369.冷静に考えれば、そんなに不思議でもない part2
「変更されたのは予選のルールのみですねー。参加国が多くなり過ぎたという事で、大会運営を円滑に運ぶ為の措置でしょう。ただこれが中々大胆と言いますか、思い切ったと言いますか……」
語が言葉を濁している間に、画面上にルール概要が文章で表示される。
「ああ、出ました、これですね。
『決勝トーナメントに進出する16パーティーを、予選8戦で決定する事になります。
ルールは生き残り方式。
全チームを8つのグループに分けます。
一つのグループに所属する全てのパーティー、およそ25パーティーですが、これが同じ戦場で同時に戦闘行動を許可されます。
戦える選手は1パーティーにつき6人です。
パーティー全員、又はKポジション脱落でチームの脱落となります。
生存パーティーが2つになった時点で試合終了。その2パーティーが決勝トーナメントに駒を進める事となります』
とありますが……」
「来ましたね、バトルロワイヤル方式」
戸惑いはあるものの、驚きはそこまででもない、といった態度の二人。
「えー、最近になってギャンバーに興味をお持ち頂いた方向けにご説明いたしますと、育成世代ギャンバー論争というものがありまして、このルールはその流れを汲むものなんですよね?六使通さん」
「はい。ギャンバーとはそもそも、『潜行者育成の訓練を、興行として利用できたら一石二鳥かもしれない』という、潜行配信の前身とも言える思想によって生まれた競技です。訓練ですから当然実戦を想定し、様々な形式で行われていましたが、国際的競技化の際にWDAの協力で、ある程度統一フォーマットが整備されたわけです」
成人の世界で行われるギャンバーは、均質化された競技性特化の物となっており、地形の事前指定、5本~7本先取制、交互に参加選手を宣言していく段階的オープンロール制等、公平性を担保する仕組みが様々採用されている。
「ですが、U18大会におきましては、BO1の完全オープンロール制という、運にも大きく左右され得る方式を取り続けています。これは旧弊が残ってしまった、という話でもないんですよねー?六使通さん」
「はい、その通りです。実は、U18ギャンバーとプロスポーツギャンバーとの間には、明確に異なる点があります。それは、U18は依然として『実戦の為の訓練』、という点です」
これも、流れで考えてみれば自然な話である。
プロのギャンバー選手はアスリートであり、ギャンバーの為に生き、磨き、ギャンバーに特化される。
それに対しU18は、将来の為に強くなる、そういった目的を持って参加する人間の集まりだ。
その「将来」がギャンバーの選手であるならそれでいい。しかし、フリーのディーパー、国家権力、軍や防衛隊といった国防戦力などなど、ダンジョンという自然の驚異と向き合う時間が最も長い、そういった職を志す者も当然多い。
と言うより、U18に出場するのは殆どその手合いだ。
ギャンバー選手としての才能は、その過程で副産物的に見つかる物であって、最初からそれメインで見ている人間は珍しい。
彼らに求められている、彼らが求めているものは、塵一つなく整備された競い合いではなく、なるべく自らを追い込める疑似的な殺し合いの場だ。
故に、ロールの一斉開示、勝負は一回まで、といった、単なる正面戦闘の実力以外、時には運まで絡むような、そんなレギュレーションとなっている。
どんな予想外や理不尽の中でも生き残る。
それくらいの気概でなければ、ディーパーは任せられない。
「U18ギャンバーのルールについては、以前から競技側に寄り過ぎているのではないか、予定調和化しており対応力の成長に繋がらないのではないか、そういった声が多数寄せられていたと聞きます。それを受けまして、今回の決断に踏み切ったんでしょうかー?」
「恐らくそういった経緯であると思われます。そして今回のルール変更、一見すると、バスケチームが一斉に集められて、プロレスを強要されるような無茶に思えてしまいますが、それは飽くまでエンタメという視座から、スポーツとして見た場合の話です。
本大会の選手の皆さんから見た場合、『今回は対多数、乱戦想定の訓練か』、とそう考えるだけでしょう。何が起こるか分からない中で最善を引き出すという、ギャンバーの本来の醍醐味が戻って来たとも言えますね」
「マンネリ対策にもなりますし、大会運営側としてのメリットも充分見込めますね。ただ今回が変更初年度と言う事もありまして、まだ有効な戦術・戦略等が一切出来上がっていない状態。その辺りで苦戦するパーティーも出るのではないでしょうか?どうでしょう六使通さん」
「はい勿論、これまでとはまた異なるアプローチや連携が求められますから、事故が起きる可能性も充分見えます。ただ、そういった事故を起こす為のルールでもあるんです。本番では命と引き換えですが、ここで先に問題を露呈させておけば、それだけで未来の自分達を救えます。気休めのような言い方かもしれません。ですがU18において、敗北もまた将来の落命を防ぐ、大事な財産と言えるでしょう」
「敗北も財産、ですねー。素晴らしいご意見ありがとうございます」
「勿論、その中で勝利と言う祝福を授かる事も、得難い資質ですので、そこはお間違いなく」
そこでオープニングセレモニーの準備が整い、楽団が最初の一音に食いつくべく構え始めたようだ。
「それでは皆さん。大変お待たせ致しました。世界ギャンバーU18大会2061、只今より開会式です!選手入場となります!皆さん盛大な拍手でお迎えください!」




