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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十三章:まずは国内!目指せ世界一!

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328:とうとう対策会議が開かれるまでになっちゃった……

「日魅在君トコの明胤パーティーが、地区予選一位通過や。ま、順当な結果やね」


 天上高校の第一視聴覚室。

 室内に居るのは檀上の1名と、席に掛けた11名、離れた所から立って見守る1名、計13名。

 ブラインドが下ろされ電灯の輝度も落とされたそこで、巨大スクリーンに星取表が投影されている。


 「特別指導教室」の内、U18に参加資格がある7名。そこに明胤学園内の他教室から5名が補充された、“明胤パーティー”。

 それが今月、11月に行われた丁都第1区での総当たり戦において、全戦無敗の圧倒的な成績で全国大会に駒を進めたと、そこから容易に読み取る事が出来る。


 来たる12月の全国高校生以下ギャンバー大会。

 そこに参加するパーティーの中でも、大本命の一つに名を連ねる事は、最早疑いようが無い。


「日魅在君が強いだけならまだええんや。いやホンマはあかんけど、まだええ」

「それよりも、都大会では一人の脱落者すら出てない、パーティー全体のレベルが高いっていうのが、良くないわよね?」

「そう!それがアホほどめんどい事実や!明胤トコが粒ぞろいなのは知っとる。知っとるが、3年生メンバーゼロ人で、ようけやり過ぎとちゃいまっか?勘弁して欲しいわあ」


「漏魔症が、丹本代表に王手とは……、何がどうなっているやら分からん……」

「良いじゃないですか。彼らが揃って強いと言う事は、丹本の潜行者の水準は、これからも高いままだという事を意味しますから」

「ええわけあるかいな!ワシら五十嵐さんに『しっかりやらせて貰います』って言い切っとるんやぞ!ボコスカにタコられて世界大会に素通ししてみい!大目玉やで!」

「知りませぇ~ん!約束したのは私達じゃなくて政十さんでぇ~す!責任は一人で取ってくださぁ~い!」

「この…っ!小生意気でアホンダラな中坊…っ!」

「自業自得故、甘受すし」


 政十天万の仕切りの下で、男女が銘々勝手な事を言っていた。

 腹の立つ連中だが、腕は確かで、こう見えて責任感もある。

 特に、五十嵐衙からの依頼となれば、軽んじるような者達ではない。


「いひぃ~!いひひひぃ~!キレぇ~な顔がショボくれてるの、面白ぉ~!」

「あらまあ、そのように、笑ってはいけませんよ…っ!彼だって、重責を立派に…ふす…っ!、務めているのですから…っ!ふすふすふす……っ!」


 ………きっと、恐らく、その筈である。

 もしかして、自分には人徳やら人望やらが無いのでは?

 少し不安になる政十だった。

 あと一緒になって生徒を嘲笑っている教師の屑は、実家の力で減給してやろうかと、割と本気で検討していた。


「おほん、まあええ。仕切り直しや。後1ヶ月でワシらはこの、シャチも真っ青な頂点(丹本環境)捕食者(トップティア)をノす為の作戦を作らないかん」

「質問でぇ~す」


 手を上げたのは天上附属中学校の3年、ランク4の此云慈しうんじちぎり

 毛先がハネた茶髪の下で、真んまるな目と口を開け、手ずから作ったクッキーを頬張る、元気なモチモチ体型女子だ。

 

「オトナの皆さんは何してんですかぁ~?」

「ええ質問や。答えはなんと、『何も出来ん』」

「はいぃ~?言い訳ぇ~?」

「なんだとコラ。大人を舐めてっと痛い目見せんゼ?クソガキ」

「煽り耐性低過ぎるでしょダメ教師………」


「これがしゃーない事情があんねん。今世代の明胤パーティーがいつにも増して異常値なんは、外から見ても明らかや」

「それを誰よりも分かってるのは、当の明胤学園そのもの。そしてあいつらは、甲都遠征で案の定テンマの実家が手を出して来たのを知ってるし、漏魔症の活躍が良く思われてないって事だって百も承知。ここから分かる事は?」

「………オトナは警戒されてるって事ですかぁ~?」

「正解。やれば出来るじゃない、オバカちゃん」

「ムっっっカぁ~!」

「いい気味だゼ」


 補足説明ついでに煽りを入れたのは、天上高校3年、カチューシャで灰色の髪の前を上げ、あらわな額と長くぶら下げたもみあげが特徴的な、小さな眼鏡を掛けた刺々しい釣り目の女子。

ランク5、来宣くりのぶ志摩子しまこ


 やり込められた此云慈を見て喜ぶアレな大人は、彼らを束ねる天上高校ギャンバー部顧問。赤いジャージの前を開き、日焼けした豊満な胸を見せつけ、髪は頭の後ろで豪快に一本で纏めた、粗雑さと野性味と八重歯が突出した女性。グランドマスター、伝馬でんば紗衣さえ


「明胤以外が一致団結出来るのならいいけど、どうせそうじゃないんでしょ?」

「せやな。先生方はこれまで通り、ワシらの強化と情報収集に全面協力してくれとる。が、間接的なモンでしまいや。見えん所での攻撃やら不正やらは、一切使えんと思うとった方がええ」

「承知。元依もとより正面衝突を想定。不足無し」

 

 発言の漢字密度が高いのは、高校2年のランク6、水鏡みかがみ三上みかみ

 鯛のように赤いタオルを頭に巻いた、丸太のような手足を持つ男だが、背丈は全国平均より低めだ。


「『情報収集』、と言えば聞こえは良いが…、大会結果を見て、右往左往しているに過ぎん……」


 冷たく突き放すのは、高校3年、ランク6の極辷きすべ猩星じょう

 服の上から見る分には細く長身。ウェーブした赤茶のロングヘア、通った鼻筋に小さな口と、初対面で外国人に間違われる事も多い男である。


「彼らに、具体的に報告出来る成果が、果たしてあるのか…?」

「それなんやがな?………」

「………」

「………」

「………?」


「あるんやこれが」

「何で溜めたのよ」

「先生の事疑った奴は廊下な?」

「この場の全員が出て行く事になるけど?」


 順繰りにバッサリ切り捨てていく来宣に構わず、政十はスクリーン上に別のウィンドウを開く。

 真っ黒な背景の中、古い丹本の街中のような場所で、戦闘している十数名。


「これは……」

「せや。甲都遠征の時の、イリーガル事象発生時の映像や」

「マジですかぁ~?」

「よく向こうが提供に同意したわね?」

「無論、生徒の能力の詳細やら、生死の境に追い詰められとった極限状態を見られる事による心理的瑕疵(かし)やら、センシティブな問題になるとか()()()()言うて、独占しようとしとったわ」


「けどま、こっちもこっちで大事な大事な深級貸し出してっからな。管理責任もあるし。問題が起こっても知らんふり、とはいかねえ。って事を五十嵐さんや政十と一緒にゴネにゴネて、一度丁都まで抱え込まれてたこいつらを、どうにか吐き出させるに至ったってわけだゼ。もっと崇めろ」

「その時のみっともないテンマ先輩、是非とも見せて欲しかったですね、ふすす…っ!」


 今日も平常運転な黒さを発しているのは、天上高校1年のランク7、寿ことぶき小染こそめ

 艶やかな黒髪ロングに、水平に切り揃えられたぱっつん前髪、手で口を隠しながら笑う仕草と言い、見た目だけなら古式ゆかしい大和撫子そのものである。

 命を持った雛人形とも評されるが、その本性を知っている人間からは、ホラー映画で動くタイプの呪物扱いされることもしばしば。

 

「今年の明胤パーティーには、何故か3年生が所属してなかったわね?しかも追加分はほとんど八志教室」

「で、イリーガルに遭ったのも、特指教室と八志教室でしたからぁ~……、それを見れば、明胤パーティーが大体どんな感じか分かるって事じゃないですかぁ~?」

「正解。良く出来ました。やるじゃん」

「ムカムカぁ~~~ッ!」


「ワクワクします…!D型を倒した直後に、A型に襲われ命の危機!まだすぐには負けでなく、けれど助かる見込みも無い。そんな時に人は、どんな顔で戦うんでしょうか……?ふすすすす……!」

「例の漏魔症の子、Z(ゼロ)型ともやり合ったんでしょ?」

「見れるのか、あの理不尽の塊の攻略法が……!」

「俄然興味湧出(ゆうしゅつ)

「あー、盛り上がっとる所で悪いんやが、」

 11人が貴重な映像見たさにそれぞれ沸き立つのを、政十は申し訳なさそうに制した。

「日魅在君と詠訵君のガバカメは見るも無残な状態や。そっちの映像記録は回収不可って事で」


 室内の熱気が一気に引いて行くのを感じ、彼らの興味関心の分かり易さに苦笑しながら、しかし残った映像にも見るべき価値があると、彼はそう力説する。


「ワシが見といて欲しいんは、鬼気迫るリアリティショーやモンスターの方やのうて」


「敵方における第二の脅威、奴の深化後の能力について、か……」


 極辷の言う通り、それは降って湧いた大問題なのだ。

 丁都大会の中では、その札は切られなかった。

 学園内の大会では使用されたらしいが、伝聞以上のデータが用意されていない。


 にも拘わらず、その男の深化がどうして知れ渡っているのか?

 それには彼の特殊な出自が関係している。

 細部を省いて大雑把に言えば、彼が凡百であると困る大貴族が、何かある度に即座に成果を喧伝するのだ。


「明胤学園の在校生の中で、ランク8は一人だけやった。が、君らも知っての通り、先日あの教室メンバーのDRがちょこちょこ上がっとった時に、リストに名前がもう一つ加わったわけや」


 ニークト=悟迅・ルカイオス。

 エイルビオン最強にして、世界有数の名家ルカイオス、その三男。

 一向に芽が出ぬ一族の落ちこぼれとされていたのが、何故かこのタイミングで深化を果たした。


「こっちの大将は、この前やっとランク6だっていうのにぃ~」

「うっさいわ!」


 彼らが警戒する対象は、カミザススムだけではない。


 今世代の明胤パーティーの完成度は、10年に1度、100年に1度と言えるまでに出来上がっていた。

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