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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十四章:じ、上等だ!纏めてかかってこいや!

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371.大義名分ってやつ

『こちらオペレーター。各位感明は良好ですか?』


『こちらアタッカー・トゥ。感度良し』

『こちらディフェンダー・トゥ。問題なく聞こえる』

『聞こえてまーす。あ、サポーター・トゥでーす』


 瓦礫の下に潜り込んでいる、銀色に輝くカナリアに似た眷属を通して、それぞれのK(キング)から三者三様の返事。

 オペレーターパーティーの誰かが持つ能力で、それを使って全体に指示が運ばれる。


『あなた達の任務は、目標パーティーのKポジションの撃破、並びにそれを阻む第三勢力の撃退もしくは排除です。宜しいですね?』

『ジッピーローマンのパーティーをとっちめろ、邪魔な奴らがいたらそいつらもぶっ潰せ、でいいだろ、そんなの。難しく言いやがって』

『サポーター・トゥ?報告の前に所属名をお願いします。私からは分かりますが、他のパーティーからは誰から上がった情報か分からず、混乱を呼ぶ可能性があります』

『わーったわーった、わーっりました、サポーター・トゥでーす!こちら!』


 開戦から5分程。

 ひっきりなしに続いていた戦闘音が、ようやく一つの落ち着きを見せてきたところだ。

 彼らは三文芝居の末、一度互いに距離を取って仕切り直す、という様を演じ切った。


 漁夫の利を狙った無関係のパーティーを、挟み込む形で幾つか脱落させているので、激戦は充分演出出来ただろう。


 彼らは本格的に全体連携を開始。

 物陰に隠れながら近くを飛ぶカナリアに気付かないフリをしつつ、何食わぬ顔で会話する。

 こうする事で、外から見ている観客達にとっては、「追跡されている事に気付かず動く、ピンチのパーティー」として映る。

 眷属の主が所属するパーティーについても、「敵が減るなりやり合うなりするまで様子見し、一番美味しい所で油揚げを食い盗む、賢いとんび」、と見られるだろう。


 不自然さを極力完全排除した、複数パーティーによる談合。

 

 けれどこれを成功させるには、スタート地点がごく近い場所でなければならない。

 そのような不確定要素を持ちながら、どうやって事を進行する予定だったのか?


 お分かりの通り、「不確定性など無い」のだ。


 彼らがこの配置で並ぶ事は既定路線。

 クリスティアやフランカを中心として、通っている話だ。


 クリスティアは、カミザススムを守らなければいけない立場に置かれている。

 しかし、彼らがあの少年を良く思っていないのは、誰の目にも明らか。

 叶うなら、大会であまり活躍して欲しくない筈である。


 だから、フランカから不正の話を持ち掛けられて、あっさり飛び付いた。

 そもそもこのレギュレーションは、ホストとなる国の裁量によって、こういった不正を容易に起こし得るという理由で、問題視されているものだ。

 彼らが懸念した所は、なるほどズバリ、的中していた。


 因みに、そこまで本腰を入れてローマン落としに奔走していた陽聖諸国だが、主要な国は予選で丹本と戦わないようになっている。


 調整が及ばなかっただとか、敗北や不正バレによって、丹本がトーナメントに進む万が一が起こった時、そこで負かす為の保険、といった説明をされた。

 誰もそんな言い分を、正面から信じちゃいない。

 「自分達は参加も把握もしていない」、素知らぬ顔でそう尻尾を切る為に、出来るだけ離れておくというだけだろう。


 南聖はクリスティアに、イフリや陽州の小国はフランカに、それぞれ頭が上がらない。事実上の従属関係となっているのだ。だから、実行犯をやらされるのは彼らだけ。


 とは言え、鉄砲玉達は乗り気でないわけでもない。

 どころか、嗜虐の火に嫉みや義憤という脂を落とし、盛り立っている。


 ディーパーが必死に守っている、人類最強の超越者としての領域を、誰よりも汚れたローマンが土足で踏み荒らす。

 ローマンの戦闘員化が成った暁には、ディーパーの特別性を損ねる事にも繋がり、権威が失効してしまうどころか、カースト下層にまで転落するかもしれない。



 ディーパーは、常に社会の“普通”から弾かれる。

 ローマンを包摂ほうせつし、「華々しく厳かな者達」でなくなったとしても、「ただの人」には戻れない。



上位存在としての地位を失えば、残った席は被差別者の地位だけ。

漏魔症とひっくるめて、見る者の気を悪くする、病人と見られるだけなのだ。


道具の価値だけは持って、だけど嫌われ者。

トイレ掃除に使うシートが、便利だが触れ難く感じるのと同じ。

命懸けでダンジョンの恩寵だけを人類に届ける、その役を担う選ばれた者達が、汚物の如く迫害される側になるなんて、社会の在り方として間違っている。


 馬鹿で最悪な武闘派マフィア的侵略国家、丹本イーポンの末裔がそれをやろうとしているとなれば、歴史に学ばぬ暴挙とすら言える。


 ふざけるな。

 それが彼らの思う所。

 の国の蛮行を、必ずや止めて見せねばならない。


 増した火力が、「怒り」の形を取った。

 それは目の前から順に燃やして、

 移して広げて勢いを増して、

 飽きるまであかで地を染め続ける。

 罪人を焼く為の業火だった。




 彼らが整えた体勢は、分業制だ。


 彼らの中で、最も有用でバレにくい通信・索敵手段、そして遠距離攻撃を持っている者が所属するパーティーを、司令官オペレーター役に任命。

 それ以外の9パーティーを、アタッカー、ディフェンダー、サポーターの三つに区分する。

 基本的に各パーティーが得意な形を聞いて、ポジションの適性を元に仕分けた。


 談合を隠蔽する意味でも、連携を単純化する観点でも、パーティー単位で1ユニットと考え、運用するのがベスト。


 そこからオペレーターパーティーを、3つの指揮系統に分けて、それぞれの指揮下に3パーティーずつ、計3隊を編成。その内二つを攻撃、一つを司令部オペレーター防衛担当に設定。

 敵を圧倒的な数的優位で滅ぼしつつ、奇跡を狙った無理な吶喊を堅牢さで受け止める。


 ディーパー60人動員という、稀に見る大規模攻略作戦。

 負け筋という負け筋を徹底して排した布陣になっており、ローマンがせっせこ小賢しい立ち回りを仕上げ、強いディーパーレベルにまで底上げするという夢のような話があったとして、


——だとして、

——どうしようもありはしない。


 何がダンジョン大国だ。

 潜行者の国だ。

 

 ローマンなんぞを英雄のようにいただいた時点で、彼らは全潜行者の敵となった。

 名の知れたTooTuberである為に、信者だらけの地元では、炎上が怖くて誰も声を上げられなかったのだろう。そこで無敵だったから、図に乗ってしまったに違いない。


 だからやり過ぎて、一線を越えた。

 越えてはならない線を。


 ここでは、

 彼ら相手では、そんなまやかしは通用しない。

 何の斟酌しんしゃくする所もなく、鼻面目掛けて徹底して打ち叩く。顔の形が変わるまでやる。変わってもやる。

 

 人の職、人の努力、人の誇り、人の献身、人の歴史、人の力………etc(エトセトラ)

 それらを虚仮コケにしたらどうなるか、社会不適合者と、それを放し飼いにする無責任国家に、身を以て分からせる。


 奴らの開始地点は、最も交戦が激化するであろう中央高層廃墟内。

 これも、彼らを消耗させる為に、仕組まれていた配置だ。


 こちらに注意を向けられると困るので、あまり近くで確認は出来なかったが、短いスパンで散発的戦闘が続いている事、彼らがそこから出れていない事、どちらも確認済み。


 第三勢力達が落としたならそれでいいが、イーポン製のディーパーは質が高いと言う。楽観は禁物だろう。

 どの方角からも逃げられないよう囲んで固めつつ、下階から順に制圧し、居れるエリアを狭めていく事で、丁寧に摺り減らし擂り潰して行く。


 市街戦且つ長期戦において強いであろう、例の騎士擬きの女。

 脅威として見ていたが、予選の編成にその名は無かった。分断工作は不発に終わったものの、“脅し”はしっかり効いていたか。

 無頼を気取ろうと所詮、良いとこの出のお嬢様。それも故国でくらいを失い、極東に泣きつく弱小の家の者。

 

 強めに釘を刺しておくだけで、するりと引っ込むチョロさだ。

 お蔭で戦いがまた一つ楽になる。



 

『オペレーター・トゥから第三隊。サポーター・ワンが地階に敵魔力を検知。アタッカー・ワンから合図が来ました。30秒後に突入します。衝撃に備えつつ耐魔力態勢を整えてください』

『アタッカー・トゥ了解』

『ディフェンダー・トゥ、了解した』

『サポーター・トゥりょうかーい』


 どうやら、彼ら第二隊と挟むように配置された第一隊、それを構成する一つであるアタッカー・ワンには、魔力の存在感や濃度を上げる事で、純粋魔力爆発を目潰しのように使える者が居るらしい。

 爆発の近くに居る者は、数秒の間だけ巨大な魔力の気配を感受。単調ながら膨大な情報を魔学的に送り込み、処理に追われた脳は五感すら手放してしまうと言う。


 スタングレネードの魔力バージョンとでも言えばいいか。

 閃光ボールの中には、コアのエネルギーで炸裂する使い回し可能なものがあるが、あれも似たような原理を利用している。

 

 魔力や魔法の扱いを磨く事が主題であり、故にギャンバーに銃火器は持ち込めない。

 だがそれに代替し得る汎用的な能力は、数さえ集めれば誰かが持っているものだ。


 中に居る者の魔力感知を含めた六感、それを一発で奪い取って、ひとフロア丸々手に入れられる。カミザススムとやらが魔力を繊細に感じている程、逆に良く刺さってしまう。


 遭遇戦をしているていで、それを1階ずつ繰り返せば、まとは上へ上へと逃げて、どこかで飛び降りるしかなくなる。

 高台から降りて別の建物へ。

 その無防備になる隙を、後衛の狙撃可能な使い手含めて集中砲火。


 空中戦に強いメンバーも何人か居る。

 地上に着かせず倒せるのが理想。

 その後の二の矢三の矢に誘導するのが次善。

 

 特に狙うは、Kポジションと思われる六本木。

 

『ディーパーの面汚しに、狩りの手本を見せてやりましょう』


 誰かがそう言った後、建物内から、


 目を眩ませるパステルピンクの光が、


 高い破割音(はかつおん)と共に放たれるのだった。

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