378.忙しい忙しい!
『!?何でここに!?』
『撃つな!こっち撃つな!当たる!同士討ち!』
『クソッ!速すぎる!』
『なんで!なんで劣等種なんかにィィィ!』
『Bがやられた!Kを固めろ!守るんだよはやく!』
『止まれ!とまれえええええ!!』
『何してんだ落とせよ仕事だろうが!』
『うるさい!今やってる!』
『まずっ!落ち——』
『確かに命中コースだった!どうして当たってない!?』
『魔力による防御が予想以上!計算を上方修正しなさい!』
『待て!今はあいつを!うわああああ!!』
『こっちで争ってる場合じゃないってのに!考えろよ!』
以上、世界大会における全パーティー共通規格無線に流れ込んだ悲鳴の数々。
—————————————————————————————————————
「邪魔者がッ!」
少年は3体の重装型アーマーに追われていた。
「大人しくどいてろよローマンンンッ!」
黄色の雲のような物に運ばれ空中を滑るように距離を詰める3名だったが、一人がその背中を突き刺さんと肩に担いだ棒を伸長させる!
しかし少年の姿が消えた!
加速した?
そうじゃない!
急ブレーキを踏んで彼らの足下に潜り込んだ!
そこに身を置けば彼らを飛ばしている強力な気流によって空気の塊を叩きつけられる筈だった!
だがそうはならない!
足を抱えるように小さな身長を更に屈めて空中で三角座りめいた格好となり、振り向きざまに左脚を解放!回し蹴りが一歩後方に居た中央の追手の顔正面に突き刺さる!
「ぐぽぼンっ!!」
受けた者は綺麗に円をなぞり後頭部で地上絵に一筆描き加える!
両側2名が方向を変えて彼を挟もうとした時、その首に縄が引っ掛かって同じように後ろ倒しにされる!
蹴りと共に伸ばされたケーブルが3人の頸部を繋ぎ、一人を転倒させる事で全員を巻き込んだのだ!
回転刃を展開しながら更に一周胴部を回り締め付ける!
装甲が削られながら一つに纏められる甲冑達!
「ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」
そこに数発飛び来たる黒紫色の魔法弾!金属製のように見えるそれを少年は捕えた装甲を盾にする事でやり過ごす!
着弾点に残留した実体がボディを開き四脚小型追跡装置へと変形!カサカサと忙しなく四肢を動かし電極のようなもので動きを止めようとして来る!
見えぬ魔力が炸裂!
衝撃波によってバラバラに破壊され魔法消滅!
少年は腰のケーブル巻き取り装置を脱離して地を抉るような鋭い一歩、いや一躍!
コーラルの火球が半呼吸遅れて弾着!
3名のシールド残量を削り剥がし脱落させる!
少年の移動先を狙うようにして空爆続行!
けれども小刻み且つ不規則に進路を切り換える事で当てられない!
地上や建物内から火球・水球・雷球・岩石弾・眷属などがてんこ盛りで一斉襲撃!
高密度弾幕を前にさしもの少年も完全回避とはならず魔力反応装甲を幾らか減らしながら目に付いた建物内へガラスを割りながら入館!
「ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!」
幾らか攻撃が薄まっている内に奥側へ!壁に穴が開き追尾する化け物共が廊下を埋めそれをワイバーンの一吐きが掃討しながら床を這い広がって彼の背を追い掛ける!
少年は天井を爆破し上階へ!
2階!
3階!
4階!
そこで移動ベクトルをXY平面方向に移し左の壁を見ながら廊下を歩き始める。
左腕を畳んで自らを守るように構え、右掌を壁に向ける。
魔力効力が著しく強くなった事で、腕や姿勢を構えると幾らか強くなる、その変化が実感できる程に大きい物となっていた。
故にわざわざ、銃口がどちらを向いているか、相手に示すような事をする。
「ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」
息
を
調
え
歩
き
な
が
ら
魔力二連発射!
1発目で壁を破り2発目をその向こうへ!
反対側でそれを受け止める屈強な戦士!
少年と鏡合わせのように右腕で盾を作り左掌を構えている!
歩
速
を
変
え
ず
漸
進
し
た
こ
と
で
穴から見えなくなり壁越しに一発!
ドリル回転をする銅色の鋭い鉄棒が壁を抜ける!
上体を僅かに後方に逸らす事で最小限挙動回避!
破片の散弾は左腕の反応装甲で受ける!
穴の向こうに見えた巨体は、もう一人を負ぶっていた!
手指で模された双眼鏡を後ろから装着させられている!
あれは恐らく透視系か、
或いは弾道予測等の様々な情報が記された、
特別な視界を与える能力者だ!
魔力二連!
右腕で受けてから魔法弾2発!
壁を紙かのように貫けて少年を狙う胴棒!
開脚して身を沈める事で回避!
脚を閉じる勢いで自身の体を持ち上げ
魔力弾3点射!
右腕を更に一発叩かれよろめくも負けじと4本返し!
前転回避!
2発ずつ2箇所の計4発!
撃ちながら正面の窓にそのまま突っ込む!
片方をガードで受けもう片方で足を縺れさせながらも
行く手を阻むオフィスデスクを横に放り除けてから
少年を追って外へ!
コンクリートを破り隣のビルに!
窓が向かい合った反対側の建物に突入!
「ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!」
ガ
ラ
ス
越
し
に
互
い
を
視
認
し
な
が
ら
再
度
の
魔
弾
戦
!
隔てる物も薄くなった事によって飛び交う有効打の数は跳ね上がる!
幾つか中間で衝突した物に関しては銅棒の方が貫通し飛び続けている!
押し合いでは巨人が有利か!
だるまの置物のようにユラユラと器用に上体を傾けて躱す少年を見て当てる事より態勢を崩す事を目指した詰め方に変化!
少年の動きが制限されていき堪らず足を浮かせた所にピン刺しの一本!
それを発射する直前に足下に仕込まれた透明魔力が踏まれた事で起爆!
大きくバランスを崩し支えにしようと手を泳がせた事でガードが解け攻撃も当然明後日に外した所に魔力の群れが連発!
背中に取りついていた者まで含めて顔面に何発も現代爆薬並の衝撃を入れられ頭蓋と頸椎に深刻な損傷と判定!脱落!
そのビル間に4枚羽がホバリングしながら降りて来る!
2本角を持つコーラル色のワイバーン!顎の内に猛る炎舞を溜め込みながら、頭を少し引いた後に水平加速飛行!
ビルを横に焼き切らんとする擦れ違い火炎攻撃!
急速に熱された空気の膨張によって二つのビルの中層階から外へメラメラと盛る爆流!
減速から180°転回!
歯の合間から灼熱で漏れ照らしながら更に燃やそうと頭を引く!
その下顎にサマーソルトキック!
爆熱を吐き出せず悶え苦しむワイバーン!
魔力爆破・ジェット技術を利用した回転によって更にもう1サマーソルト!
脳の神経伝達に僅かな暗黒を生じさせ硬直を生み出す!
瞬膜を展開し眼球を守った飛竜の頭部を親の仇のように両手で叩き続ける少年!
空を征く竜が低くに降りるこの瞬間を待っていたのだ!
と、そこに必殺の気配!
少年は蹴り飛ばし、飛竜は頭突きを入れ、互いに敵を叩いた反動で全力避難!
斜め下方から穂先を二又に分岐させた一本の槍が両者の合間を通過!
その外見は一角獣の頭蓋を先端に付け、何らかの生物の骨格で組み立てられた、モーブ色の銛の如し!
音速を超えていたか衝撃波が発生したことで彼らを更に突き放す!
槍が刺さったビルは着弾点から強烈な爆発が発生!
それは穂先が内側から急激且つ大量に生えた事によって起こった砕撃!
穂先の内の少年とワイバーンに向いている部分は発射されどちらも避けられた先で壁や地に当たるとまた無数に生え伸び放たれる!
道路の両側をビルで挟まれたこの場所では乱反射の如くそれらが増殖し空間を埋めていく!
少年、飛竜はそれぞれ魔力と炎を纏って突き立つのを免れながらその槍に囲まれていない方へ全力逃走!
制空権争いは激化し、誰の頭の上からでも、一番の激戦区が降って来かねなくなった。
まずどのパーティーと戦うのかというプランを、正確に決められる者が居る筈もない。
そこにプラスで脱落者増加によって、試合進行をスムーズにする為、戦闘に使用できるエリアが縮小されていく。
知らない振りで息を潜めて機を待っていた者、他と足並みを合わせ特定の敵を落とそうとした者、
彼らの思惑は達せず、
全員参加の混沌が盤上を埋めていた。




