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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十四章:じ、上等だ!纏めてかかってこいや!

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383.照れますなあ

 戦闘可能エリアが狭まるにつれ、誰も彼らに勝てなくなっていった。

 簡単に理由を書くなら、亢宿勻の空間制圧魔法が猛威を振るい、詠訵三四と訅和交里の厚い防御が阻んだ。



 触れたらそれだけで肉まで食い込む木の根が戦場を支配し、空からは不可視の爆撃を落とす高速機動兵。それらから逃れるべく身を縮こませ、安全地帯に捩じ込んだ先で、狙い澄ました猟犬が襲い掛かる。

 

 そのような場所で生き残れるわけもなく、反転攻勢以外にすべき事などありはしない。

 そうして決死の覚悟で飛び入った者達は、幾重にも隔てる防御能力に道を閉ざされ、志半ばで散っていった。




 ギャンバーにおいて、丹本が強豪とされる理由は、大きく二つ。

 一つ、ダンジョンとディーパーを重視する前時代的国家運営を続けている事。

 もう一つ、銃火器を所持しない事を前提とした経験ばかり積んでいる事。


 他の全ての国では、ディーパーの質を自慢しても、彼らに銃の訓練をさせないなど有り得ない。対モンスターならまだしも、対人戦闘におけるそれらは、潜行者達から見ても強力な武器となる。

 必然、誰にでもある程度扱える、スイッチ一つお手軽人殺し道具を上手く使う動きというのが、彼らには染み付いている。


 ギャンバーでは、その経験値が逆に、彼らの手つきを濁らせる。

 いつもの訓練や実戦と同じように、何も変わらず動ける丹本勢と比べて、切り替えるべき意識のスイッチが多くなり、その「不慣れ」の分だけ不利になる。

 

 丹本の弱点である、「兵器所持の禁」。

 その状態に適応し続けた結果、モンスターだろうが銃だろうが魔具と魔法で殴り飛ばす、変則的な強みを持った国家が生まれた。


 個人の強さに依る所以外を出来るだけ排した、銃も強力な魔具も持てないギャンバーという舞台。

 それは彼らにとって、庭とも言える環境なのだ。

 

 だから、丹本パーティーは予選突破有力候補。

 その意味では、多くの人間の思った通りの結末だ。



 が、内容を詳細に見た者達は、「予想通り」など口が裂けても言えなかった。



 優勝候補だということは、バトルロワイアル形式において、それだけ狙われやすいのと同義。

 更に予選第一試合には、他に極東系民族のパーティーが存在しなかった。

 今回彼らが選抜したメンバーに、陽州系の生徒が入っていなかった事もあり、戦場で出会えば絶対に丹本パーティーだと分かってしまう。

 

 高い攻撃優先度を設定され、全ての殺意が集中し、彼らを倒す為なら一時休戦する事も考える、そういった暗黙の同調圧力まで醸造されていた。


 一対一対一対一対………であった筈が、彼らに関してだけは、一対圧倒的多数の構図になる。

 彼らは優勝候補であるが故に、最も脱落の可能性が高いパーティーだったのだ。


 例年通りの丹本パーティーなら、落ちている。

 有識者は口を揃えてそう言った。


 今年の丹本代表は、何かおかしい。何か異なる。


 その「何か」、

 それを作った大きなパーツの一つを、彼らはよく知っている。


 ここ数年どころか、ダンジョン史に刻まれる例外を、丹本は保有している。


 数十人のディーパーを、一人で振り回したその驚異的存在感を、彼らは目撃している。




「このまま!このまま届くのか!こんなにも華麗に決めてしまうのか!こんな順調な事があっていいのか!残り4パーティー!いや3パーティー!あと一つ!あと一つ!ここで終了のブザー!試合終ぅ了ぉー!残った2パーティーのトーナメント参加が決定しました!丹本パーティー決勝進出ー!」


 語はそうまくし立てた後、「いやー」と一息抜いた。

 興奮からそうなったのもあるが、そうでもしないと試合展開に追い着けない、という事情も手伝って、早口にならざるを得なかったのだ。

 

「六使通さん、これは……、今年は凄い物が見れるかもしれませーん。いえ、もう見れてはいます。既に10年に一度クラスの凄い物を見てはいるんです。それを承知で、言わせて頂く事になりますが……」

「ええ、分かります。理解しています。私達は、歴史が変動するまさにその時に立っている、私もその想像を手放せません。そして、驚天動地はこれで終わりではない。その予感が沸々と腹を打ちます。彼が——」


 六使通はそこで、今大会で世界的注目度が最も高かった少年の資料を再度引っ張り出す。


「カミザススムが、ここまでとは…!」

「嬉しそうですね、六使通さん?」

「ええ、個人的な話にはなってしまいますが、ダンジョンと直に向き合う彼の姿勢を前から存じ上げていたので、見放されているのがつくづく惜しいと……いえ、これは本当にプライベートな話になってしまいますね。失礼しました」


 傍らに置かれていたミネラルウォーターを口に含んで、トーンを落ち着かせる。


「今申せますのは、私が抱いている感慨は、とてもおおきな物である、という事です。ダンジョン史が塗り替わる快挙を、この目で、この現場で見れた事は、生涯の誇りになるかもしれません…!」

「確かにそうですねー。これまで彼の名が響くのは国内や、動画サイトを通しての範囲で限られていましたが、ここに来て各国の地上波で鮮烈なデビューを果たしたと考えますと、この影響力は計り知れません!」

「元々彼を知る人達からすると、『遂に見つかったか』、という思いかもしれませんね。帰国した後は大変な騒ぎになる事も予想されます。今や彼は、ローカルなヒーローではありません!世界的な大スター誕生です!様々な、そして歴史的、絶対的なハンデを乗り越え、彼はこの大舞台まで這い上がり、そして見事やってくれました!


 明日からその名を知らない人は、地球上から居なくなるでしょう!」


 「カミザススム」。

 その名にまつわる言説は、誇張されたものでも、サブカル界隈限定の話でも、なくなってしまった。

 今日、世界が本当の意味で、その少年に直面した。


 この話題は、潜行界隈やスポーツの範疇に留まらない。

 あらゆるメディアが、明日の朝刊が、ニュースと名の付く全部が、彼を取り上げる事になる。

 それを無視すれば、一人儲けを逃すのは必然。誰にもその現象を、抑止する事は出来ない。

 ネット上での一過性のブームだと、品性下劣な者達が興じる低俗な娯楽だと、そう見下して居ない事にするにも、無理が生じる時世の到来だ。


 漏魔症罹患者と言う、“人間”の“再発見”。

 それが為されようという、目を逸らせない現実。


 望むと望まざるとに関わらず、これから彼の一挙手一投足、全てに文脈が乗せられるだろう。

 秩序を守る者達、野望を抱く者達、悲願をかかぐ者達、希望に渇く者達………




 世界中の彼らの物語に、一人の少年の行く末が、自分事として深く刺し入ってしまった。




「さて壮大な社会現象の話から、スケールを一旦我々の仕事の範囲に戻しましょう。他の明胤生も流石のレベルの高さでしたが、六使通さん、そうなるとライバルになりそうなパーティーはどこになるでしょうか?」

「まだ何とも言えませんが……、事前にデータに目を通した限りですと、イフリは情勢的な難しさもありますから、矢張り陽聖諸国が強そうに見えますね」

「主立った顔触れで言いますと、クリスティア、エイルビオン、フランカ、ゲルマナといった?」

「特に今年のクリスティアも欲張りセットのようなメンバーが揃ってますので、他を圧倒して予選通過したように見える丹本パーティーでも、勝てるかどうかはまだまだ分かりません。気と兜の緒を引き締めていきたいですね」

「クリスティアパーティーと言えば、この次の試合でその強さの程を見れるわけですが、特に注目すべき選手はやはり、世界最大規模の潜行配信者でおなじみの——」

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