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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十二章:過去はいつだって不意打ちのように顔を出す

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301.学習にも都合が良いという隙の無いダンジョン part2

「強いだけじゃ踏破できないのがダンジョンの奥深い所…、とか思ってたけど、それにしてもメンド過ぎるー……」

「わかるー……」

「ろくちゃんの情報処理能力に助けられてるよ~。ありがと~。情けないK(キング)でごめんね~」

「ま、戦闘中のあーしって、後ろから魔具マグ撃ってるしかないから暇だし。そこはモチ協力するけど……」

「頭数が欲しい~……!他の教室のみんな、10人くらいで攻略してるのズルい~……!」

「なーんか、抜本的に改善しないと行けない気がするねぃ」


 そうなんだよねえ。

 かと言って焦って大怪我でもしたら、その時点で少なくともその日の潜行は中断させられて、悪ければ修学旅行中の潜行自体も禁止になる。そういうのを監視する為に、担当教師が同伴しているのだ。無謀なやり方は出来ないし、そもそもやっちゃいけない。


 こんな時に乗研先輩が居ればなあ。あの人の能力、特にモンスターには効果抜群らしくて、最初の一回が大事な「奇襲」という作戦へのメタとしては、ガン刺さりな性能してるし。来てたら絶対大活躍だった。


「お疲れ様ッス!差し入れッス!シャン先生からッス!」


 ご飯も食べ終わり、みんなで頭を抱えていると、先生と八守君がニコニコしながらお茶菓子系を持って来て配り始めた。


「よしお前ら。一度休憩だ。俺に感謝しながら味わって食え」

「りょー……」

「頭冷やそっか~」

「トロワ先輩!取り過ぎですって!」

「あなた達の分も残しているわよ!」

「遠慮という物を覚えろと言ってるんだ食い尽くし短気()!」


 無い物ねだりをしてもしょうがない。勝手に思考を袋小路に追い遣ってしまっている。良くない傾向だ。甘い物でも食べて、熱いお茶を頂きながら落ち着こう。


「先生、何かアドバイスとかあります?」

 頭にカメラを付けて同行する、撮影係兼監督役のトクシ担当教師に訊いてみる。

「あん?あー、ネタバレし過ぎない範囲で言うならなあ……」

 何ですか「ネタバレ」って。今潜行の話してますよね?


「勇気を持つこったな。お前らは別々の形をしたピースだけどよ、完成図が一種類だけのパズルとも違えんだ」


 駄目だ。この人あれだ。抽象的な事しか言ってくれないタイプの師匠キャラだ。俺は慣れてるからよく分かる。

(((何方どなたの話をしているか、お聞きしても?)))

 そこで聞いて来る時点で自覚アリアリじゃねえか。


「まず、V型に関してなんだけど、俺がもっと気を付けて、確実に見つけられるようにしてみるよ。アルパカ人形も俺が持って、感覚をより鋭くすれば、なんとか……」

「あー、ムー子よりカミザに持たせんのは賛成。ゴチャり過ぎてて長距離狙撃みたいなシチュあんまなさげだし」

「それなー……」

「LとMの二大遠距離要員はどうしよっか?」

「僕だけだとー……、ボコすの、イカちぃかもー……」

「単体相手は強いけど、対群殲滅には向かないからねぃ」

「折角敵を燃やせるマスティフ君がいるのに、射程の関係で出せないのも勿体ない気もするよねー。他に遠くを撃てる人が居ないから仕方ないんだけど」

「1体ずつでは優先順位をより厳として決めておく必要がある。だが、L型はローカルとの相性故に問題な一方、M型の手数と破壊力も侮れん……」

 

 やっぱり遠距離攻撃が足りない問題になっちゃうか。

 俺が一応ある程度対応可能なんだけど、魔力爆発だとペラペラ状態で飛んでいかれるし、直接殴りに行くと前衛がニークト先輩だけになるし……。

 

「矢張り、私をもっと前に、栄光の下に押し出して行くしかないのじゃあ、ないかしら!!」

「はいトロワ先輩座りましょうねー、今その話してあげますからねー」

「詠訵さん?最近私への対応が雑になってきてないかしら?」

「切り札が無くなるのは痛いが、脳筋の案しかないのか?」

「IQ一桁猪突猛進主義のバカみたいな主張ですけど、他に無いのも事実ですねぃ」

「ちょっと?あなた達?」

「トロワパイセン作戦……ナシよりのナシ、って言いたいけども………」

「レンジが悪いッスねえ……」「縁起だ八守」「それッス!」

「怒るわよ!もう怒った!」

「宣言から実行までが速い!」

「トロてゃチルー……」

「トロ……なに……?どういう発音……?」

「トロちゃん先輩がギャル語にビビってる~」

「とにかくビクビクチビの索敵がどれほど改善されるかを、明日の朝一で検証して」「あらあ?やってるじゃなぁい」

 

 纏めに入ろうとしていたニークト先輩に、それ以上の体躯で肩を組んで来た男。


 校内大会で熱戦を繰り広げた相手、八志教室一番のツワモノにして、在校生唯一のランク8、辺泥先輩だ。


「苦戦してるって聞いたけど?大丈夫そうかしら?」

「お前には関係ない。こんな所で無駄に時間を潰していて良いのか?進捗を誇っている間に足下を掬われるぞ?」

「お生憎様。あたし達は心に余裕があるから、冷静安全に攻略が捗ってるわヨ。ミスりやすいのは寧ろ、アータ達みたいに焦ってる方」


 「違う?」、

 彼は頭をぐりぐりと先輩に押しつけ、揺さぶって来る。

 な、なんでこんなに粘着されてるんだ?前に先輩を圧倒しながら、最後に一杯食わされたのを、根に持ってたりするのだろうか。

 それとも本当に自慢してるだけ?


 と言うのも、今の所は彼が率いる八志教室の、7層到達が単独首位となっているのだ。

 辺泥先輩の事だから、時間と共に8層へ手が届く事のも、当然の運びと言える。それに追い着く、いや追い越すのだとなると、どんなウルトラCを起こさなければならないのか。大分出遅れているのは確かだ。


「オレサマが躓いているのが、そんなに面白いか?」

「逆ヨ。アータ達がつまんない階層で足踏みして終わり、なんて決着、欠伸が出るわネ」


 「こちとらアータ達をぶちのめすのを楽しみにしてたのに、土俵に上がってくれすらしないんだもの」、菓子の一つをしれっと手に取り、包みを破いて噛み砕く。


「それとも、結局アータ達ってその程度だったってワケ?強いのはギャンバーでだけ?」

「そうではない」

「ほんとにぃ~?」

「じきに証明してやる。良い子で大人しく待っている事だな」

「首を長くして、ね?だけど正直、今のアータ達にはあんまり期待できないわネ。いいえ——」


——()()()()()()、ガッカリだわ。


「いつまでも何をウジついてんだ。ナメられんのはお前だけじゃねえんだぞ。いい加減ケツの穴を締めとけ」


 そう低く言い残し、「じゃ、頑張ってネ?『期待してる』から」、その言葉と共にニークト先輩の背中をドンと叩き、辺泥先輩は離れて行った。

 

「せ、先輩、前に戦った時、何か余計な事やりませんでした?今の内に謝っとかないと根こそぎいかれますよ……?」

「このオレサマが怨恨によるカツアゲを受けてるような言い草はやめろ」

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