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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第二章:高校受験ってこんなに辛いんだな…

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35.日進月歩チャンネルは、リスナーの皆さんに支えられて成り立っています part1

 “人世虚ホリブル・ノブルス”、第6層。


「あっつい…」


 重量が増えるリスクを承知で、水を多めに持って来い、そう言われる理由が分かった。映像では伝わらない、本物の熱気が肌を焼く。


「これ一酸化炭素中毒とか大丈夫なのが謎ですよね」

(((魔力が燃焼しているのでなく、光学的現象と熱気を再現しているだけです。と言う話も、魔学の範囲、その筈ですよね?)))

 やっべ藪蛇だ。


「さ、さあて!この階層から、平均人口密度がガクンと下がるらしいので、モンスターとの遭遇回数も多くなる筈です。それほど掛からず、向こうから来てくれる筈——」


 ドォン!と、話したそばから会敵である。

 まだ遠い。俺の魔力察知にも引っ掛かっていない。だが、存在感が強烈である。

 ガッタンゴットンいいながら、デカい車が走っているのだ。

 「車」と言っても、現代の自動車的なものではない。前にどこかで見た情報だと、全長8m、幅4m、高さ5m、だったっけ。駕籠に車輪が付いたような外観。先端に破城槌のような、棘だらけの柱が複数突き出している。オマケにその槌、上2本下3本の計5本なのだが、そろいも揃って回転しているのだ。


 C型エイプ。エイプ?と言いたくなるが、実際あれは猿なのだ。理由は見ていれば分かる。

 全然軽くなさそう?それもすぐに分かる。


 と、先に上からお客さんだ。結構な高さを降りて来たな。

〈キャグエッ!〉まあ強化ジャンプなら届くからすぐ殺すけど。

 F型の首の骨を折っていたらもう数体近づいて来た。ギャアギャアうるさい。どうやら一帯の勢力を集めてくれるようだ。

「さて、C型は…」

 と、いけない。

 地面に着いた俺は一旦前方へ走り、途中で無作為な回数、横へとステップしてみる。1mほど離れた場所の瓦礫が何か小さい物の衝突を受け、弾ける。

 M型が持つ鉄砲は、見た目は大昔の火縄銃だ。だから、破壊力はあっても、精度は無い、と思えるだろう。しかし魔力によって、弾道補正や威力上昇を獲得しているらしいそれは、百何十メートルからの遠距離からでも、ある程度の正確性で狙撃してくる。

 とは言っても、撃つ奴が熟達していなければ、今みたいに外しがち。

 まあ炎のせいで、視認性自体は最悪なのも、命中させづらい要因か。


 しかし、敵の数が増えれば、数撃たれて当てられてしまう。そうなる前にC型に辿り着いて、弾除けを確保しなくちゃいけない。

 だけど、

「はっや………!」

 実際に対面してみると迫力が違う。殺意の高いトラックみたいなものだから、恐ろしさを感じるのも当然と言えば当然。

「ケーブルを渡して止めるのも考えたけど…」

 無理そうだなこれ。ケーブルを留める箇所、それかケーブル自体が耐えられない。

 C型は既にこっちに気付いており、方向を転換、俺を轢き殺しにかかる。

 さっきは駕籠って言ったけど、これあれだ、小さな仏堂みたいなのが、一つ乗っかってるのと変わらない奴だ。

 互いの距離が2、3mにまで縮んだあたりで横にダイブ。足腰は既に強化済み。背中越しに細かい破片と荒々しい破壊が吹きつける。これも事前に知っていたことだが、奴は容易に旋回できない。だから、避ける事自体は難しくない。殺せないし、一度しくじれば即死と見ていいのが問題だが。


 ちょっと不安だな。あれやってみるか。


「ちょっと魔力を眼に回します……」


 ディーパーの肉体強化の中には、実は「五感の向上」なんてものがあったりする。

 一体どういう原理でやってるのか、聞いた時にはピンとこなかったが、自分で体内魔力をイジってるうちに、何となく分かった。

 脳ミソから伸びる神経、そこに何かの補助が入ってる。

 脳からの信号の伝導スピードを上げるとか、それを受け取る筋肉の運動を補佐したりとか、多分そういう事だと思う。

 今の俺が使えるのは、静止・動体視力を上げることくらい。しかもやってるとすぐに頭痛くなるから、魔力問題と合わせて、連続使用時間が極端に短い。


 取り敢えずC型がガリガリいわせながら、車体を180°回そうとしている間に、練習の為に一回やっておこうと思い、

「皆さん何でもいいのでコメント打ってください。いつもの試運転やります」

 リスナーさんにもお願いしてみる。

 本当にありがたい事だが、俺が初めて行く階層と言う事もあってか、いつもよりも多くの人が見てくれている。数字で言えば3万人以上、少し促すだけでコメント欄が読めなくなるくらいだ。

 だからその状態で、一人ずつの文面を正確に視認できるか、という確認法の為に、最近何度も協力をお願いしている。みんな結構ノリが良くて助かる。

 

 狙いを絞らせない為の反復横跳びを継続しながら、ゴーグル内に映る文字の激流に目を通す。

「『いつもありがとうススム』『愛してるぞススム』『ススム、俺は好きだぞ』………皆さん読みづらくなってる時だけ辛辣さが無くなるのやめません?いや『見るな』じゃなくて」

 天邪鬼共め。

 早口とは言え音読するのが恥ずかしくなってきたところで、


『ススム君!旋回してる時を狙って!』

『君の土俵はそこじゃないよ!降りようよ!』

『追われる側に身を窶すな、ススム』


 その3つが目に入った。

「そっか、確かにその通りですね」

 今まで正面から止めてるか、遠距離から破壊するディーパーしか見てなかったから、視野が狭まってた。よくよく考えたら、わざわざ向こうの得意に付き合う必要が無いんだ。


 少しして、C型が再び接近してきた。

 再び動体視力強化、さっきよりも幾らかの余裕を残してかわす。

 C型はさっきと同じように、勢いを殺すように旋回、敵に向かって再加速を始め、


「ここおおおお!」

 

 強化した脚で後ろに張り付くように走っていた俺はその横っ腹目掛けて飛び乗ってやった!

 向きを変えるなら減速する必要がある。それなら付いて行って、奴が一番弱くなる、そのタイミングを突いてやればいい。

 相手が猛スピードでこちらに向かって来るのを待つのでなく、こっちから「追う側」になるのだ。

 気付いてみれば単純だった。

 

 C型の上側、仏堂擬きの周囲には足場と柵があり、L型2体とG型2体、計4体が乗っている。俺が乗り込んだのを見てG型が刀で斬りかかり、L型が屋根の上に乗る。「遅いんだよ!」魔力を発射して左側のG型の攻撃を逸らしながら、踏み台にして屋根によじ登り、L型を追う。逃げたそうにしていた彼らに強化した脚力で追い着き、ケーブルを繋いだナイフを片方の左肩に直刺ししてやる。すぐに跳び上がっていたもう片方の足を掴み屋根に叩きつけ、頭部を踏み砕く。


 ケーブルを巻き取ってもう一体の逃亡も妨害し、そのまま首を搔っ切ってやろうと〈キャァーアアアン!!〉そこで仏堂の中から声が上がり、直後にC型が急制動!

「おわああああ!?」

 屋根にへばり付いてなんとか振り落とされるのは免れたが、その間にL型はナイフを抜いて下に逃げた。そして止まったということは、「うぉぉぉおお!?」思いついた瞬間に横へ転がった為に当たらなかったが、しかし高所だから炎が無い為だろう。結構な精度でM型の弾が飛んできた。

「くぅううう!」

体の周囲の魔力を弾が掠めた事で、やはり痛かったが方向は分かった。転がり落ちて仏堂の壁を盾に、


 と、壁がすだれのように巻き上がり、風通しが良くなる。


 中には天井からぶら下がった、先端に取手のついた紐の数々。多分これで操縦するのだろう。そしてそれを掴んでキャンキャン言ってる、普通と同じくらいの大きさの猿。短刀以外に何も身に着けていないが、このダンジョンでは絶好の強化対象となるから、殺傷力をあなどれない。それが2匹。

 

 これが、C型の中身だ。外は重戦車、中は曲芸師。

 C型の特徴と、このダンジョンの特色、両方の良い所取りである。


 ちなみに、1匹殺したとしても、戦車はちゃんと動くらしい。だから止めるには、どちらも始末するしかない。ふざけんな、じゃあ何で2匹入ってるんだよ。


「G2、L1、Cの中の人2、それから狙撃してるMが1、2体、それとF型も居ましたね…」


 そして戦車の上から降りようものなら、また走り去られるという……こいつら人がやられて嫌な事、理解し過ぎじゃない?

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