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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十二章:過去はいつだって不意打ちのように顔を出す

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315.今度こそ、今度こそちゃんと倒す!

 D型達に火力で押し負けると、長丁場に持ち込まれる。

 その間にA型から産まれた増援が間に合って、俺達の1時間が水の泡。

 安全の事も考えて、スタコラ退散するしかない。


 とにかくこっちから短時間で効果的に破壊の連鎖を押し付け、体勢を整えたり満足な反撃をしたり、そういった一切に十分な隙を与えない。

 攻めて攻めて攻め切る。ダウンから起きようとする度に蹴り倒して、絶対に立ち上がらせないという固い意思で挑むべし。


 D型の光背がその形を変え、俺達目掛けての発射準備に入り、


「今!!」


 俺の合図で前衛も後衛も防御を展開!

 魔力を光エネルギーに変換し光量を盛ってレーザーを強化しているという事実を、ここ数日何度も体験した金の網を掻い潜りながらの魔力探知で突き止めた。

 発射タイミングは完璧に分かる。

 そしてこっちにはミヨちゃんとテニスン先輩が居るし、あっちには訅和さんと和邇さんが居る!俺達に至ってはミヨちゃんのリボンを繋いで常時高速移動をしているので、同一点に照射し続ける事が出来ずレーザーの最大威力を与えられない!

 守りを抜かれる気はまるでしない!


 だけど、それも今の所の話だ。もしここで33本全てを使い、護衛班が作った壁の一点に集中されたら、流石に恐ろしい爆熱と共に瓦解する。


 だから、俺達は相手の癇に障り続ける。

 光線を回避しながらD型のナワバリ内の、特にL型のような修復能力持ち、C型のような強力なモンスターを優先して、切り裂き系通り魔の被害者にしていく。

 

「前!上からも!挟んで来た!」

「建物の隙間に入ります!こんこぉん!」

「オゥライ!」


 3、4本を使って掴むように追い込んで来た敵に対して、俺達は建造物を盾に僅かな捕捉困難時間を作り、180°進行方向を回変かいへん!俺達を追って来た光線がすぐ後ろを斜めに通り、チリチリと背を掠めながらも俺達の進路と反対に振るわれ、残りの2本と合流!1秒程度の後に照射点の空気が極めて高熱化、即座に急膨張し爆発!

 燃焼し溶解した木片が衝撃波に乗り散弾めいて俺達を横から叩くも、矢張り数重の障壁に防がれる!


「下から!掬ってくる!」

 

 大通り沿いに地を削り上げながら高速で横切る2本!

 3人揃って左横に回避!

 トースターの中のバターみたいにオレンジ色にヒートアップした砂塵の波が立つ!

 レーザーそのものを避けても熱エネルギーの影響はいなし切れない!二人の防御に少なくない負荷が掛かる!


「こん!どんどん行くよ!」

『りょ!見えてる!』


 耐え続けるだけは負けと変わらない!斥候班は前に!レーザーは光の速さだろうが、狙いを定めるのにもたついてしまえば、その即射性は持ち腐れだ!

 俺が感知してミヨちゃんが引っ張りテニスン先輩が防御!レーザーの1本が直撃しても数秒だったら耐えられる堅牢な防壁だ。頼もしさが違う。


 だからレーザーでのハエたたきは効果薄。そのうちD型の軍勢が建物から出て直に殺しに来る。


 ほら、俺達が100m手前くらいに来たら、レーザーが露骨に地面を撃たなくなった。味方に誤射する危険を取らなくなった。


 窓から矢やら符やらを撃っていたM型とL型は、B班の放つ弾丸やら眷属やら火球やらで、次々と破られ散らされ燃やされている。


 C型がふわりと浮いてから、俺達の移動先にズドンと落ちる。

 俺が警告し、通せんぼを上下左右に縫い抜ける。


 止められない。

 ではどうするか。


 合掌していたD型の左腕が、少し上げられつつ前に。

 

「アラァァァト!」

「来た!こぉぉぉんっ!」


 八志教室からの情報で事前に聞いていた動作。

 接近を嫌うD型は、煌びやかな袈裟を振り払い、


 ど、ぉぉぉぉぉおおおおおお!


 巨大な質量が大きく動く!

 遠目にはゆっくりに見えるが、しかしそれは身体のサイズが数十メートルクラスだからだ!

 巨人の1歩が常人の10歩と同じになるように、その一振りで数十倍の効力を発揮する!


 風!

 暴風!

 壁のように厚い気流!

 俺達を僅かに減速させるだけでなく、その表面や袖の下から落とされた布や紙の群れを、獰猛なスピードで運び送り出す!


 色とりどりに揺蕩って、 天を埋める扁平形。 あれら全てがモンスター。 

 風に乗って流れ行き、 雲のように上を塞いで、 ぼうッと地を見下ろして。

 病んだ空に、 切り貼りされて、 賑やかに飾り付ける、 たっとき衣達。


 D型が室内で収まっていた時は、旗のように天井に張られるくらいだったらしい。

 だけど今やこの量、この規模、この範囲。

 そしてそれらは、一斉に質量を取り戻して、形を尖らせて——

 


——落ちて来る!


 

「ミヨちゃん掴まって!」

「先輩!リボンに従って下さい!」

「ラジャ・ザット!」


 前面投影面積を小さくして空気抵抗を貫くのに適したフォームになったモンスター共が俺達にも後衛にも降り注ぐ!!

 絨毯爆撃だ!

 広範囲攻撃をしつつ町をモンスターで埋める事で一気に包囲しようと言うのだ!


「うおおおおおおお!」


 直上から来る!ミヨちゃんを抱えて横に跳ぶ!テニスン先輩はミヨちゃんが即座にこっちへ引っ張って無事!残念ながら俺に触れるのに抵抗があると言うので、俺が速めに察知して余裕を持って避けなければならない!


 斜め右上!大きく前に走る!それを止めようと前めに3体が落ちて来る!という守り方をすると分かっていたので急減速!縦方向に連突してくる!右横へ!空中で一度扁平に戻ってから軌道修正後再突入するC型2体!片方に対するエスケープが間に合わない!魔力爆発を当てた後の先輩の防御でギリ逸らせる!


 落ちたモンスターが次々と戦闘形態となっていきボールやら符やらを飛ばして来る!蹴り返し、破り捨てる!突進するC型と地から急襲するV型!そいつらが来る方向を二人に共有しながら魔力爆発とミヨちゃんのリボンでモンスターの壁の一点を突破!擦れ違い様に先輩の障壁ブレードが数体を斬り捨てる!


 上からまた来た!更に飛行能力の高いF型が低空を飛び回り上へ避けるのを妨害!低い場所ではC型の壁とV型の床が待ち構える!まず落下攻撃の芯から逸れ、ミヨちゃんがテニスン先輩をリボンで360°振り切る!C型は怯みそれ未満は斬られ中には凶刃に倒れる者も!俺は魔力爆発で包囲の隙間を広げリボンの防御を纏った足でその奥に居たG型をペラ紙状態に移る前に真横に伐り倒す!背後に落下!すんでの所で先輩に当たらず!


 だが密集地に深入りし過ぎた!V型が起き上がり上から圧し掛かるように食いついて来る!後ろでは今落ちて来たC型が牛形態に!八方塞がり!「だったら真上ェッ!」ケーブルを頭上に伸ばしそれにぶつかったF型に巻き付き即巻き取り!火の玉豪速球の如きそれに引き連れて貰う事で加速した3人!その全ての攻撃力を正面のV型とC型の層構造にぶつけてぶち破る!F型が飛行の制御を取り戻しそうになっていたので魔力回転刃で処理!

 

 上から!逃げ場を塞がれる!切り抜ける!囲まれる!斬り裂く!閉じる!こじ開ける!更に上から来るのを回避!

 上!上!右!斬撃!包囲!爆発!打撃!斬撃!突破!落下落下!包囲!跳躍!斬撃斬撃斬撃!上上上!一斉射!蹴り返し!防御!薙ぎ払い!二重三重包囲!あめあられ!撃って打って討って突破!


 生き残れども数は減らせていない。

 畳み掛けるように周囲から集まる軍勢。

 詰将棋で俺達を殺せると判断。そしてそれは正しい。


 だからこそ良い。

 それが正しいから奴らはそれを選ぶんだ。

 即ち、こっちが用意した選択肢を。


『一投目!』


 パンダ人形から通信が入ると同時、後方の宙に幾重にも連なった白い円が、五芒星魔法陣が展開される。小四水さんだ。あれを通った味方の魔力関連効果は増幅する。

 例えば攻撃魔法が通過すれば、威力が上がる。


 それを潜るようにして投げられた灰色は、壱百さんが使役する眷属。

 恐ろしい執念で取り付き、下方向への強い力を掛ける事で、相手の動きを止めたり、時には体の一部をごっそりもぎ取る、赤ん坊大の石像。

 元々がそこそこ重く、眷属それ自体も機敏では無い為に、ゼロ距離で召喚して落とすように当てるというやり方で、対強敵用に運用される。


 だが、虎次郎先輩なら、それを投げられる。

 鋼の肉体を手に入れようとしていた彼は、魔法が最初から身体強化の効力を持っていた。それを磨き上げた末に、肉体の材質を変貌させる事を実現。合成ゴムの如き筋肉と、合金めいた骨。そして体のどこでもバネのように、歪んだ変形と元形状への遡行、それらが極端な水準で可能になった。

 その強靭さがあれば、岩の塊だって野球ボールみたいに扱える。


 鬼に金棒、巨人に投擲兵器だ。

 

 輪を通る度に石像が大きく、速くなっていく。それはディーパーそのものを狙っていたレーザーにぶつからずに飛んで、2秒と少し掛けてD型の光背にガッチリ着撃。

 数m大になったそれはすぐに効果を発動し、メリメリと見るだけで痛くなるような勢いで裂下れっか裂断れつだん

 

 ど お お ん


 地が縦に跳ねた。

 D型がソプラノコーラスのような、或いは金属の摩擦音のような、悲惨な哀鳴あいめいを上げる。


『砲台やり!』

『とっとと次弾行くわよ!急いで!』


 通信から聞こえるのと同じくらいかそれ以上の喧騒が、俺達の周囲で巻き起こっていた。


 真に狙うべき相手気付いたモンスター達。F型が高度を上げ、その他は空に浮いて風を受けようとして、それを後ろから俺達斥候班の手でぼろ(きれ)にしていく。


 そう、奴らは火力集中の配分を間違えたのだ。


 俺達の本命は始めから後衛の方。

 D型の広範囲モンスター展開をそちらに送り込まれないよう、前線を無茶なくらいに押し上げた。

 D型の防御、回復手段を取り払いつつ、自由に送り込める戦力を浪費させる為、一連の逃走劇を繰り広げたのだ。

 俺達をD型本体が相手して、残りの全戦力を後方部隊へ。それこそが正解だった。


 第二段階(フェーズ2)完了。


 奴らは間違いに気づき、修正してくる。

 俺達は立て直しを死ぬほど妨げ、さっきの増幅投擲攻撃を当て続けて倒す!


 ここからはそういう戦闘になる!

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