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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十三章:まずは国内!目指せ世界一!

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349.何して来るかなんてお見通しだ!………俺の友達がな!

 甲都遠征でのill(イリーガル)騒動の際、政十に映像資料を請求された明胤学園は、そこに映った生徒達一人一人に聞取り調査を行った。実際の映像を見せて、公開されたくない部分は何処か、確認する為である。


 その際にトクシメンバー内で、どの程度隠す事を要求するかの、相談会が開かれた。

 とは言っても作戦会議などという仰々しさはなく、単に雑談の延長からの議論というだけの集いだったが、その中で乗研から提言があった。

12月の大会における天上パーティーとの衝突、それを見越しておくべきだと。


 遠征時に見せた強引さから、進に関して甲都側が執着している事は判明している。彼も当然、進本人からその話を聞いていた。

 欲しがっているのか、それとも他に獲得、排除されるのをおそれているのか、そこまでを確定させる事は出来ない。ただ、アクションがあれで終わりだというのは、少し相手を見縊り過ぎた意見だ。

 

 そして近く、彼らと政十の再会の場として相応しい場所が設けられる。

全国ギャンバーU18大会だ。


 不正までやるかは分からないが、ガチガチに対策を組んだ上で、五十妹や政十家の秘密兵器を切ってくるくらいなら、大して非現実的とは言えない予測だった。

 

 その為に彼らが欲するのは、能力等を始めとする情報である。

 そしてつい最近、本気の全力による殺し合いを戦っていた映像が、その手に入る。

 天上高校のギャンバー部にまで、そのデータが流される。それもまた、順に考えれば想像に易い流れだった。


 彼らは必ず、国内最大クラスの強敵となって、何処かで立ち塞がるだろう。

 従って、国内の強豪を薙ぎ倒し、世界大会を目指すと言うのなら、その映像から大事な部分を、上手いこと言って隠しておきたいのだ。


 彼らが使った言い訳は、「プライバシー」。

 これを理由に映像を編集し、こっそりと地味な変化や深化を、それがあった事自体を隠す。この策によって、情報供与が敵方への欺きとなり、不利と同時に有利をも得る。


 特に「深化」なんて珍しい現象が、幾ら生命の危機に瀕したからと言って、複数人に同時に来るとは、言われなければ確認すらされないだろう。

 彼らは知らない事だが、詠訵三四がカメラ破壊による深化隠しをして、それを天上パーティーに仄めかした事もまた、風向きを良いように吹かせた。

 「深化を隠したいなら、カメラまで破壊する筈だ。不自然さは残さない」、何処かでそう思わせた。


 「深級管理の為に必要」という要求文は、ディーパーや国の関係者にとって、最強クラスの効力を持つ。

ただし、「潜行者の能力詳細の保護」という理念は、特に教育機関が言うならば、対抗できるだけのカードと成る。


 もっと直接的に言おう。

 深化隠蔽が発覚した後に、甲都側が抗議して来たとして、明胤側には法的・道義的・精神的落ち度が一切発生しない。

 善人(ヅラ)でニコニコしながら、「プライバシーに配慮してると言いましたよね?」と、遠慮会釈の呵責を見せず、水に流して終わりに出来る。


 明胤学園が隠したのは、二つ。

 一つ、狩狼六実が深化し、眷属同士の融合が可能となった。

 二つ、六本木天辺の魔法における、パンダの身代わりに破壊される人形の順番、これに変化があった。


 後者に関しては、六本木自身は「逆に不便になった」と嘆いていたが、変わった事を敵に知られていない、そのアドバンテージは使い倒すつもり満々だった。


 そして天上パーティーが、思った通り、思った以上にコソコソ企んでいる様子を察し、彼らは保留状態にしていた、一つの突飛な策に走った。


 「狩狼六実をK(キング)にする」。


 敵が政十家の雨と雷を使ってくるだろう事は、皆が確信している。

 来宣と組んでノールック遠隔攻撃もして来るだろう。

 撃ち合いに強い狩狼を分厚く守るのは、向こうから見ても不自然ではない。

 更に万が一、不覚を取って雷に打たれた時、その爆発的範囲攻撃に晒されて確かに生き残るのは、六本木のパンダ人形を持っている人間。


 敵は六本木自身か、辺泥、ニークト、詠訵辺りを警戒する。

 狩狼がそれだと言うのは、ほとんど無い可能性として考えている。

 居ない筈の人間の、出来ない筈の攻撃。

 二つの予想外が彼らを惑わせ、そこに刺し切るまでの猶予を与える。

 

 その効果を期待して、如何にも「六本木と詠訵を入れ替えます」という布陣を見せてから、詠訵と狩狼のロールを入れ替えた。


 結論、思惑の殆どは大当たりした。

 

 六本木がQ(クイーン)として、自陣中程に一人孤独に置いて行かれるのがネックだったが、開始と同時に全力で後退、本人のビーコン能力も駆使して、詠訵と狩狼の二人と合流する事で解決。

 この時最前線は、敵を寄らせないように散発的な攻撃のみで、お茶をゴリゴリに濁していた。

 敵の位置関係等を見れる雨が降り、より詳細なレーダーである川が出来るまで、それなりの時間が掛かった事も、彼らの計略成功を後押しした。


 試合開始時、ゆっくりと戦闘を展開したいという点で、明胤パーティーと天上パーティーは、奇しくも息がぴったり合っていたのだ。

 静か過ぎる序盤戦は、二チームの協力の元に成立したものだった。

 

 勿論、明胤パーティーにとっても、思ってもいなかった事が多々あった。


 どこかの色ボケがペラペラ自分の能力の弱点まで喋ったり、極辷というイレギュラー過ぎる能力の使い手が投入されたり、来宣の水中振動操作が思ってもみないほどに高度であったり、進を除く5人が一度に雷の直撃を喰らい半壊したり、寿が進の魔力を聴覚で追えたり。


 狩狼を守ったのは六本木の能力。

 六本木を守ったのは、ニークトと詠訵のリボン4本による全力の防護。狩狼を守るパンダ人形の方が先に消滅する、その危険をゼロにする事を意図した処置だった。


 そこから先は、知っての通りだ。


 天上パーティーは六本木の生存を確信しつつ、最後の一人については見当違いな分析しか持っていなかった。

 雷を避けつつ空を跳び渡れる進が先行し、狩狼は六本木を護衛しつつ確実に(キング)を仕留められる機を窺う。


 その内に雨が上がり、Kポジションが来宣の方であると99%定まり、狩狼の攻撃に早期対応出来る人間が居なくなった。

 カミザススムという難敵を退け、天上視点で勝ちまで手が伸びる直前。

 

 その弛緩こそが、狩狼にとって格好の獲物。


 三合体猟犬“グレマフブー”(狩狼命名)を来宣に刺し、咥えていた六本木のタヌキ人形を相手に身に着けさせ、敵変身魔法に巻き込ませて内部から魔力を発信させ、再度攻撃。息もつかせぬ三発目でとどめを刺した。




『以上が、今回の敗戦の概略です』

 



 千早姿の従者にタブレットを持たせ、伝馬からのビデオ通話を、御簾越しに聞き終えた五十嵐。

 その表情は、常と同じく推し量れない。

 

「了解したよ。ありがとうね。天万君にも伝えておいてくれ、『ナイストライ』って」

『畏まりました』


 伝馬は少々の沈黙の後、


『申し訳ございません』


 深々と頭を下げる。


『今回の失態に関しましては、監督役である私に全面的な非があります。敵が何者であるか、それを見誤りました。仲間内で伝染していた視野狭窄に、私が気付くべきでした』


 「処分はこの私に、なんなりと」、

 生徒が居ないところだと、いつも素直な彼女の態度を、少し面白く感じた事で、五十嵐の声に表情が乗る。


『良いさ。相手を甘く見たのは、僕も同じだ。カミザススムという成り駒(伸びしろ)を前に、すっかりのぼせ上がってしまったよ。将来有望な若者達の姿が、目に入っていなかった。注目アグロを取られて誤手プレミ。初歩的な躓きに恥じ入るばかりだ』


 「甘く見た」、それが全てだろう。


 カミザススムさえ倒せば、ルカイオスさえ退場させれば、候補生とは言え“十影”は負けないと、何処かで決め付けていた。

 天上パーティーメンバーだって、他の生徒に無警戒だったつもりはないだろう。

 ただ、「カミザススム」という不可視光を、目を凝らして見ようとして、他が見えなくなっていた。


 「粒揃い」、その一言で片づけて良い勢力ではなかった。

 明胤学園きっての精鋭で、育成しているのは元チャンピオン、かつて“最前最高フロントライン”と言われた、あのパンチャ・シャンだ。

 

 「例年より強い」、「当たりの世代」、その程度では足りなかった。

 試合に出て来る6人、登録されている12人全員が、カミザススムと同程度の壁だと、そう見ておくべきだったのだ。


「子ども同士の戦いに大人が目くじらを立てるのもダサいし、自分も子どもに騙された上でそんな事するのは、更に信じられないくらいみっともないからね」


 ミスをしたのは、五十嵐も同じだ。

 けじめは、両者にとってのバランスが重視される。


「この後もちょっと働いて貰う事になったし、それを以て処分に替えようと思ってる」


 「安心してくれ」、五十嵐は優しげな調子で言った。

 「寛大なご配慮、感謝致します」、伝馬の頭の低さは、それでも変わらぬままだ。




 実際の所、まだ完全な投了には早かった。

 「戦いを起こさない」、それを成し損ねただけだ。

 楽は出来なくなったものの、その勝敗は今からの動きで決まる。


 それでは戦に備える者が、まずやる事は?


「それじゃあ、今はこれで。この後フレンドとの通話ボイチャの予定があるんだ。その後に掛け直すよ」


 味方を呼び寄せ、自軍を増強する事である。

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