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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十二章:過去はいつだって不意打ちのように顔を出す

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295.うんうん、歴史を感じる!歴史的で凄い!(小学生並の感想)

「うぇいピース!わ、めっちゃ盛れてるくない?」

「バエー……爆アゲー……」

「?何(つま)んでるの?それ?」

「カミスムー……遅れてるー……」

「これ指ハートっつってな?」

「え?ハート?……わ!ほんとだ!ニークト先輩!これすごいですよ!ハート型ですよ!」

「だからなんだオメデタチビィ!」

「そうッス!ハート作るなんて誰でも……は、ハートッス!ニークト様!片手でハートが出来るッス!」

「ええい!どいつもこいつも!」

「ここは託児所か何かかしら?」

「微笑ましくて良いじゃあないですか~」

「ススム君!ハートなら二人でも作れるよ!」

「あ!それならネットで見た片思いハートってヤツやりたい!俺がハートの片側作るからミヨちゃんがサムズアップを……」

「ススム君0点!」

「なんで!?」

「あーっとカミっち選手!ここで審査員から厳しい採点を受けてしまったぁー!」

「馬鹿やってないで行くわよ」

 

 

 見知らぬ土地で見知った顔で、ワイワイ言ってるだけでも楽しい。

 受験やら就活やらがそろそろ本格化する為、乗研先輩含む3年が不参加なのが本当に残念だ。


 で、色々あって今、甲都の寺社仏閣群の中です。

 え?どこらへんのなんて寺または神社だって?

 知らん。俺は雰囲気だけで甲都を楽しんでいる。


 まあ神仏習合とかやってた国だ。どこまでが悟伝教でどこからが五十妹かなんて、昔の人もさして気にしてないと思う。八百万信仰系が五十妹の下に統一されたのだって、回土えど時代入って幕府に整理されてかららしいし。


 後で書かされるらしい感想文やら文化研究レポートやらが不安じゃないではないが、今は造形美やら歴史ロマンの空気やらに浸る事にした。


 昔の寺社って権威付けの為以外にも、テーマパークみたいな側面を持つ物もあったらしい。幾ら俗世と切れてるとは言え、集客が無いと維持すら出来ないって事だろう。まあそりゃそうだよね。豪華に飾ったり変な幻獣の絵とか像とか置いてあるのも、決してただ贅沢を自慢したかったわけではなく、その建物なりの実用性に基づいているのだろう。

 

 さて、そうは言ってもこちとら零環の高校生身分の観光客で、三十三とか八十八箇所巡りとかやってられないわけで、精々が甲都内のスタンプラリーを片手間に熟す程度である。


「次に行く予定なの何処だっけ?」

「え~……あれだねぃ、鳥居が一杯ある……、『鳥居は赤い』って偏見の元ネタになってる……」

「お寿司みたいな名前の……」

「そうそう、あそこッスね」

「あー、おけおけおけまる把握」


 誰からも正式名称が出て来ない………。


「キイナリ大社だ浅学共」

「一般教養よ?」

 

 そして外国出身2名の方が詳しい………。


「えーと、場所は……」

「またアプリとダルい睨めっこな感じ?」

「まあまあ……」


 甲都は円形の碁盤状だと言われる。通りがキッチリ升目ますめみたいに街を区切っているからだ。どっちかって言えば「ダーツの(まと)状」の方が分かり易いかも。


 画一的な都市規格で通りの形とかに特徴が無いから、GPSとか目印となる施設とか無いと、多分地図見ながら迷う事もありそう。

 寺の所在地はそうでもないけど、市民の方の住所となると、「どの通りとどの通りの交叉点からどう行く」みたいな情報全部書かないといけない事もあるらしく、30文字を超える事まであるとか。

 俯瞰して見ると理路整然として見えるけど、実際に住んだらちょっと不便そうだと感じてしまう。


「元々はみやこ、つまり首都にする為に人工的に作られた計画都市だ。不自然で無機質な構造も、作り易いようにやった結果だろう」

「信仰の拠点みたいなのが集まってるのも、ディーパーによる国防、みたいな感じだったんだろうねぃ」


 で、長い間ここが丹本の中心だった。

 その後今の関東にある乙都に移って、関西に戻って丙都に、更に関東に移って回土時代からはずっと丁都で固定。丹本の遷都遍歴である。


「って言っても、人口密集地に大規模ダンジョンが出現しやすい問題と、それを除いても災害大国である実態もあるから、首都機能は分散されてる面もあるよねぃ。どこかが沈んでも、すぐに別へ移転できるようにって。つまりここは今でも準首都ってわけなのだぁ~」

「四都はシンコーケーでダイジって話っしょ。丁都だって挿げ替えオケな首の一本ってだけ、っつーか」

「地震やら津波やら台風やらダンジョンやら………ご先祖様は良くこの島国で生き残ってこれたよなあ……」


 まあそれで鍛えられ過ぎたせいで、開国直後にエイルビオンとやり合って痛み分ける藩、なんて歴史のバグみたいなのが育まれたのかもしれないが。徒歩の侍が馬の上の人間を一刀の下に斬り伏せたの、魔法とか関係ない剣術らしいって説、凄いを通り越して怖いよ。


「キビキビ歩け!鳥居の通りを見たいなら、ある程度は山を登る事になるぞ!」

「なめてもらっちゃあ、困りますなぁ。こちとら鍛えられてますからねぃ」

「ヨユー……」

「右に同じく」

「全然行けます!そこをいっちばん楽しみにしてたまでありますから」

「だったら名前くらい覚えろ口だけチビ!」

「あはは、おもろいわー」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 通りを歩いていたら、前で塀に寄り掛かって立っていた人が、急に話に混ざって来た。俺達が止まるのを見て、彼はユラリと背中を剥がす。


「あんたがルカイオスさんトコの三男?聞いとった話とちゃうなあ」

 

 どこか胡散臭い笑みを浮かべる美青年。白色のパーカーにデニムパンツ。すっきりとした塩顔で目は閉じられているかのように細く、目尻からは渦巻き模様が伸びる。ぴっちりとひとつもとどり状に纏められた透明度の高い青髪。

 

「どーもぉ!皆さんお揃いでぇ」

「お前はオレサマ達を知ってるようだが」


 ニークト先輩が率先して代表(づら)をしに前面へと進み出る。


「オレサマ達はお前を知らんぞ?情報の不均衡の是正も無しか?」

「ぉおっと、こら堪忍、堪忍な!」


 「たはー」と大袈裟に額を叩き、それを合図としたのか周囲を十数名の男女が囲んで来た。


「ワシ、さる御方の招待状を届ける遣いっ走りとして、この辺りの天上あまのうえ高等学校言う所から来とります、政十まさとお天万てんまと申しますぅ」


 「以降よろしゅう」、

 丁寧に、深々と、しかしこっちを上から押さえつけるように、


 その青年は頭を下げた。

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