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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十四章:じ、上等だ!纏めてかかってこいや!

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354.親切?な人達 part1

 パレード、ってやつだろう。本物は見た事ないけど。


 豚をデフォルメしたキャラの着ぐるみを先頭に、それを数体積んだライオンモチーフらしきカート、白衣と体毛が融合した羊、飛び回ってあちこちに留まるニワトリ、兵隊っぽい服の犬が行進し、その中心にはイルミネーションが散りばめられた大型車両。


 ジェットコースターのレールが行き交い、コーヒーカップやメリーゴーランドの馬が横切る中、彼らは決められたルートを辿るようにして、一糸乱れぬ微速前進を続けている。


 豚が小さな太鼓を叩き、犬がバグパイプっぽい管楽器を吹き、ニワトリがコケコケ鳴いて、大型車両は蓄音機やラッパの先端らしき物を沢山生やして、音楽を流しているつもりなのか。


 しかしそれが不協和音になっているのは、雑音の濃度が高過ぎるからだ。


 それぞれの鳴き声みたいな音がスピーカーから喚かれ、手足を動かす度にモーターが摩擦を訴え、足音は舗装された道に罅を入れるくらい硬質で、障害物があれば派手に壊して通り抜ける。


 とにかく全身から、できるだけ音という音を出そうと、わざとガタつかせている。


 それもその筈、このダンジョンではその方が有利になれるのだ。


 中級ダンジョン、“拍昼鵡シェスタ・フェスタ”。


 潜行のライセンスはWDAを通して発行される物なので、連携出来る国のダンジョンなら、自分の国の免許を使って潜る事も出来る。

ただ、飽くまで「個人」である事が前提で、企業所属は趣味だと言い張っても許可が下りにくいらしい。


 まあ丹本国内でも、競合他社による潜行には目を光らせてたりするし、大人になるほどチェックが厳しくなるのは同じだ。職を得たら免許内のチップに入力しないといけないのも、そういう確認の為だったりする。


 学生を始めとする企業に所属しないフリーのディーパーが一番好きに動けて、エンタメ的に見た時にそういう人達の方が有利になるのは自然な事。だから潜行配信界隈だけで言うと、大手事務所と個人勢のパワーバランスが互角だというのが通説。

 そういう所がまた、「ドリーム」と呼ばれる所以となったりするのだ。


 話をこのダンジョンに戻そう。

 ここのローカルは、「悲鳴もまた反響なれば」。

 デカい音を出し続ける事で、その振動エネルギーを自分の好きなように利用できる、というダンジョンである。


 攻撃を強化したり、素早く動くのに利用したり、使い方は色々。

 とにかくうるさい奴が、ここでは強い。そう思っていればいい。


 今俺が居るのは第6層。

 ブタの鼓笛隊が“G型スーツ”、ライオンカートがV型、看護師っぽい羊がL型、兵隊服の犬がM型、空を飛べるニワトリがF型、一番デカいのがC型である。


 こいつら、1層下るごとに一種類ずつ増えるので、深くなればなるほどドンドンやかましくなる。

 まるでカスのカノンだ。一音ずつ増えるのは同じだけど、こっちは曲が完成していくどころか、騒音被害が酷くなってくだけである。


 ノイズキャンセルがあるとは言え、俺の声も拾いにくくなるから、配信には不向きだったかもしれない。

 

 まあそういう事情もあり、接敵すると交戦前に色々言うのが不可能になる。

 解説を挟むなら殲滅後だ。


 俺はまずレールの上を跳び渡る途中でニワトリを飛び石にして撃墜!

 途中でレールの端を掴んで鉄棒の逆上がりのような動きで回転!

 その勢いを乗せた飛び蹴りでちょうど直線に並んでいたニワトリ数体を一網打尽!

 飛行軌道を変えずにM型集団に突っ込んで1体に激突!

 間髪入れずに魔力爆破と強化身体の二重打撃を叩き込んで壊し切る!


 音を利用した防御や回避を打つ暇を与えずの奇襲。

 今ので面倒な奴らが幾らか減った。

 が、まだ殲滅には遠い。


〈ピィィィィーー!〉


 豚君ことG型が笛を吹いて全体に敵襲を通知。


〈ピィィー!ピィ、ギィィィィイイイ!!〉

 

 鳴き声のデシベルとバチ2本による打鼓だこテンポを急激に上昇させ、他のM型を守らんとするように突進してくる。

 貯め込んだ音のエネルギーによって進行方向の空気を一部押し退け、自身のタックルに掛かる空気抵抗を低減。更に吠え声を出してるデカイ鼻面をガダガダ前後させ、一度の突進を連続攻撃に変える。


ランマー、変圧器と呼ばれる機械。工事現場で使われている、平らな先端が高速で上下し、地面を叩いているアレ。石も土も押し固めることで、平坦に舗装する機能を持つ物だが、あれを人間相手にやろうというのだ。


アーマーの剛性、つまり変形しにくさを無理矢理突破し、ボディースーツや筋肉の靭性、乃ち元に戻らないレベルの破壊に対する抵抗力を損ね、遂には骨まで衝撃を透過させる。

単にぶつけられるだけでも結構痛いが、2体にサンドされて衝撃を逃す先が無くなれば、より悲惨な残骸が出来上がってしまうだろう。


まっ、そんなやり方に付き合ってやるほど、俺はノロマじゃないけど。


HIT(一発)!」G型の足下に仕込んでいた地雷魔力を起爆!「aaaaaand(かーらーのー)!」2体はどちらも空中でバカみたいに太鼓を連打していたが、「THROW(一球入魂)!」魔力爆破によって仲間達が固まっている方向へ強制モッシュダイブ!

 優しい楽団は彼らを避けずに受け止め、振動する鼻先がL型の頭をノックして陶器が割れたような痛ましい音を鳴らす!


 続くG型3体横一列を魔力で渡したケーブルで下を払う事で転ばせ、ニワトリ君ことF型が投下してくる卵型爆弾を魔力膜で閉じ込めて無効化し、L型を抱えて離れようとする一団を追撃!


 そこに電飾の道のようなものが何本も引かれる!これは音波に指向性を与える魔法であり、犬頭のM型が使う物だ!ライオンカートのV型に乗せられ、銃座の付いた戦闘車両として運用される!

 彼らがバグパイプを吹き、山間に響いているかのような鮮やかな多重楽音が通された!それら小さなパレードのルート上にある物は高周波振動をローカルによって一回の衝撃に変換した空気の弾丸を叩きつけられる事になる!

 

GONE(今更遅い)!」俺はそれらのほとんどを振り切りつつ一部を魔力爆破で相殺しながら減速を最小限に狙った通りの相手へ突っ込む!「ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」騒音を切り裂くように空気を揺らしローカルがその制御を俺に託してくれる。「ひゅ、おおおぉぉぉ…っ!」G型と音波弾丸をいなしL型にナイフを突き入れ「SHAaaKE(ガタガタ言えッ)!」その傷口の内で爆発する魔力に音のエネルギーが上乗せされた事で羊毛が四散!


〈バあッ!ッギギギギギギ!〉

 

 内部のメカメカしいフレームが露出、その動力の心臓部は既にへし潰れて原形に戻れなくなっている!俺は左足軸に360°右脚回転蹴り!わざと嚙み合わせを悪くしたようなモーター音で絶叫しながら囲って来たG型軍団を打ち散らす!


 M型の斉射とF型の爆撃再び!「GO、オオオオオオオオ!!」相手の近所迷惑音量に負けないよう喉を酷使しながら魔力爆破を連打して強行突破!

 コースターレール上を走るV型!だけど幾ら速くてもそこを走るなら行き先が見え見え!俺から逃げられると思うな!レール橋の下を潜り反対側にある柱を蹴った反動で進行方向に割り込む!跳ねて逃げようとしているのを魔力で感知し上からの魔力爆破で釘付ける!


 轢き殺そうと直進するのを飛んで避けながらコアをセットしたナイフをケーブル先に取りつけV型車体に刺し立てる!巻き取り機構で後ろからカートの座席、M型4体の真ん中に飛び込み!着地前に1体を右足で蹴り出し、反動で対角の1体へと飛び左足で蹴り出し、反動で右横に身体を捻って1体を右足で蹴り出し、反動で対角の1体へと飛び左足で蹴り出す!


 空中四連キックでダンジョン式途中下車させた後にV型のライオン頭、そのたてがみと座席の境目辺りを踏み抜いて内部で魔力爆破!更に魔力を次々送り込んで配線内に侵入させてから走行中のコースターよりダイナミック降車!


 機体内連鎖爆発でボコボコにボディを出っ張らせたそれが脱線破散するのを背後に、ジェットと爆破で吹っ飛ぶ方向を捻じ曲げ、起き上がろうとするM型達に再接近!一体を踏み蹴って跳んで爆破で下に加速し別の一体をジャンプ台代わりにするルーティンを作って近寄って来た増援もろとも踵を順に落としていって全撃破!


 轟音!

 人間の平衡感覚を内部から破壊せんとする音波の広範囲暴力!

「ひゅ、ぅぅぅううう…っ!」

 自らの呼気による揺動力ようどうりょくを逆位相の波として身に纏って、俺の周囲では振幅を抑制する事で防御!魔力爆破で相手と俺との間の媒介気体を追い出し、音の伝達を更に阻害!

 二重防御で振動攻撃をやり過ごす!

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