表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十二章:過去はいつだって不意打ちのように顔を出す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

454/983

303.べた褒めじゃん part2

「………どうしても、やる気は無いか?」

「その顔やめろぉ……、ずっるいってぇ……」


——顔()~…!ちゃんと人のこと見てる~…!スタイルえっぐぅ~…!プランの完成度(たか)~…!情報量(おお)~…!だいじょばない~…!ぴえん沈没丸ぅ~……!


 勝手に相手の魅力的な部分ばかり吐き出す回路を宥めようと、なんとか記憶のフォルダの中から、過去の彼を引っ張り出そうとする。あのぷくぷくして少しでも大きく見せようと胸を張っただらしのない……


——全然余裕でカワ~…!沼~…!


 こうして思い返すと、あれはあれで悪くないかもしれないと思っている辺り、彼女はもうおしまいだった。


「……あーしはさ、」


 けれども彼女はそれでも、

 彼の評だけは間違っていると、そうはっきりと突っ撥ねられる。


「誤魔化すのが得意なだけ、っつーかさ」


 彼女の周りには、いつだって彼女より上が居る。決して一番にはなれない。コミュニケーション能力だとか、芯の強さだとか、魔法の便利さだとか、それらは全て、彼女が劣っていると気付かせない為、そちらに目を向けさせない為の防具だ。

 彼女が“届かない”人間であるのは、彼女自身が一番分かっている。


「アンタもすぐに、思ってたんと違うってなるし……。期待するだけソンっしょ」


 過剰に望まれるなんて、もう真っ平だった。どれだけダメなヤツと呼ばれても、もうあまり傷つかない。それよりも、お前なら出来るだろ、どうして出来ない、そんな言い草の方が辛かった。

 だから彼女は、それなりで良かったのだ。誰からも高く見積もられない、なあなあな人生。熱血なのは似合わない。頑張ったってどうにもならないと、すぐ近くにぶら下げられた実例で、知っているのだから。


 だったら、どうして大会の時、あんなに必死だったんだろう?

 どうして危険を分かってて、進を探しに行ったのだろう?


「だから今の話は、アンタの見込み違いっぽいし……」


「……お前に、」


 「お前にそれを決める権限などない」、

 彼は膝の上で拳を握り、言った。


「え、は?」

「オレサマははなからお前に期待してない」

「ど、じゃっ!?、さっきまでの話なんなん!?」

「オレサマが期待するのは、いつだってオレサマだけだ!オレサマの判断は正しい!それを信じている!お前本人を信じているわけじゃあない!」


 すっくと立ち上がり堂々と言い切る。


「結果的にお前が大活躍したとして、それら全てはお前の手柄じゃない!それを提案し実行したオレサマのお蔭だ!逆にお前が上手く機能しなかったとして、オレサマの運用に見落としがあっただけのこと!オレサマが見抜いたお前の価値が間違いだったなどと、そんな事は有り得ない!何せオレサマが看破し太鼓判を押したんだ!」

「なにイミフなこと言って……!?」

K(キング)になるからと言って思い上がるなよ!分を弁えろ!どのロールどのポジションに居ようと、一番偉いのはオレサマだ!お前をその地位に就けてやるのもオレサマだ!お前はただいつも通りに知恵働きをやってれば良いんだ!大局の勝った負けたはオレサマの物だからな!」


 無茶苦茶であり、専制的とも言える宣言。酷い言い草だ。クラスメイトをパーツみたいに扱って、権力も栄誉も勝手に総取りして、他人を顧みないエゴイストそのものなやり口だ。


「言ってること、ヤバ……黙って……」

「だから——」


 彼は彼女の前で片膝を突き、


——俺を信じろ、六本木


 犬歯を剥いて拳で胸を打つ。


「お前の自信など知った事じゃあない。オレサマがそう言うから、そうなるんだ」

「き、キモ……ヤバ……ナルシ……キツ……まぢありえん……サイアク……」


 直視出来ずに顔を隠しながら、思いついた傍から悪態を吐く。もうどうして良いか分からなかった。ただただ舌に乗った言葉を全部吐き捨てていたら、


「や、やるから……それでいい?文句ナシっしょ……?マジうざ……」


 ついうっかり了承してしまっていた。


「最初からそう言っておけば良いんだ!」


 そう言った彼は再び立ち上がり、「他の奴には明日オレサマから提案する。お前は適当に話を合わせろ」、などとトントン進めながら去ろうとする。


「まっ、ちょまっ、だからあっ……!」


 吐いた唾は呑めないと言うが、それでも心の準備と言う物がある。もう少しだけ話をさせて欲しかった彼女は呼び止めようとして、


「ああ、そうだ」


 そのタイミングで彼が、以前にある女性から与えられた助言を思い出し、実行しようと振り向く。


「お前、私生活でもそういう所に気合入れてるんだな?」

「………?」

「服装だ。そのナイトウェア似合っているぞ」


 「確か女性の私服は褒めろ、だったな。これでいいのか?」と内心で首を傾げながら、思ったままを言葉にした後、今度こそ部屋に戻って行くその背中に、


「ぷえ゜……?????」


 彼女はもう、一声も掛けられなくなってしまった。







 一方その頃。


「フスー……」

「あれ、狩狼さん?どうしたの?そんなツヤツヤした顔で」

「あ、カミスムー……。ちょぴ、よき物が見れてー……」

「良い物?」

「神対応ー……」

「そ、そうなんだ。良かったね?」

「うむん……。じゃ、おつー……」

「あ、うん、おやすみなさい…………………………あれ?女子部屋って上の階にしか無かったんじゃあ?え、狩狼さん何処に?あれ……?じ、じゃあ、今すれ違ったのって………………つ、疲れてるのかな。早く寝よう、うん………」


 誤解によってちょっとした怪談が生まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ