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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十三章:まずは国内!目指せ世界一!

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327:こちとら現在割と無敵じゃい!

 2061年度、明胤学園校内U(アンダー)18ギャンバートーナメント。

 学校対抗の国内大会に送り出すメンバーを決める為、学園内最強パーティーを定める決勝戦。


 共に予選の総当たりブロックで無敗を誇る、八志教室と特別指導教室。

 彼らのプライドを賭けたぶつかり合い。


 アリーナ内に再現されたのは、岩山の途上のような地形。

 遮蔽物は多いが、ちょっとした衝撃ですぐに崩れて、安全地帯を変化させる。

 酸素が若干薄く、気温も低いといった、諸条件も忠実。

 見ている側には、過酷な環境にも思えた。


 そこに各員が配置につく。


 カウントの後、試合開始のブザー。

 

 まずは互いに、味方との合流、それから陣形の構築。


 と、思われた矢先の事だった。


 岩山の一つが爆裂。

 その陰に居た雲日根を目掛けてピンクの鋭角三角形が撃たれる。

 液状化の為の完全詠唱は間に合わないと判断した彼女は回避を選択。

 右腕に切り傷を入れられながら辛くも直撃を免れ、着地点で転がりながら伏せ姿勢に移行。そこで完全詠唱によって、肉体を変化させる。


 そこに響く狼の一声。

 更に天をく竜胆色の剣身。

 直後続けざまに別々の場所で爆発が起き、積まれた石が蹴散らされる。


 シエラとテニスンのポジションが露出。

 シエラに三角形が、テニスンには連続爆風での追撃が迫る。

 両者簡易詠唱。

 シエラは両手で抜いた武器に小さな海を纏わせ、テニスンは水色の障壁を張りながら後退。



 カミザススムが正面近くに居るのは分かっていたが、ニークトがR(ルーク)となっている事に少しだけ意外性を感じる。

 宣言編成オープンロールでの彼の位置はK(キング)だった。それに対してRポジションに置かれていたのは、六本木。

 ロールの不似合いさについては、説明が可能。いつぞやと同じく、最前線の進が彼女と最速合流する、その流れを作りたいので、彼に近い前目に置かれた。そう考えられた。

 

 だがニークトが第一線まで来て、自動的に六本木のK(キング)が確定した事で、読みは崩れ去る。

 更にQ(クイーン)に配置された詠訵三四の存在。

 そして開始数秒でのこの弾幕の張り切りようもあわせれば、答えは片隅で考えていたもう一つ。


 彼ら八志教室がやるのと同じ、Kポジションを前線まで持って来る、機動型陣形。

 アタッカーとディフェンダーに分かれるのでなく、全員参加の攻撃を仕掛けて来ている!


 恐らくB(ビショップ)の狩狼だけに遊撃させ、六本木を詠訵が移送しながら前進、最前線で5人合流を果たし、火力集中に移行する手筈。


 その間に自陣側を少しでも有利にする為、八志教室側の遮蔽物を即行で破壊して回った。特に、裏に人が隠れている物を優先的に。


 味方の配置を見れば、対称位置に敵が居る。

 ニークトとトロワがわざわざ目立つように魔法を発動したのもその為だ。


 そして今陣営の奥では、辺泥が虎次郎と和邇を回収し連れてきているのと同じように、詠訵が六本木を護送しているに違いない。


 

 シエラと雲日根の完全詠唱。

 広い海を生んで雲日根の能力に制御を渡し、壁兼整地用ブルドーザーとして敵陣を目掛け押し進める。

 辺泥の波が無いので速度は遅く、魔力爆破と押し合って止められるくらいのパワーしか持たせられない。

 何発か海水の塊が飛ばされるが、それは伸長した剣で払われた。


 和邇さえ来れば、地形の不利をある程度是正出来る。

 そのまま本隊合流までの拮抗が続く、かに思われたが、

 

 限定された弾除け地帯を狼2匹が急襲。

 テニスンが障壁を1閃2閃。

 1匹につき1秒と掛からず処理。だがそちらを向いて対処するのが、彼の方だと予想されていた。

 反対側に突如小柄な少年が、進が飛び込んで来て、瞬間、シエラとテニスンの間で爆発が起こり、敵味方互いに歩み寄る形に。

 間合いがほぼゼロにされる。


 シエラは自身の顎を左手の手斧でガード。

 二重の衝撃。

 一撃目で押し込まれ、二撃目で斧越しに頭を殴られる。

 武器は砕かれた。

 が、二度目のインパクト時に頭を後ろに逸らした事もあり、衝撃はギリギリ逃せた。

 右手のカトラスでカウンターを入れようとして、

 左肩が引けない。

 彼女から見て、右腕の陰になっている場所。そこにケーブルが伸びていた。それを掴んで殴り、着弾直前で手放して、彼女の肩に巻き付かせたのだ。


 進が右腰を引きながら巻き取り機構を作動させる。

 二人の位置が入れ替わり、シエラが平坦な場所へ無防備で放られる。

 背後から降り抜かれた防壁をその場で屈んで回避する進。

 戻ってそれを挟み撃ちにしようとしたシエラの前に、四角い耳を持った眷属が回り込む。


 手斧でガードしながら簡易詠唱。

 肉体の一部を海水が守る。

 それを突き破りボディースーツに到達する鋭角三角形。

 そこまで伸びて即座に侵入する剣先。

 胴周りを一巻きにしてから、刃が引かれる。

 判定上は、上半身と下半身の別離。

 首輪が赤点滅になる。

 

 雲日根とテニスンは退却を試みたが、進一人が自陣の奥への方向に立ち塞がり、逃れる事を許さない。

 その更に後ろから石の大矢が飛ぶ。和邇のコピー&ペーストで作られた攻撃。

 テニスンと雲日根の足下で地面が大きく波打ち、それを利用して二人は跳躍。進の上を越えようとする。

 辺泥が間に合ったのだ。


 ボウガンで攻撃した和邇は自身の位置を知らせる事になり、慌てて位置を変えたその背後に、ピンクの三角が飛んで来る。

 簡易的な壁を作って移動先を分からなくした上で、虎次郎に自分の能力の生成物を投げさせて、空中に放られた二人にも防御を回す。

 

 強力な魔力の気配。

 

 急拵きゅうごしらえの壁を突き破って赤金の風が吹く。

 

 大狼が、和邇の背後に出現した。

 強化された視力を以てしても、「出現」としか言いようが無かった。


 鋭い嗅覚で和邇の位置を掴んだ彼は、ここまで飛んで来た勢いそのまま右腕を振り下ろす。

 咄嗟に能力でボウガンを増やし盾を作る事でガード。

 それでも半分近いポイントを減らされる。

 辺泥が潮吹きカッターを噴射するも風と共に去る狼。

 防壁の補修作業に移ろうとした和邇から、ベージュの波長が広く発される。


 彼はさっき攻撃を受けた胸を見た。

 タヌキ人形が取り付いていた。


 グレイハウンドが壁を貫通して命中。

 損傷部から進が滑り入って彼の膝を破壊、よろけて下がった頭を蹴り上げ、その動きでバク宙に繋げ、キリモミ回転をしながら自陣方向に帰っていく。


 また一人脱落。


 雲日根とテニスンが着地。

 雲日根は辺泥の体に入り戦闘能力を向上させ、二人は赤金の風と打ち合う。

 テニスンは完全詠唱で鋼の体に変化した巨漢の肩の上に乗り、K(キング)である彼への攻撃を防御。


 虎次郎はその辺りの地面から岩を削り出し、一回転してから敵へ投擲。

 とにかくまずは敵の位置を見つけなければ反撃のしようが無い為、相手陣地を更地にする作戦である。


 が、その必要は無くなった。

 

 彼らは自ずから姿を現した。


 Q(クイーン)である詠訵と、そのリボンに繋がれた六本木、トロワ、進の計4名。


 Kポジションの六本木を晒したのは、防御への自信の表れか、彼女本体の回避能力に託すより安全だからか。


 ニークトの魔法はエネルギー消費が激しいと聞く。

 そちらの完全詠唱が解ければ、雲日根によってバフ状態になっている辺泥が、こちらの戦闘に参加できる。

 それまで耐えればほぼ互角に戻る。


 虎次郎は脚に弾性を持たせ、力を溜めてから、解放。

 地を鳴らし、土をならすタックル。

 跳んで逃げた敵を、テニスンが防壁で切断しに掛かる。

 リボンと削り合い、削り勝つも、トロワの剣との打ち合いに。

 巨人が岩を握り砕いて、滞空散弾砲として投げつける。

 リボン、剣、魔力爆発、ベージュの盾で、ギリギリ防げるくらいの激しさ。


 二つの超攻撃力によって、4対2であっても互角以上に。


 が、特指教室にはもう一人居る。


 テニスンは右手で攻撃しつつ、左手でもう一つ防御壁を展開。

 グレイハウンドを防ぐ。

 予備として空けられていた手が、全て使われる。

 虎次郎は目を見張った。

 さっきまでリボンに掴まれていた進が、何処にも居ない。

 

 背後から魔力爆発。

 

 テニスンが肩の上から吹き落とされる。

 助けようとした虎次郎の両腕両脚が拘束される。

 絡まった何かを引き千切ろうとするも、叶わない。

 それはトロワの剣身に、詠訵のリボン2本が巻き付いた物だ。

 少なくとも数秒は彼を止められる。


 テニスンは左手で遠距離からの攻撃を防ぎつつ、右手の斬撃で進に牽制し、しかしブラッドハウンドが後ろから喰らいついてきたのを躱した際に、バランスとリズムを乱してしまう。


 腰の乗らないノロノロとした攻撃は進に簡単に見切られ、

 右後ろから拳が一発、横っ腹にめり込む。

 背後に障壁を生み出してそれ以上のダメージを防ぐも、グレイハウンド、ブラッドハウンド、進の三つの攻撃に対し、手足を引っ込めた亀のように固まって、大男かシャチか、どちらかが自由に動けるようになるのを待つしかない。


 あと10秒間助けが無ければ、魔力切れで障壁を維持出来なくなる。


 虎次郎はそれを見て、自分がやるしかないと、捕縄を破壊するべく満身の力を籠め、


 それを見計らった詠訵がリボンを回収、直後にトロワが刃を引いた。


 彼自身の豪腕が、彼の肉体により深い傷を銘じた。


 ほとんど身体欠損寸前だったが、彼の能力は肉体改造。魔法生成物で補修出来る。


 が、その前に、攻撃対象を即座に切り替えた進が、テニスンの障壁を蹴った反動でその石頭に跳び蹴りを入れ、


 ケーブルを首に巻き付け、


 回転刃を発動しながら巻き取り機構で寄って蹴りを入れ反動で少し離れ巻き取り機構で寄って蹴りを入れ反動で少し離れ巻き取り機構で寄って蹴りを入れ反動で少し離れ巻き取り機構で寄って蹴りを——


 テニスンが事態を理解し、彼の援護に駆け出した時、六本木がその身を割り入れる事でインタラプトした。

 リボンとアルパカの盾とパンダ人形の加護がある彼女を、素早く制圧する術が無かった。


 首を削られながらの跳び蹴りループという型に嵌められ、虎次郎は全財産(ポイント)を強請り取られてしまった。


 Kポジション脱落により、試合終了。



 勝者、特別指導クラス。

 戦闘不能者ゼロ。実戦と想定しても最上の結果。

 これにより、都大会に出場するパーティーは、彼らを中心に編成される事が決定した。



「あーあ、負けてやんのー!なっさけなー!」


 驚愕と共にお通夜ムードになった観戦席の中で、一人お気楽に試合を楽しんでいた少女、パラスケヴィ・エカト。


「アタシが居ないと、インキャ家出マンに負けちゃうんだから、ホント、ザコで仕方ないセンパイ達ぃー」


 口ではパーティーを共にした者達の不甲斐なさに呆れながらも、この結果を最初から予想していたかのように、何処か痛快そうに笑うのだった。

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