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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十三章:まずは国内!目指せ世界一!

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335.どうも、「時の人」です

「まず自分らに頼みたいんは、明胤さんトコと当たるであろう準々決勝まで、ワシ抜きで勝ち進んで欲しい、言う事や」


 12月に入った。

 47都道県の代表が集い、一番を決めるトーナメント大会。

 全国ギャンバーU18が開幕した。


 いつも通り、打ち合わせ室と化した第一視聴覚室に集合したメンバー達を前に、政十はまず大会の勝ち進み方針について説明していた。


「対明胤パーティーは、当初の予定通り“六福りっぷくシフト”で行こ思う。ワシ、志摩子、極辷君、水鏡君、寿君、此云慈君の6人や。その内ワシと、此云慈君と極辷君。まだ公に魔法行使の瞬間を公開していないこの3人は、本命まで出来る限り温存しときたい。

 ワシが使う政十の継承魔法については、ある程度情報が出回っとるやろうが、その中のどの切り口の能力を、どの程度の強さで使えるんか、それを隠せるんはドデカいメリットや」

「一つ良いか…?」


 挙手したのは極辷。


「能力の詳細が広く知られていないのは、来宣も同じ筈だ…。万全を期すなら、こいつも出さずに明胤戦まで辿り着くべきだ」

「全面同意」

「確かに来宣先輩の能力は、作戦のかなめになりますからね。見られれば見られる程、成功率が低まってしまいます」


 勝ち残りがより困難になるが、やってやれない事はない。

 自分達を信じて任せて欲しい、彼らの瞳がそう弁を振るっているのを承知の上で、


「いや、そうやない、逆や」


 日和見などでなく、何処までも勝利に貪欲なままだと、政十はそう示す。


「志摩子にはじゃんじゃん前に出て貰うわ。一部の能力はオフレコのままで、やけども一番目立たせるんや」


 それは、賭けの分を良くする一工夫。


「理由を聞こう…」

「明胤さんトコはシャレにならんのが多過ぎる。全部の対策するには時間が足りん。やから、山ぁ張って対策を絞らせたやろ?」

「肯定」

「やったら、当然ワシらが狙ってた相手さんに出て来て貰うんが、いっちゃんオイシイわけや」

「……ああぁ~、そういうことですかぁ~…」


 こちらが多彩な手札を匂わせて、相手がそれに対抗して、それを全パターン網羅した上で、その中から一つを言い当てると言うのは、流石に気が遠くなってしまう。


 が、天上パーティーの選択肢が、ある程度狭いと向こうに知らせたらどうか?

 当然、その戦術に対応しやすいメンバーを選んで来る。

 範囲が制限された編成を、狙い撃った人選。

 つまり、そちらもまたピンポイントに、予想が容易になってしまう。


「来宣先輩なら、頭一つ抜けてる分、釣り餌として申し分ない、って事ですねぇ~?」

「良いよ良いよ、どんどん良くなるね。見違えた」

「ムッカムカぁ~~~~!!」

「少なくとも辺泥は釣れるだろうゼ。来宣はそれだけ相手方にとって脅威だ」

「強力な駒を揃えるなら、カミザススム、詠訵、ルカイオス、そして辺泥…。これで残り2枠…」


 更に向こうの通信手段兼ブレインとして、六本木も外せないと思われる。

 残り一人。


「バランス的に、遠距離を埋めようとするでしょうからぁ~、登録されてる中だとぉ~……」

「『くれぷすきゅ~る』名義が詠訵三四である事は確定している……。よってそれも消去法から外していい…」

「とすると、狩狼家の長男……長男……?まあいっか、長男と、亢宿の御曹司、って所ね」

「丁都大会やと色々試しとったみたいやけど……ま、あちらさんも、ワシらの事を警戒しとる筈や。とすれば、変に冒険する事はせんやろ」

「辺泥以外は特別指導クラスメンバーって考えりゃあ、まあ残り一人は手堅く息を合わせやすい、慣れた相手を指名するだろうゼ」

「必然必定、狩狼六実(むつざね)


 だから政十は、その6人への対抗策を、入念に張らせたのだ。

 

「勿論、ある程度予習はして貰う。やけども、この6人をぶつけられる想定で行く。ぶっちゃけギャンブルや。ようけ祈っとけ」

「現実的な話をするなら、そうならざるを得ないわね」

「だから来宣先輩に、活躍させるわけですねぇ~」

「その条件で考えるなら、目下の脅威は3回戦で当たるであろう、壌弌の庭たる乙都おつと将平まさだいら教育学校……。それ以外には、容易に勝利出来るだろう……」

「油断は禁物ですが、気負う必要はあまりなさそうです」

 

 御三家が育てた教育機関、その看板は伊達ではない。

 彼らには本来、国内に敵らしい敵はほぼいない。


 他の御三家が並ぶくらい、という構図になるのは当然だった。

 壌弌と明胤が潰し合わなかった事は不運だったが、その程度に勝てない人間が遂行できる任務ではない。

 

「まずは将平に勝利、志摩子は能力の有用性を見せつつ大事な所は隠す、準々決勝までにローテを仕上げる。以上や。何か質問は?」


 見渡した所、特に異論は無いようだった。


「よっしゃ!そいじゃあ、まずは腹ごしらえや!ワシの奢りやから存分に……っておーい?」


 両手を打ち付ける音と共に、全員が山盛りのたこ焼きやお好み焼きに群がっていた。

 

「ハフッ…!過熱ッ…!フーッ…!フーッ…!フーッ…!……美味……!」

「冷める前に喰わねば…!」

「ちょっと!おバカちゃん取り過ぎ!」

「ムカぁ~!私の前にご馳走置いとくのが悪いですよぉ~!」

「喉に詰まらせんなよー?ゆっくり食えー?」

「先生、そう言いながら抜け駆けはやめてください。一度に食べられない分を盛り付けるのはマナー違反です」


もう誰にも話を聞く気が無い事を悟り、政十は頬をひくつかせながら溜息一つ、肩を怒らせながら争奪戦に参加したのだった。


決起集会は終わり、今日中に宿に移動する。

 後は、明日の刀庫かたくら県で開かれる大会本番、そこで万全のパフォーマンスを発揮するだけだ。

 






 12月11日、水曜日。

 刀庫県、枝申ししん大運動場、第3模擬戦闘用ホールにて。

 全国ギャンバーU18大会の第三回戦が進行中であった。


 対戦カードは、甲都の天上高校と乙都の将平高校。

 優勝候補である2高の激突ともあって関心も高く、会場が満席になるのは勿論、中継の視聴率も本年度最高水準に達していた。


 しかしその試合内容は、予想を裏切り両者の優劣明暗を、はっきり画すものとなった。


 政十家出身者という大本命の温存。将平側にとって、二軍をぶつけられるような屈辱。しかし試合が始まって見ると、それは決して根拠無き増長ではなかったと分かった。

 

 下町風のフィールドに魔法で人工河川を作り、それに囚われた相手の位置を正確に把握、水鏡三上の眷属の召喚にも利用と、制圧力に素人目でも分かる程の差があったのだ。

 

 地上は一挙手一投足に到るまで支配され、ならばと高所へ逃げ込もうとしても、寿小染に制空権を握られている。


 派手な魔法が乱舞する戦いに見えて、有効打は常に天上高校からだった。


 ただ、幾ら岡目八目と言えど、非ディーパーの観客には、レベルの低いディーパーでさえ、分かっていない事がある。

 全国大会出場メンバー達なら、見抜けるくらいの戦術的価値。

 


 来宣志摩子。

 来宣家長女にして、あの政十への嫁入りが内定している少女。

 


 水辺も水中も、彼女の体内に等しい。

 位置関係を暴き、水に触れた仲間達全員に共有。

 その上本人からも、魔法による遠距離攻撃が飛んで来る。

 

 観測手スポッターであり通信手オペレーターであり狙撃手スナイパーであり指揮官コマンダーであり。

 

 甲都大会の際には姿を見せなかった彼女が、パーティーの中心的存在である事は疑いようもなく、強い衝撃と共にその名と能力を記憶された。

 

 こんな3年生、今までどこに隠していたのか。

 音楽の一部界隈で名が知れているだけで、ディーパーとして無名なのは不自然極まりない。

 ランク5など、戦力詳解するまでもなく不当な低評価。


 全国大会が始まった当初から、ライバル校や企業・大学のスカウトマン達は、突然現れた才に惑い乱れ、各所に電話を掛け回り、方々に足を使って駆け回る事になる。


 見る目のある人間達は、誰もが確信した。

 登竜門と認識するような強敵相手であれば、天上高校は必ず彼女を投入する。

 

 大本命のメンバー。

 

 そしてその相手と目されている中の一つ、今大会の目玉と言えるパーティー。


 天上高校の快勝をして、注目度「最高」ではなく「最高水準」に留めた原因。

 

 ここ10年程で異様なほど“天才”が発掘される、潜行界のゴールドラッシュ世代の中にあって、信じられないような圧勝を続けるもう一校。

 

 そこはディーパーの名門だった。

 だがそのメンバーは、異常値と異端の混成。

 

 ランク8が2名。

 うち1名は、あのルカイオスの系譜。

 国内有数の人気潜行配信者が2名。

 うち1名は、あの漏魔症罹患者。

 それ以外もビッグネームの数々、かと思いきやよく知らない名前も挟まる。


 その実力は、もう論じる必要が無いくらい、丹本国内に鳴り響いていた。


 天上高校は今や、「下剋上」を期待されている側。


 彼らの負け姿は、想像の中ですら捏造し難い。



 

 丁都代表、明胤学園パーティー。

 



「聞いてた通り、芸能、特に音楽系の神様ネ」


 彼らの側でもまた、天上高校を大敵として睨んでいた。

 

「あたしの魔法と似てるワ。水の中の振動、波、そういう物を操る、って感じ」

「レーダーとして使う事も、無線として使う事もできる、って言うのは、そういう事ですか……」

「なかなか倒し甲斐がありそうだ!なあ!そう思わないかトロワさん?」

「そうかしら?コトブキとかいう人と二人きりならそそられるけれど、それ以外は真っ向挑むのを避けてるみたいで、気に入らないわね」

「他はともかくとして、政十天万を隠されたのは中々に痛い……」

「ニっくんの言う通りよぉ「おい!それはオレサマの事か!?」それ以外にも、まだ顔見せが済んでない、極辷って3年生も怖いわぁ」

「相手が水の振動を使うなら、相殺出来るベッチ先輩を使うのは確定で良いですよねぃ?」

「それがあたしの事なら、そうネ」

「索敵の対抗は日魅在!通信の対抗は六本木!これでよかろうよ!ワガハイが入水じゅすいなどしたら半秒で沈んでしまうわ!」

「イェア。このデカブツは水気厳禁だ。錆びちまう」

「そうですね。政十さんの能力も考えると、私は居た方が良いと思いますし、残りのメンバーと配置は「ヨミチさんヨミチさん。ちょっとッス」うん?八守君どうしたの?………あれ?ろくちゃん?」


 小さき従者の声によって、浮かない顔をして一人の世界に溺れた彼女に、一同は漸く気付く事が出来た。


「ちょー……?ろくピー……?」

「……あっ、ごめんムー子……!」

「よきー……?つらぽよー……?」

「じゃないじゃない。ただその……」

「何か気付いたのか?」

「気付き、ってか何も分からん、って感じなんけどさ」

 

 サイドテールを斜めにぶら下げ、彼女は言う。


「そのクリノブっての、ちょいピカピカ過ぎくない?」

「……あー………、それ言っちゃうノ?」

「ピカ……?目立ってるって事?でもそれって天上高校のレベルが高いからじゃあ……?」

「いやそうなんよ。それはそうけどさ」


「言いたい事は分かる。明らかに伏せ札を温め続けている奴らが、来宣に関してのみ禁を解いたという所に、引っ掛かっているんだろ?」


「それって、将平が強そうだったから出した、とかじゃないんスか?」

「それにしては、妙に余裕を持って対処してた感じだよね。しかも、全国大会では毎回使ってるんだよ?」

「んでしかも、出してんのがパーティーの軸になるっぽいメン(メンバー)だし。あれが透けるだけで、作戦ガン見えになんの、ビビったやり方の割に行動がイミフってか………キモいー……!なんかモヤるー……!」


「考え過ぎじゃないの?そんな事ばっかりクヨクヨくよくよ、よく神経が持つものだわ」

「全くだな!ワッハッハッハ!」

「脳筋組は少し黙れ!」


 何かを誘っているのかもしれない。

 しかし来宣を使われた時、こちらの布陣に解決札が無いと言うのも、結局余計に不利に落ちるだけ。

 あれを見せられた時点で、持って行く編成はほぼ決められる。


 それを誘っている?

 だが初見殺しを捨てるというデメリットまで享受して、そこまでするのか?

 彼らが出ても対処できる、そんな具体的な勝算があるのか?


「………みんな、聞いてくんない?」


 選択は決まっている。

 なら彼女が考えるべきは、その先だ。


 1か0かで1を取った。

 ならばその1に0.1でも0.2でも、加算して補強していくしかない。


「あーし、()()について考えてるんけど、みんなは?感覚的によさげ?」

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