自らの胸と顔の前に立て、構える。

 馬が前脚で小刻みに土を叩いて威嚇。

 それに騎乗する男が左手の盾を掲げ、その表面を翡翠色の何かが削り、それと共に剣の間合いが伸びる。


 馬が後ろ肢のバネを解放、少女の側面へ跳ぶ。

 時速200km前後、100メートル2秒以下のスピード。

 初速時点で既にメジャーリーガーの最高球速を優に上回り、新幹線に肩を並べながら、自らに攻防一体の破壊的エネルギーフィールドを纏わせ、攻撃を寄せ付けない。


 その状態では、乗り手が剣を持った手をただ横に伸ばし置いただけで、人なら簡単に両断出来る程度の斬撃と化してしまう。

 計算されたフォームで剣が振られていたら、更なる致命撃へと昇格する。


 無論、それに腕が耐えられればの話だが、可否については今更言うまでもない。

 

 少女はそれを剣の根本で受け、後ろに押されつつも横に流し、刻まれた竜胆色を剣先で精確に切りつける。

 それでも勢いを殺し切れず半ば吹き飛ばされる形でのバックステップ。

 

 馬はその時着地からの再跳躍を果たしている。

 再び側面からの攻撃。今度は縦に近い斜め斬り上げ。

 が、これは冷静に左サイドステップ。

 すれ違いざまに青紫の剣身が爆発。少女はこれを装甲で受け、横に転がり受け身を取って即立て直す。

 

 その背後に縦一直線の刃が肉薄。

 宙返りの途上で上下逆さな馬上から振り下ろされる、回転も上乗せされた一閃。

 その剣身から発される魔法の気配が弱まっている事を冷静に見て取った少女が、右脚を反時計方向に回し、ある程度背中を削られるのと引き換えに、頭上まで届く縦振りを放つ。

 これはバックラーで受けられる。


 馬は着地後に即低く屈みながらの一回転。

 青紫を増して伸びた剣が横一文字に全周を薙ぎ払う。

 少女はスレスレまで背を地に近付けるリンボーダンス的動作で直撃を躱すも、またしても剣身が爆発、土中に押し込まれる。


 受け身の反動で転がり立った所に馬上から数回の斜め振り下ろし。

 それら全てを斬り払って対処。


 先程から踏み壊して回った事で、足下のコンディションは最悪に近い。

 最適な姿勢を馬に補助される男とは対照的に、少女の踏み込みは甘くなっていく。


 そこに馬からの横蹴り。

 それがガードの上から直撃した事を利用して、反作用で整ったフィールドに出ようとする少女、その後ろに既に回り込まれており念入りに足場を荒らされる。


 彼女が振り返ろうとする途上で、既に剣は下ろされていた。

 レイピアが間に合わず右腕に深く「“我が家へようこそ(オイキュメニステ)”!その隙待ってた!」

 その間に割り込み、両手を顔の前に翳すようなポーズで完全詠唱をする、もう一人。

 その両腕に切り込みが入って血が噴き出すも、直後に騎士の両腕の同箇所に同じ深さの傷が作られ、少ししてどちらも塞がった。


 見上げても、見回しても、見下ろしても、煉瓦積みのような模様の白で塞がれる。


 外との通信も途絶えた。


 完全孤立地帯に、2対2。


「成程、その女が簡易詠唱であったのは、魔力温存の為か」


 合点が行ったと騎士が頷く。


「成程成程、この中に当方を出来るだけ長く拘束し、鬼の居ぬ間に外で人数有利を作ろうという謀略か」


 「成程成程成程」、

 彼は少女二人を交互に見た後に、


「分を弁えろ、痴れ者め」


 いたく気分を害したような態度で、上からそう罵る。


「貴様ら二人だけで、当方を押さえ込めると?そして、防御策も治療手段も無い4人が、どちらも揃えた当方の同輩達に勝るとでも?」


 「笑止千万!」、

 馬がまた、高く鳴く。


「敗着だ。貴様らがその、まっこと小さき頭を絞って選んだこの手で、貴様ら自身の決定的敗北が成ったぞ。まことまことに!愚人は夏の虫であるな!」


 そう、これは正気の沙汰じゃない。

 彼女の我儘だ。


 彼女が考えた、彼女だけでは出来ない勝負。

 彼女にしか出来ない勝負。


 全幅の信頼が無ければ、彼女はここにこうして立っていなかった。


 その意味を考える事から、逃げてはいけない。


 剣士は自らを戒め、そして改めて肝に銘じる。


「見縊らないで貰えるかしら?」


 勝て。


 ここまでやったからには、何の言い訳も立ちようがない。


 ただ、勝て。


「剣なら、私はあなたの上よ?」


 懸念も心配も、既に済ませた。


 後悔は、負けた後にしか有り得ない。


「ここからタダで出られるなんて、そうは思わないことね?」


 ジュリー・ド・トロワ、

 

 一世一代の決戦が始まった。

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