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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十四章:じ、上等だ!纏めてかかってこいや!

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351.トロワ先輩!ツッコミ所ですよ!横から口挟んでください!お願いだから!

「……!……!!……!!!」


 う、浮いてる!

 浮いてるよ!?

 浮いてるううう!


「……ッ!………ッッッ!!」


 すっげえ!どんどん建物が小さくなる!上から見るとこんな感じの都市だったんだ!おもしろー!あ!耳が変に圧迫される!欠伸して……うおっ!なんか栓が抜けたみたいに治った!本当に欠伸すると治るんだコレ!?都市伝説だと思ってたよ!うおおおお!内臓がフワフワするぅうううう!昔乗ったジェットコースターとかに似てる!飛行機って移動手段な上にアトラクションも体験できるのかよ!コスパ最強だな!あ、雲だ!雲に入る!うっひょおおおおおお!ちゃんとした雲の中身を見れるってすっげ………あ


 興奮を出さないように力いっぱい口に押し込んでいた俺は、そこでようやく隣からのぬくい視線に気付いた。


「フフフッ、フフフフッ……!」

「あ、あのミヨちゃん。これはその、慣れなくて据わりが悪かったから、落ち着きが無かっただけって言うか、ですね……」

「ススム君?」

「な、なにかな?」

「飛行機、楽しいねー…?」

「………ハイ………」


 顔から発火するかと思った。


 やっちまったあー!

 人生初フライトに身も心も舞い上がって、アクセル全開の大はしゃぎをしてしまったー!理性は音を出さないマナーを守る方に総動員されて、さっきからのドタドタしててうるさい動きは、ほとんど頭から素通りで実行されてたあああー!!


 ミヨちゃんは完全に、我が子を見守る母親みたいな感じになってる……。ガキっぽさ全開だったしね……。でも俺にだって言い分はある!生まれて初めて空を飛んだらこうもなるでしょ!でしょ!?

 え?空くらいダンジョンの中ならいつも飛んでるだろって?そういうのとはまた別腹なの!閉塞感とか危機感とかも無くて、しかもこんなに高く!全然勝手が違うだろうが!


 とは言え、同級生女子の前で年甲斐の無さを最大照射したのも事実。

 見てる方が纏ってる空気がどんどん生温くなってる事まで含めて、本気で恥ずかしくなってきた。


 あの、満面の笑みで観察するのやめてください……。当然のように隣を陣取られてるのはこの際良いとして、もっとお手柔らかに願えませんか……?

 完成度の高い顔面から、慈しみタイプのオーラを出されると、逆に男として見られてない感じが強くなって、なんか傷つく。


 可愛い子に笑顔で見られて、普通なら嬉しい筈なのにね。これが複雑な少年ゴコロってやつ(((減点です)))

(ナンデ!?)

(((精悍さによって惹き付けるなどと、そのような挽回が今更可能であると?)))

(正論パンチやめて?)

(((それとあなたの内心に、乙女心に並ぶ程の掘り下げ甲斐はありません)))

(ひどくない?)


 俺が単純バカだって言いたいのか?

 ………い、言いたいのか?そ、そんなの、とにかくその、なんだ、そんな事ないからな!



 というわけで数km上空からこんにちは、日魅在進です。


 現在は丹本の東、世界最大の海である太蔽洋たいへいようを渡り、クリスティアまで渡航中。

 天気予報では空が情緒不安定的な事を言われてましたが、特に便には影響ありませんでした。



 何を隠そう、明胤学園代表として出場したギャンバー大会で、丹本の頂点に輝く事に成功しました。ススナーのみんなにもそれ以外にも、国内に限定せずかなりの注目度のニュースだったらしく、結構大きいニュースになりました。

 一般公開されてる映像の中で、何度も他のディーパーと戦って勝つ所を見せたから、「カミザススムは強い」という噂に、信憑性が追い着いて来たみたいです。


 そんな我々は、U18世界一の座を目指して、こうして飛行機に揺られているわけです。

 大会は毎年色んな国で開かれ、丹本はベスト8の常連なんだとか。今年も同じ成績が出せるか、そんな歴史と誇りある場に送り込むのが漏魔症で良いのか、結構問題視されたそうです。

 裏では調整に散々難儀したのだとか。


 ま、こうやって今ここに俺が居る時点で、そこらへんはなんとかなったと言う事だ。


 ただ、こちらの希望に反して、何とかならなかった事もあった。




「土産ぇ?一丁前に気ぃ遣ってんじゃねえよ。んなこと気にせず楽しんでこい。いや待て、楽しむのは楽しむとして、気を抜き過ぎるなよ?変なヤツにホイホイ付いて行かないようにしやがれ。あとスリだとか置き引きだとかに気をつけろ。貴重品と言わず荷物を手放すな。それから——」

「あなたは母親か何かなの?」

「最近のノリっち先輩、どんどん過保護になってる気がするねぃ」

「後輩冥利に尽きます!」

「カミザはなんか喜んでるし……」

「お前は人の事よりもまず自分の心配をしろ。食が細過ぎるだろうが」

「あーしは目でも楽しんでるだけだし!あんたの方がガッツき過ぎ!また太っても知らんから!」

「脳筋と比べたらオレサマは健康的な方だ!」

「ニヨニヨ……」

「ムー子はその目やめ!」


 12月も下旬、冬休み始まり立ての27日。

 トクシメンバーが集合した、クリスマスと少し早い年越しパーティーと世界大会への決起集会を兼ねた食事会。

 会場は食べ放題コースを用意しているピザメインの飲食店。


 俺は始まってからずっと、肉が多めのピザばかり頼みながら、乗研先輩の不参加を惜しんでいた。

 国内大会の頃からそうだったんだけど、運営側の人が「U18なんだから乗研竜二は年齢的に出場できない」、とか言って来やがったからだ。


「本当なら先輩にもドカーン!バキーン!って活躍して欲しかったんですけど………」

「俺は巨大化変身ヒーローか何かかよ。馬鹿言ってねえでルールには従え。間違ってもクレーム入れて捩じ込もうとすんじゃねえぞ?元々(わり)い心証が底値になっちまう」

「で、でも、トクシの仲間だって言うのに、遠征の時からこっち、先輩だけ除け者みたいで……」

「はんっ!除け者も何も、俺はそもそもこんな歳までここに居ちゃいけねえんだよ。テメエらとなんだかんだ楽しくやれてたのが幸運だったってだけだ」

「でも校内大会の時とか……」

「身内腕自慢大運動会ならともかく、未来あるガキ共の社交場に、俺みてえな腐った芋煮野郎はお呼びじゃねえって事よ。第一俺が出れるってなら、国の威信の為につええやつわざと留年させて、そいつずっと参加させるとか出来ちまうだろうが。俺が出るのは許しちゃなんねえんだよ」


 う………。

 乗研先輩の不参加について、なんでか本人が俺を説き伏せる構図になってる。

 ワガママ言ってごめんなさいの気持ち。


「それにな。俺もお前らが居ない間、ただ暇してるわけじゃねえ」

 

 先輩はレンズの向こうの目を細める。


「シャンの奴とも相談してな。絶賛受験勉強中だ」

「!!乗研先輩、進路決まったんですか!?」

「おうよ」


 それで、猛勉強・修行中ならしい。

 いつの間にか、先輩は道を見つけていた。


「今からで間に合うのかしら?」

「そう見えてもそいつ、元優等生だぜ?座学に関してはトロワ、お前より遥かに優秀だ」

「嘘でしょう!?」

「マジだ」

「そんな………嘘だと言って下さい先生!後生ですから!」

「ショックを受け過ぎだろうがよ。って言うか、テメエの筆記試験の成績が悪過ぎるだけじゃねえのか?」

「トロちゃん先輩はズバリあれですねぃ。下には下が居るって安心してたら、その最後の希望が断たれた感じですなぁ~」

「悲し過ぎますよ先輩……」

「これに懲りたら少しはオツムを鍛える事だな脳筋剣偏執狂(マニア)!」

「そうッス!“ギリ、ジョージ”ッス!」

「日々精進だ八守ィ!誰だジョージって!?」

「それッス!頭使うッス!」

「あなただけには言われたくないわよ金魚のフン!」

「あだだだだ!頭グリグリをやめるッスー!」

「こら二人共!あんまり騒ぎ過ぎない!お店の人に迷惑が掛かりますよ!」

「野生の母親がここにもいるわね……」

「野生の母親ってなんだよ」


 


 というわけで、結局メンバーは国内大会と変わらず、トクシから7人と他教室から5人、という編成になった。


 それはそれとして………


「………」

「ススム君ススム君」

「うん?どうしたのミヨちゃん」

「飽きちゃったんでしょ」


 どきり。


「あ、飽きたって、何がぁ?」

「フフ、分かるよ?私もちっちゃい頃、初めて乗った時はそうだったから。飛んで5分くらいはワクワクしてたんだけど、雲の上に出て窓の外が変わり映えしなくなったあたりで、『なーんだ』ってなっちゃったんだよねー?」

「い、いやあ、そんなそんなガキっぽいことまさか……、俺は飛行機が飛んでるメカニズムについて、興味深いなあって考えてワクワクして……ち、違う、そもそもそんなにすっごくワクワクしてたわけじゃなくて」

「うんうん、そうだねそうだねー?」


 やめて!

 そのなんでも「分かってる」風に受け止めるの!

 丸裸にされてる感じで落ち着かなさだけ増して来る!

 今ただでさえ、身動きしづらい座席の上だってのに………


「じゃあさ、退屈しのぎに、ちょっとスリルをあげようか?」

「えあ?スリル?」

 

 ミヨちゃんはそこで、影が付くような意地悪な笑顔を浮かべ、


「飛行機って、実は簡単に落ちるんだよね」


 縁起でも無さ過ぎる事を言い出した。


「お、落ちる、って……?」

 

 ビビり散らかす俺の頭を抱き寄せるようにして、耳元を小振りな口まで運ばせて、


「あむっ」

「ひょっ゛!?」


 甘嚙みする事で神経を研いでから、その中に声を入れる。


「何せ、人の目で見るには空は広過ぎるし、景色に変化が無さ過ぎるでしょ…?飛行機はとっても大きくて、分厚い壁で隔てられて、人間の感覚も役に立たなくて…。計器とかが教えてくれる、間接的な情報を見ないと、自分が何処にいるのか、傾いてないかすら、分からなくなっちゃうんだ……」


 不吉な言葉はどれも、楽しげにスキップして頭を目指し進む。

 それが鼓膜を蹴る衝撃で、内耳がビクビク振るわされている。


「計器が故障してたり、調整が間違ってたり、事前チェックを一個飛ばしちゃってたり、読み取る人がうっかり見逃したり、操作を一個間違えちゃったり、飛行機の何処かが老朽化してたり、燃料が少な過ぎたり、操縦してる人がイライラしてたり………。色んな落ち方があるんだよ……?」

「………」


 俺が硬直していると、左胸の上に彼女の手が触れて、


「あっ、ドキドキしてるね……?怖くなっちゃった……?」


 分かってるクセに、わざと質問して、俺に喋らせボロを出させようとして来る。


「こ、これは、み、ミヨちゃんが近いから……!」


 そして俺は、ボトボトとボロを垂れ流した。


「へぇー……?」


 気付いた時には、言葉は呑めない所まで出ていて、


「ススム君、私にドキドキしてくれてるんだ……?」


 逃げ場の無い閉鎖的環境もあって、俺は皿の上どころか、舌の上で吟味されてる気分に陥っていた。

 助けを求めようにも、窓際は席がちょうど2つしかなく、大きめの声を出さないと他に話し掛けられない。公共の場でそんな迷惑な事出来ないし、となるともう窮途末路きゅうとまつろ、カチカチになりながら耐えるしかなかった。


「ごめんごめん、安心して?滅多に起こらないから」

「こ、怖がって、無いけドネ……?」

「リラックスリラックス」

「みゅんっ!?」


 顎の下からこそばされて、脱出装置みたいに直上射出されそうになる。

 ペット扱いか?そんなに男として無害だと思われてる?


「どう?ほぐれた?」

「さ、最近すーぐこういうことする……」

「イヤなのかな?」

「イヤ、じゃない、けど」

「じゃ、いいよねー?」

「し、知らない…!俺はもう寝る…!」


 暇なのも不安なのも、寝てれば忘れる!

 俺が毎回思い通りの反応を返すと思ったら大間違いだ!

 

 と、一度は拗ねてフル無視を決め込もうとした俺だったが、ミヨちゃんがそれを許してくれるわけもなかった。


 その後10分くらいかけて散々遊ばれて、不健全な疲労感で目蓋が落ち始め、そこまで行って、やっと解放される。


 「寝やすいように」と頭を優しく撫でられて、


 でもそれを撥ね除けられるほどの頭が働かず、


 温かさが徐々に全身に降りて行き、


 いつの間にか夢の中だった。

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