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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十四章:じ、上等だ!纏めてかかってこいや!

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380.放火ご苦労様です!

 太い脚、長四角な頭と胴。直立二足で猫背なサンドリザード、といった形状。

 その蜥蜴は、炎を現身うつしみとしていた。


 ワイバーンが吐いた炎に混ざり、引火延焼によって巨大化。使い手の遠隔操作によって根を焼きながら、それに守られるパーティーを探す。


 その熱はより強火へと高まり、スマルトブルーに染まり始めた。

 触れる物全てを焦がす、針鼠よりも危険な動物。

 そいつを貫こうとした根が、先端から黒く吹き崩れていく。

 

 第一、そいつに実体は無い。

 腹をとおされても、痒くも感じない。

 ただ己の中で、どこか一部に熱エネルギーを集中させ、ただ触れる以上の壊滅を与える事は出来る。


 魔法生成物が纏う魔力で、それを成立させている魔力を削る、それは可能だろう。

 だが、植物が炎に勝つ場面をイメージするのは、物を知る人間である程に難しい。

 二つの魔法がぶつかり合えば、植物側が一方的に削られる。

 五大元素思想を取り入れた魔法なら、尚の事火力を強めてしまう。

 それは樹木を生み出した者が用意した理屈であり、自分自身に逆らう事は出来ない。


 敵が取った方策は、防護のリボンで樹木を守る事。

 それでも突破された時に、白い立方体の中へ閉じこもる事だった。


 蜥蜴はそれに前脚を近づける。

 通電でもしたかのような火花と共に弾かれる。

 顎を上下に開け、牙を鋭くする。

 その部位にエネルギーを集中。更に青色を薄くし、白熱状態に近付けてから、辺の一本に噛みついた。


 導火線や手持ち花火が赤色を散らす、その音を何倍も鋭くしたような削響さっきょう


 超高温で焼き切って歯をとおし、そこから剥がすなり穴の形に刳り抜くなりして、子供部屋から引き摺り出そうというプラン。


 壁は欠けたそばから補修されるが、それが続くのは中の人間が持つ魔力が尽きるまで。

 他パーティーからの攻撃が眷属も含めて、木の根の防御を打破し何度も、この立方体に着弾している。




 魔力供給と防壁破壊の押し合い。その均衡が逆に傾く時も近い。




 ワイバーンがローマン相手に手間取っているらしいが、行動を制限し本隊から離すことには成功している。パーティー数減少により、戦闘区域が狭められたとは言え、これだけの広さを持つ会場。彼らの側からローマンに攻撃を仕掛けなければ、まずもって見つかる事はないだろう。


 あのローマンの動きとしては、このままメンバーが落とされるまでうろついているか、仲間からのSOSで慌てて自ら火にるか。


 前者なら彼がKポジションでなければ負け。仮にKを担っていたとしても完全な孤立無援によって敗北ほぼ確定。

 後者は折角開けた僅かな突破口を、むざむざ閉めにいくだけになる。


 あらゆる方面を検討し、異なる幾つかの途中式の末、一つの解が導き出される。

 彼らは、予選ここで落ちる。


 あのローマンは彼らの想像を超えた。認めよう。これほど長く仕留められないとは考えてもみなかった。

 だが5人が守りに入ってしまった事で、周辺のパーティーは緩く連帯し、共通の敵を撃てばいいだけになった。


 恐らく幾つかのパーティーが協力し、複数で組んで潰しにかかってきた事への反撃として、あれほど大それた出し物に踏み切ったのだろう。

 奇策でもなければ生き延びれなかった。それは仕方ない。彼らに落ち度は無く、ただそうしなければならないという最善を選び続けて、不可避な袋小路まで追い込まれてしまっているだけ。


 もしも時間が巻き戻せたなら、今度はローマンを雇わない事だ。

 即座に全員から最優先排除対象に指名される、それほどの決断を軽い気持ちで下した上で、のうのうとここに立ってしまった、それが唯一にして最大の過ち。

 そちらの分岐から先のルートは全て、壁に行き当たるしかない迷路だ。


 だからこうやって、手も足も出せなくなったどん詰まりで、苦肉の亀戦法しか道がなくなる。

 全ては彼らで撒いた種。

 気の毒さも少しはあるが、自分で選んだことである以上、何の慈悲も酌量も、享受する筋合いなどないだろう。


 自らの行いは自らで収穫する。それが“正しい”人間の在り方だ。

 

 


 蜥蜴は焼き掘る。

 溶かし歪める。

 石積みのような模様を持つ白壁に、黒橙色くろとうしょくの穴が染み広がり、首が下りていく動きに合わせ、轍の如く引き拡げられる。


 周囲には根が炭化した黒か、それが伸びる度に火勢を増すコーラル。

 それと第三パーティー共による、散発的な狙撃(こう)しゃ

 牙を立ててから3分14秒。

 敵の魔力切れの兆候が見えた。

 二条の傷痕を一本に繋ぎ、右前脚からの噴射で切り取った部分を内に押し飛ばす。


 穴が開いた。

 

 青と白のラインを持つ魔力の少女。

 この壁を作った術者の少女。


 ………


 ………だけ。


 以上二名。


 蜥蜴の表面に僅か、緋が混じる。

 それは明らかな動揺。

 全力の魔法運用に生じた瞬刻の隙。


「いつぞやのバッタと比べると、」


 術者がその口を、チーズフォンデュのように長く緩めた。


「全然大した事ないねぃ~」


 残り二人はどこか?


 木の根全体に燃え広がったコーラルの火焔。

 あれと一体だった時、彼はこのビルの全てを見れた。

 全員がこの地階に来て、根で囲まれた建造物の底、つまり今彼らが居る場所で守りに入った。

 

 ここに居るのだ。

 入っているべきなのだ。


「私のこの魔法ってさあ、壁をどの順番で作るかまで、ある程度決めれてさあ~」


 それが、“正しい”現実なのだ。


「それにこの壁、呪いとか魔法効果とか遮断したりできるんだけどもぉ」


 「言ってる意味、分かる?」、

 

 言う間に壁が崩れて落ちる。

 何を言ったとして、その講釈に意味は無い。

 3人逃したとして、二人落とせるならそれでいい。

 3分の1が脱落となる痛手に、貧しさに喘ぐがいい!


 蜥蜴の頭が肥大化し、喉の奥に火力を集中。

 レンズのように一方向へ絞り、口を上下左右四つに展開し、白に近い紫色の放射火炎を、


〈キュゥ、〉解き放つ!〈イイイイイイイイィィィィィィィィィィ!!〉


 魔力が枯渇しかかったディーパー二人では、防げるものではない!


 火線は何者にも遮られずに反対の壁の残留物も吹き消し地に潜る!

 

 直撃を避けるも二人は逃げ場の無い高温によって〈!!〉


 蜥蜴の体表に、今度ははっきり確認できるほどのオレンジ色が波打つ!


 逃げ場所は、あった!

 下だ!


 白いキューブが消えた、その下に穴が開いていた!


 萌黄色の根が伸び、二人を回収、その中に消えて行った!


 

 そこで彼ら、丹本パーティーの作戦が開示された。


 籠城ではない。


 そうと見せて打って出る!


 地下トンネルからの反攻作戦!



〈ギィャァァァァァス!!〉


 蜥蜴はその中に飛び込み、根を燃え伝いながら二人の後を追う!

 それはすぐに横穴へと変わっており数十mほど先に一団が見える!

 

 スマルトブルーの炎そのものとなった蜥蜴は彼らを包み熱と有毒ガスで「こんこぉん!」到達直前で根に巻き付いたリボンが妨害!「グレっちー…!マフくん…!」更に先端に円形の焼夷歯列を持つピンク色の鋭角三角形とがっぷり四つ!二つの強靭な顎の咬みつき合い!魔学エネルギーのせめぎ合いによって先を急ごうとする推進力が減衰させられる!

 

 しかし蜥蜴の使い手は既に、ワイバーンに指示を出していた!


 萌黄色を経由して送り込まれる追加燃焼!火球を地階に撃ち込みそれを蜥蜴の能力で取り込む追い炊き火力補給!!

 

 更に自らを幾つかに分けてグレイハウンド×マスティフを迂回させリボンが守る範囲に入った所で根から飛び上がり空中で再集合!蜥蜴型に戻った上で体当たり!


 そこに萌黄色の根が防御に回される!


 穴を塞ぐべく複雑に組み上げられたパズル。

 木のうろの内側のような模様を作って内部空間を二つに分ける!


 その壁の一点が、黒ずみ、中心に小さな明かりが差し、青色が膨らみ入ってくる!

 熱エネルギーを狭い範囲に集中させ、向こう側から浸透してきたのだ!


 火に変わる根という燃料には事欠かない!

 閉鎖空間を一酸化炭素で満たし、

 大気を急速加熱する事で熱殺し、

 直接的に炎で炙り焼く!




 これから彼らは炎蜥蜴の気まぐれレシピで料理されるのだ!



 

「そう。君はどうやら、しっかりと炎であるみたいだ」


 その植物を操る少年。

 骨まで焦がすかのような高出力魔法を鼻先にして、己が守りに使った植物が焼かれ果てるのを見上げていた。


 そうだ。

 下からその灯りを見ていたのだ。


「マッチを逆さにすると、火傷する。重力下の火は対流によって、上へと昇っていくからだ。温まった大気が軽くなるから」


 蜥蜴は、その身を構成する燃焼現象は、

 その意にそぐわず上へと引かれて、惹かれていく。

 絞首刑に処された罪人の如く、足を着けたい地が遠ざかる!


「詠訵さんのリボンを避け、直接僕達を消し炭にしようとして、だけど火を強めてくれる僕の魔法から離れたから、それが心を細くして、どこかで引っ掛かったんだろう?僕が防御の為にこの根を伸ばした時、ラッキーだって思っただろう?」


 これで火を強められる。

 確実に彼らを倒せる力を得られる。


「僕の“木”は、“火”を生む。僕の木から生まれた火は——少し違うかな?——『僕の木から火が生まれる』という現象が、僕の能力の一部だ。君はそれを、自分から望んでしまった。僕が生み出す炎を、それを自らの一部とする事を」


 魔法が生んだ現象、その制御権の押し合い。

 それが行われている最中に、何かを相手に委ねるということは、大幅な譲歩をしてしまったようなもの。


 そして炎は、下から上に行くものだ。水とは逆に。

 その法則に逆らうよりも、従わせる方が楽だというのは、小・中学生でも分かる事。


 だから蜥蜴は、炎は、

 上に続いている萌黄色に従って、敵から離れるにも拘わらず上昇。

 根を火に変える。それは両者の合意が取れた事。故に片方だけの都合で変える事は出来ない。


「“萌緑黄色満面東竜シング・ロング”。僕を燃やした勢いで、全て焼き尽くせばいいさ」


 望み通り、思う存分。


「出口はもう開けてあるから」

 

 


 ビルの一つを確保していたパーティーが、狙撃対象を見失ったすぐ後、突如として足下から萌黄色の根がしゅうせい。それを導線としてスマルトブルーの超高音火焔が噴出。


 新たな火山が生まれたかのような事態を前に大いに揺れ、焼却か5人組による追い打ちの憂き目に遭った。

 

 それが一つのパーティーの息の合った連携でなく、あるパーティーが別のパーティーに利用し尽くされた事例だったと知ったのは、


 全員が脱落した後の話、


 彼らの監督責任者の口からである。

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