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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十五章:見てよこの層の厚さ!アツアツだぞ!

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388.いっそ殺せ

さあてご来園の皆々様方寄ってらっしゃい見てらっしゃい!これからご覧頂きますのは世界で一番特別なパレード!日常に疲れて癒しを求めて明日も忘れて楽しみたい!そんなあなたにココがオススメ正真正銘本物の異世界!

世の中あれも嘘これも嘘っぱちでどれもみんなが被り物!けれどあなたの前で並ぶは命を持ったスペクタクル!身体と心を持って生まれた誤魔化し無しのキャラクター!さあさあそんな後ろにいないで触れてみませんか「いつも」でない場所!


ほら先頭を見て!横を見て!あなたの隣の笑顔を見て!

喉から歌って音楽奏でて自分で動いてワンツースリー!

どうです見ました上手いでしょう?大した芸だと拍手をどうぞ!


はいありがとう!ありがとう!みんな本当にありがとう!

ほら喜んでる!笑ってる!あなたと友だちになりたいって言ってる!


やーやーそこの小さなボクも貴婦人然として麗しいあなたも一つどうです友情の証は?あー怖くない難しくない身構えないで力は要らない!とっても簡単お手を拝借!子豚のオインキーとあなたで握手!


はいありがとう!はいありがとう!みんな本当にありがとう!

あなたが今日を喜んでるといいな!なあそうだろオインキー?

はいキミも!はいあなたも!ほらほら順番押さない慌てない!安心してよ友達のみんな!オインキーはみんなとちゃんと仲良し!ワクワク待ってればこんなのすぐさ!さあオインキー!オインキー?オインキー?おい、どうした?オインキー?お嬢さんが困って、おいおいおい、おい!?おい!やめろ!止まれ!なんで!おい!押さえろ!こいつを止めろ!巻き込んでる!オインキーやめるんだ!言う事を聞け!何見てるんだこっちに来いはやく!止めるんだ押さえろ!フレームが噛んでるんだ!何してる力を抜くな!死ぬ気で掴め!はやく緊急停止させろ!オインキー!命令を——













 力を入れない事。


 敢えて抜く事。


 言うは易しというやつで、今まで耐える一辺倒だった事も手伝って、ひと欠片かけらもしっくりこない。

 目を凝らす訓練はしてきたが、目を開けながら何も見ない修行とかはしなかった。一番近いのが、擽られても平静を保つ恒例のアレだったけど、そこまで重要だと思ってなかったから、気合で耐えるというゴリ押しだけでなんとかしていた。


 知らないうちに、俺はサボってたらしい。

 

 ってなわけで、カンナにそこを含めて相談した所、やり方に変化があった。

 主に悪い方に。


 え?あそこから悪化する事あるのかって?

 まあ落ち着きなって、見れば分かるから。


 まずカンナが複数になりました。

 ここまでは良いですね?

 カンナあるあるです。良くなくても慣れましょう。

 ちなみに全員、リボン付きベレー帽と、白を基調としたセーラー服着用です。こういうのにもいい加減慣れたいけど、無理なので諦めましょう。人類は彼女に対してあまりにも無力。


 で、ミニカンナに喉とか腹とか腕とか脚とか、色んな部分を拘束されてます。

 掴まれてる?いやいや。確かにそれもありますけど、それで終わりではカンナじゃありません。

 噛まれてます。カミソリみたいな犬歯で甘嚙み状態です。


 膝立ち状態で、少しでも動いたら、なんなら皮膚をピクつかせただけでも、表面どころか血管まで破られます。まあ、死にますね。夢の中ですからね。それくらいは覚悟しましょう。


 で、カンナ(原寸大)が、俺の頭の上に腰掛けて、人気のクリスティア菓子であるチョコチップクッキーを味見してます。

 く、首が…!

 彼女の足は床に付いてますけど、その、そもそもデカいんで「重い、などという思考を、噯気おくびにでも出してみなさい?追加を載せますよ?」なんでもないです。


「女の子には気を遣って、涼しい顔で支えるものですよ?」


 要求が高過ぎるぅ!


 と、世界一珍妙な緊縛状態にあるわけだけど、これは何かと言えば、電極棒をフレームに触れないよう運ぶゲームの、難易度レベル1000みたいなコンセプトでお送りしているのだ。


 まず、詳細は省くけど大きなカンナによって首から全身に掛かる負担。これを前に折れてしまい、身を沈めでもしたら、即座に全身が切り刻まれる。かと言って力を入れ過ぎて血管の太さが一定を超えるとそれもアウト。


 そして俺の頭や頬でもちゅもちゅとした尻や太ももが潰され、溶けたマシュマロで包まれるような多幸感という電流が脳から全身を痺れさせるために送り込まれ、そうなると当然のようにアウト。


 目の前でれいようのような二本の生足が、互いをより引き締めるように組み交わされ、いたずらに垂らされたミネラルウォーターを弾く程のハリを獲得し、それを観賞してると欣幸きんこうを与えられ()()()()と身震いしてしまうのでアウト。


 熟れた果物を一晩中蜂蜜に浸けたみたいな芳香が鼻を通って肺に詰まり、もっと嗅ごうとしたり気分をフワつかせたりするとこれもアウト。


 噛まれている部分の横でしゅりしゅりと皮膚を撫でる髪のじれったさに鳥肌を立ててもアウト。


 髪束の先で左眼を突き刺されて怯んでもアウト。


 ここに加えて眠くて腹が減って喉が渇いた状態になっており、その波をやり過ごそうと強張ったらアウト。


 カンナが俺の喉に指を突っ込んで、ご親切にもそれを伝わせながらミネラルウォーターを流し込み、それで気管が変に暴れたらアウト。


 そこに乗っかる一面銀世界というステージ設定。脚から体温が奪われ、新たに発熱しようとカタカタ震えるとアウト。


 極めつけに俺の両手の先は、ミニカンナの腹、たくし上げた服の内、曲線美に囲まれたヘソに突っ込まれている。

 ありえん深さを持ったそれは、俺が痛みに手を握り締めようとすると、蕩々《とうとう》とした包容力で受け止め、どこまでも掴み所を許さない。自分の他の指と掌が、無限に遠くなったかに思えてしまう。

 やり場の無い苦痛は、俺の体の中だけで回り、外に逃がす事が出来ない。

 



 今の彼女は、俺が何に気を取られても、何なら目の焦点を合わせるだけで、100%の痛みを与えながら全身血まみれでのたうって死ぬように閉じ込めている、パーフェクトアイアンメイデンなのだ!


 「なのだ」じゃねえ!!!!!

 どうやったらこんな手の込んだ殺害方法を思いつくんだよ怪人黒ゴマプリンがよ。

 普通に生きるにしろ戦いの中に身を置くにしろ、まずもって出てこない発想だろコレェ!


「はい、また遣りましたね?」

「ぬひゃふぐう゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!しゅひぃぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ」


 手の甲を舌先でちろりと嘗められ、骨が跳ねるかの如き感銘が走り、直後に至る所で針山のような絶苦ぜっくと流れ出てはいけない液の喪失を感じる。


「ふうう゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ……ッ!ふうううぅぅ゛ぅ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ……ッ!」


 き、きっっっっっ

 きっっっっっっっっっっっつぅぅぅぅぅいっ!!

 

 ここ数日、これがルーティン化してるってマジ?人間を相手にしてるって前提忘れてない?


 だ、だが!

 初日の死亡回数が4ケタ見えるレベルだったのに対して、2ケタくらいまで抑えられてきた!

 慣れるもんだな人間ってぇ!!


「ですが」


 カンナ?ここで「ですが」やめて?これ以上「ですが」禁止ね?はいスタート!


「けれど」


逆接禁止!!言い方の問題じゃあ…っ!


「ひゅ、ぎぃぃいぃぃぃ゛ぃ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛……!!」


 はい死んだー!

 そんな事やるから死にましたー!

 せんせー!

 カンナの唇に耳たぶを優しく挟まれましたー!


「あれ、何をしているのですか?単なる計測行為ですよ?」


 け、計測…!?

 

「はい。体温や脈拍の変化が、小さくなっているだけで、ゼロになっていないかもしれません」


 そりゃそうだろ!?ゼロとか出来るかあっ!?


「こぉらぁ?顔色一つ変えずに、力まず平坦に、嘘を吐けるようになりたいのでしょう?」


 そう言うと人聞きが悪いけどさあっ!

 ってか額面通りに受け取り過ぎだろ!表に見えなきゃいいんだって!ゼロになる時って、それもう心拍も平坦だよ!


「神経が多く通った耳で、それを確かめようとしたのですけれど、それに負けてしまうなんて」


 いや負けたって言うかぁ!


「体温計を腋に挟むだけで、感じてしまうのですか?」


そ、れは、違うじゃん…!今のはぁ…!


「たいそう びんかん なんですね?」


「んひゃギニ゛ィイイ゛イ゛イ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィィィィ……ッ!」


 砂糖水を吸い含んだような重い美囁びしょうに悩まされていたら、言葉の途中から何の前触れもなく耳に唇をつけながら《《ぽしょぽしょ》》わらわれて、不純物を取り込む余地なく入ったそれに思考が揉み洗いを受けて再度死亡。


「弱々《よわよわ》な、ススムくん、ですね?」


 ちょ、耳やめて、マジでやめて。

 

「あれ、今、脈がまた跳ねました。これが嬉しかったのですか?」


 右耳全体をカプって行きながら、左耳元で話すのやめて。


「ススムくん、これから尋問するので、全てを無風の沈黙で、否定してみてください」


 く、何も聞いてくれない…!

 い、いいぜ!

 その喧嘩買った!

 俺は絶対に動揺しない!


 正面に立って喉を噛むカンナが、右手で俺の心臓あたりをまさぐって、


「私の事、好きですか?」


 とくり、

 俺は死んだ。


「私に、離れて欲しくないですか?」


 とくん、

 また死んだ。


「私に触れられていると、触れ合っていると、変な気分になりますか?」


 とくとく、

 さっきから連続して何回死んでるか数えられない。


「くすっ、これ、面白いですね。浜に打ち上がったお魚ですか? ばか みたいに、ぴくぴくぴちぴち、だらしのなーいお顔で」


 ず、ずるいぞ!そんな、否定したら絶対に嘘だって分かり切ってる事ばっかり!


「あれ、新たにススムくんの奥、ススムくんのもっと深ぁい好み、私にまだ辛うじて知られていない、情けなぁい部分、暴いて良いんですか?」

 

 ちょ、ちがっ


「では遠慮なく。何処が一番弱いでしょう?足の裏?」


 とく、


「内股?」


 とくん、


「脇腹?」


 とく、


「腋の下?」


 とくん、


「首筋?」


 とくん、


「背筋?」


 どくり。


 気配だけで、カンナの笑みの底が深まったのを感じる。


「正直なススムくんには、背中に撫で撫でをあげましょう。生のままが良いでしょうか?」


 き、聞かな……!


「サラサラした手袋」


 もう、やめ、


「目が粗くザラついたもので、ぞりゅぞりゅと?」


 俺が、悪かっ


「ストッキング生地とか、どうでしょう?」


 やめてえええええええ!!


「ふっ、くっ、くふっ、ふふふふふ……、ふふふふふふふふ……!」


 カンナは愉快でしょうがないと言うように、全方位からひそめ笑いを漂い流す。


「ぜーんぶ、バレちゃいますね…?知られちゃいますね…?」


 顔が火照っても、すぐに冷たい刃を入れられる。


「答えたくないのに、もっと強がっていたいのに、ススムくんのカラダ、勝手に全部、ぜーんぶ…、白状しちゃいますね…?降参、しちゃいますね…?」


 血と共に、抵抗感も抜けて行く。

 

「ススムくん…?」


 自分が今、生きてるのか死んでいるのか、痛いのか心地いいのか、


「私にススムくんの、隅から隅まで、知られるの、いや、ですか…?」


 恥ずかしいのか安らかなのか、


「………ふふっ」


 分からなくなった。


「そう、そう、その調子、ですよ…?」


 カンナが、

 

「深呼吸…、深呼吸…」


 か、んな、が、


「吸って…、吐いて…、」


 だきし、め


「吸って…、吐いて…、

 吸って…、吐いて…、

 吸って…、吐いて…、」


 すって


「吸って…、吐いて…、吸って…吐いて…吸って…吐いて…鼓動を…脈を…感じて…溶けて…とくん…とくん…とく…とく…抗わずに…追い出さずに…受け入れて…あなたは…それでいい…そのまま…そのまま…恥ずかしくなーい…恥ずかしくなーい…」


 はいて


「あなたは…あなたが好き…頼りなくて…弱くて…寄り掛かって…立とうとして…考えて…それで…それでいい…」


 それで

 よくて


「あなたは…あなたを…許せる…」

 

 ゆるして

 だから

 ゆるさない

 だから…

 あなたが…見るもの…聞くこと…触るもの…

 全て…許せる…拒まない…目を瞑らない…全部見てる…知ろうとする…

「空の色…町の雑踏…草いきれ…磯の汐気しおけ…星の熱射…」辛くて…痛くて…汚くて…重たくて…悲しくて…切なくて…悔しくて…寒くて…憎んで…恨んで…「でも…許せる…あなたは…許す…」抱きしめる…あなたは…あなたを…やさしく…なでて……「そして……いつか……どれだけ……とおくても……いずれ……

もえて……

ちって……

まざって……

ひとつに……

おもいだし……

ひろく……

すべて……

そのみに……


おれは……


あなたは……


そこが……


きっと………










 


















 いつまでも

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