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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十二章:過去はいつだって不意打ちのように顔を出す

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311.強行偵察!……で合ってる? part1

 ダンジョンは、基本的に奥まるほど下に向かう。


 床は微妙に傾斜し、階段の大半は下に降りる物で、ラポルトが床に付いてる物まである。

 そういう事情もあって、上に伸びる高めの建物が見られる事は、ほとんどない。“奇械転ギアーズ・オブ・ティアーズ”のように、内装が巨大構造物の内部風だとか、そういったケースはあっても、それを外から見る事は出来ない。外に出ようと壁や床を掘っても、どこかでループする地点が存在するからだ。

 “御怨恩オン・ノン・アイオン”もその例に漏れず、平屋ばかりの景色が続いており、2階建て以上が見られなかった。


 ついさっきまでは、だけど。


 第7層に入った瞬間、遠目にそれが見えた。

 ニークト先輩の上に乗ったミヨちゃんに、出来るだけ高く持ち上げて貰って、F型が寄ってくるまでの数秒の間に、視力強化を使ってはっきり確認した。

 

 恐らく2階が存在する、或いはかなり天井が高い、巨大な……城?寺?らしきもの。

 出入口や窓が閉め切られ、中に何があるかは見えなかったけれど、あれだ、大仏とかで有名なお寺のお堂に似ている。


 ああいう目を引く物がある時、十中八九次の階層へのラポルトもそこにある。ダンジョンの内装は、結構目立ちたがり屋なものなのだ。


 つまり、D型があそこに居る。


 迷う事は無さそうだったが………


「塀がほとんど無いな」

「建物もまばらですね……」


 ニークト先輩とミヨちゃんの言う通り、区分けされていたこれまでの景色とは一変、壁から壁までの間が広くなり、遮る物が見られない。

 複雑な道筋が無く、敵に気付きやすく、遠距離から攻撃を当てやすい、というのはあるだろうが、それは向こうからしても同じだ。

 これまで、ある一団と戦っている時に、別の一団が合流して来る、という事はほとんど無かった。が、この構造では、戦っている所に吸い寄せられて、第二波第三波が続けざまに現れる恐れがある。

 連戦がキツいのもさることながら、戦ってる最中に敵がどんどん増える、みたいな事になったらマジで最悪だ。戦闘の規模の上限を想定できない。

 

「どうするの?全部殺すというのでも、私は構わないけれど?」

「みんな、トロワ先輩の意見は一度忘れた上で、実際どうしよっか」

「ちょっと?詠訵さん?」

「あー、あーしからすると、F以外がどんだけストーカーしてくんのかによる感じ」

「実際、ある程度スピード出せば、振り切れる奴の方が多い気がする。こっちの攻撃を利用して逃げるのは得意でも、フワフワし過ぎて追跡が得意なヤツがあまり居ない、って言うか」

「そう、私もススム君と同じ事思った。V型を主軸にした待ちの姿勢がメインなんだよね。探知範囲外にまで出れば、追って来れないんじゃないかなあ?」

「管理側の人達が、そこそこ削ってくれてる筈、っていうのもあるねぃ」

「が、全ては推測に試算を重ねた皮算用に過ぎない。これまで本気の追いかけっこなど、した事は無かったからな。やるにしても、こちらが鬼だった」

「って話ならさ、」


 六本木さんの纏めによると、


「とりま、一回やってみるしかないっしょ?」


 という結論。


 今俺達が居る此処の、すぐ後ろにラポルトがある。

 最悪そこから逃げ出せる。


「パンダ持たせるから、かけっこ用のスカウトを2、3人出す感じで」

「それアリー……」

「ここを死守していれば、予想外に多くの敵に追われる事になっても、すぐに逃げ出せる、という事だな?」

「あなた達が向こう側に戻るまでの数十秒くらい、私なら余裕で稼げるわ!」

「そうなると俺は確定として、後は?」

「私も行くよ。治療役は必要でしょ?」

「じゃあ私もヨミっちゃんにくっついて」「お前は待機だ。こっちの治癒の水準を保つ必要がある」「ちぇー、ずっとお留守番~」

「僕ー……ここからー……撃っとくー……」

「そうだね。私達に付いて来れてる数を減らしてくれるだけで、後が楽になるし」

「M型が何処に居るかの調査にもなるね。俺達がD型の元に着くまでの、一番楽な道順とかも決められそう」

「防御は脳筋とストーカー女で足りている。オレサマも行こう」


 決まりだ。

 ラポルト前を固めた上で、俺、ミヨちゃん、ニークト先輩の3人で、D型が居るだろう建物まで突っ切ってみる。

 追尾性能が高い階級を特定しつつ、確実に邪魔になるだろうM型とF型を減らす。

 出来るだけ安全な道筋を探しつつ、危なくなったらすぐにここまで戻って来る。

 基本方針はそんな所だ。


「先生、我々が本隊と離れる許可を」

「………まあ、そのメンバーなら良いだろうぜ。滅多な事では死なねえと、俺からお墨付きをやる」


 思考時間は10秒くらい。シャン先生は首を縦に振った。


「よおし、行きますか!」


 俺とニークト先輩に1本ずつ、残りの2本に魔具を持たせたミヨちゃんが、軽く体を伸ばしつつ言った。何の気負いもなく頼もしい限り。

 後は三人で息を合わせて走り出すだけ!


「じゃあ、せーのっ!」

GO()!」

 ミヨちゃんの掛け声に合わせて俺と先輩は走り出し「で行きま、あ、ごめん」転がるように止まった。

 って言うかゴロゴロとコケた。


「ちょっと!ミヨちゃん!」

「紛らわしい言い方をするな浅慮女ァ!」

「ごめんって……あ」


 ミヨちゃんが何かに気付いて、俺達は前を見た。

 俺と先輩が凄い音を立てたせいで、G型とL型が合わせて10体程、角を曲がって様子を見に来ていたのと、ばったり出会い頭になった。


「「「………」」」


 ありもしない目が合ったみたいにモンスター達はピタリと止まり、

 俺達も沈黙で出迎えた後に、


「走れ!」

「せ、せーの!うわもう走ってる!」

「ごごめんミヨちゃんっ!」

 

 バラバラのタイミングでスタートダッシュを切った。


 ニークト先輩が先頭で敵の壁を破り、すれ違いざまに俺がナイフとケーブルで抉り、隣のミヨちゃんが魔具で斬りつけていた。


(((流石、阿吽あうんの呼吸ですね)))

(やかましい!)


 カンナから皮肉を頂戴した直後、上空から複数の火球が降って来る!F型!俺の魔力爆発とミヨちゃんの魔具持ちリボンで減速させ、そこに狩狼さんの“ブラッドハウンド”が襲い掛かり、動きを止めた奴から“グレイハウンド”に両断される!


 俺達は大通りを一直線!

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