311.強行偵察!……で合ってる? part2
『そっちから見て2時から3時の辺りからMの一斉攻撃!正面上空からF追加!だいたい10!それと9時くらいからもMの矢が来てるっぽい!ってヤッバ!右翼の防御厚めにして!ガチ弾幕来てる!』
アルパカ人形で遠視を獲得した六本木さんが、都度報告を上げてくれる事で、遠くからの攻撃に備えられる。が、それにしても凄い数、凄い猛攻である。M型からの曲射なんて、ほとんど雨だ。それもしっかりこちらの位置を把握している。F型が導きの灯火となっているのだろう。低くを走っていれば撃たれづらい、みたいな事は残念ながら無かった。
が、まともに相手になるのは矢張りその二種類くらいだ。道の脇にモンスターが並べられるものの、追い縋れてる奴がほとんど居ない。
これなら『後ろ!Cが2!』
報告が入ったすぐ後、俺の探知範囲に凄い勢いで食い込んで来た2体!
「なんて速さ……うわっ!そう来るかっ!?」
振り返って確認した事で絡繰りが判明!F型がC型の角に火を点け、ほとんど暴走状態にした上で直進させている!
「だが視界を失うようではなあ!」
先輩の言う通り、迫力はあるがそれだけだ。
「次の角右行きます!こぉん!」
ミヨちゃんの声に従い道を逸れる!牛2体は急には止まれずそのまま大通りを真っ直ぐ走って行った!
「あれじゃあ味方の矢にもやられちゃうだろうし、そこまで問題じゃないな!」
「気を抜くな!狭所では塞ぐ側が有利だぞ!」
俺達の前に続々と集結するG、V、L型達を、先輩と眷属狼が引っ掻き咬み付き、俺の魔力とミヨちゃんの魔具で叩き退かして横壁にぶつける!
倒すのは面倒で、かと言って殺し切れないと脅威度が増していく。
だけれど、そもそも戦う気が無くて、振り切って戦闘を終わらせる事が可能なら、やり過ごし続ければそれで良いのだ!
隣のレーンに出た所で、進路を再び本丸へ向ける!
これを繰り返して行けば『は!?何アレ!?』
そこで六本木さんが何かを見つける!
「なに!?何か問題!?」
『8時からデッカい波と船みたいなのが…!』
「波?船?」
俺は屋根の上に跳んで、そこを蹴り渡りながらそちらを確認。
本当だ…!
巨大な水流に乗って、帆を持たない巨大木造ボートみたいな物が、俺達が目指す建物目掛けて猛進している!
「マジでなんだあれ……?と言うか、先端に、何か……六本木さん!見える!?」
『ちょい待ち!あの先っぽに………はあ!?辺泥ぇ!?』
「先輩!あれ八志教室です!」
「してやられた!オレサマ達を待っていたな!」
「私達の周囲に敵を集めて、警備が薄くなったルートを攻める、って事ですか!?」
D型に先に到達されたら、マナーとして俺達は手出し出来ない。
7層到に来た時点で、最深到達班の座は硬い。それ以上深掘りする意味は本来なら無い。だから無茶をせず、時間を掛けた安全な攻略をしていたのだろう。
俺達みたいに7層到達を成し遂げて、D型に届き得るパーティーが他に居たとしよう。そういうのが追い着いて来た時にはそこを利用しつつ楽に、そして誰よりも早くD型を倒して見せればいい。
深級8層より深く潜るなんて学生には不可能である以上、理論的最深潜行がD型討伐達成なのだ。他に並ばれても、最速が最優とされるだろう。つまり俺達は、彼らがトップを取る御膳立てをしてしまった事になる。
「やられたあ!そんなのアリかよ!」
「こうなると、あの人達がD型に負けて、スゴスゴ退却してくれるのを期待するしかないけど……」
「どういうモンスターなのか、その情報は持っているだろうな。でなければあれ程自信満々に、正面から乗り込みはしないだろう」
「じゃあ、まああの人達なら勝つよなあ……」
俺達の周りに密集してた気配が、より強大な敵の出現に騒然となって、そちらを押さえる為に動き始めたが、もう遅いと見ていいだろう。
彼らはその前に建物内に突入して、
「うん?」
その時、ゴール地点の扉も窓も、一斉に開いたのが見えた。
中からM型の矢衾が放たれ、更にL型やC型も大量に現れて、
屋根が左右に開いた。
「E゜っ!?」
F型の群れが飛び立つ、その後から、重い地響きと共にせり上がって来る物があった。
後光?
いや、折り紙だ。
金の折り紙で作られた光背だ。
その下からは黄金色の禿頭が現れ、袖が広い朱色の着物と、黒い五条…もしかしたら七条袈裟。巨大で金ピカなお坊さんみたいなヤツだ。
そいつが八志教室一行の方へ向いて、背負われた曼荼羅がベコベコグネグネと凹凸を作り出し、ビカビカと目が痛くなるような輝きを増して、
「なんか、なんかやばいんじゃあ——」
幾条もの光線が発射された。
「うわっ!?」
「ビーム!?」
「と言うよりレーザーだ!恐らく光を収束させて撃ち出している!」
近 空 時 連
く に 中 気 間 射
遠 描 に に 差 で
く 引 焼 無 な
十 を か き く
数 問 れ 着 付 面
本 わ る 弾 く の
ず 直 命 金 進
線 中 色 攻
木造船の前には水色防御フィールドが展開されたが、他モンスターによる同時攻撃にプラスしてのレーザー照射だ。耐えられずに撃ち抜かれ、金色が着弾した場所から激しく発火し、水塊の一部が急激に気化。
そして突如下部が爆散し、船はバラバラになった。
軽い水蒸気爆発が起こったのだ。
『ちょっ、戻って!一旦バック!命令な!』
六本木さんの判断は正しいだろう。ちょっとシャレにならない感じだ。
俺達3人はその場で回れ右、気持ち和らいだ敵の包囲を蹴り飛ばし、ラポルトまで帰るのだった。




