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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十章:欲を張るなら、力を示せ 

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256.まあ、それはそれとして、ですよね part1

 9月1日、夏休み最後の日である。


 俺は模擬戦場の一つに呼び出されていた。1時間程貸切ってある。

 メンバーは他に、ミヨちゃんと、ニークト先輩の二人。

 WIRE上に、3人だけのグループを新たに作り、誰にも知られず待ち合わせをした。

 

 そう、カンナについて、先輩に説明する為だ。


 因みにこれは余談だが、先輩が俺以上にスタンプ機能に慣れてなさ過ぎて、無料のラインナップをぎこちなく使っているのが、何かおかしかった。ああ、俺もミヨちゃんとやり取りし始めた時は、こんな感じだったな、なんて、懐かしい気分もこみ上げて来た。

 

 と、ヌルついた雰囲気はそこまで、本題は極めてシリアスだ。

 何せ事はダンジョン最大の謎の一つであり、ill(イリーガル)の中でも特異な、“可惜夜ナイトライダー”についての話。本来ならすぐにでも、政府なり研究機関なりに、持ち込まなければいけない情報。

 真面目な先輩がその隠蔽に、一時的にでも加担してくれた時点で、正直奇跡に近いと思っている。果たして説得し切れるかどうか………。


 いや、説得するしかない。なんとしても納得させるのだ。これまでそうだったように、必要なら土下座も辞さない。なんとしても要求を通す、くらいの気概で行く!


 と、覚悟を決めたまでは良かったが、


「………」

「………」

「………」

「………おい」

「………なんですか先輩」

「これいつまでやるんだ」


 なんか萎えた。

 俺とニークト先輩は今、顔を至近で近づけ、目を見合わせているのだ。

 互いの頭を押さえる手が、グググと忌々しげに力んでいるのもあって、なんとも間抜けな絵面だった。

 暑苦しいし。


「いや流石にもう良いだろカンナ!この前だって結構早く終わったじゃん!」

「あれ、別にもう大丈夫ですよ」

「……っ!」

「おいこらカンナああああ!」


 同時に相手を投げ飛ばすように離れてしまった。ミヨちゃんも合わせて、しっかりと脳内世界への招待が完了している。

 やっぱすんなり行けんじゃん!今の時間何だったんだよ!何が悲しくてあんなむさ苦しい状態を継続せにゃならんのか。どうせやるならミヨちゃんであったまりたかったよ!

 先輩なんかあんなに遠くに行っちゃって……いや、応戦態勢な所を見るに、間合いを取った感じだ。まだ先輩の意識が、カンナを敵認定しているのだろう。ほら変に怖がらせるから~。


「まったく……ん?ミヨちゃん?」

「ぅンっ!?な、何かな……?」

「いや、何か気分悪い?様子が変だけど、負荷とか掛かった?」

「うん!?ううん!?何でもないよ!ただ先輩がちょっと痩せたから、一枚絵の破壊力が……」

「破壊力?……ああ、まあ、お見苦しい物をお見せしちゃったか……」

「おいオレサマの顔面を見苦しいとは何だ!」

「いや今の光景は卒倒もんでしょ。意味わかんないじゃないですか」

 確かに今の先輩は、黙ってたらガッシリした男前に見えなくもないけど、そういう話じゃないだろう。

「それはそうだが……」

「そうじゃないって言うか、ギャクニゴチソウサマじゃない!何でもないよ!うんうん!」

 

 ?

 よく分かんないが、大丈夫って言うなら良いのかな?なんか「はわぁ」とか言って、両手で顔を覆ってるけど……?


「……お、おい!さっさとしろ!」

「あ、すいません先輩」


 額に脂汗を浮かせ、どこか落ち着かない様子でいつでも攻撃出来るよう構える先輩に、シャツの裾を持ち上げて礼をするカンナを手で示して、


「紹介します。この人がカン、カンナァっ!?」


 目を疑った俺は再び振り返ってその姿を確認したが、残念ながら見間違えじゃない!

 丈が長くブカブカな癖に、胸元だけギチギチになって、灰色の肉がチラ見えしているワイシャツ一枚!

 裾がスカート代わり、っていうかそれ下穿いてる!?穿いてると言ってくれ!


「随分とその、挑戦的な見た目だな……」

「またかお前!なんで俺の友達に紹介しようとすると痴女スタイルになるんだよ!」


 俺はアタフタしながら先輩の視線を遮るように立つ。


「な、なんか穿いて!ほら露出度減らして!」

「はいはい、進君だけの生肌、勝負服、ですからね?他の男の人に、曝して欲しくないんですよね?」

「違う!恥ずかしいって言ってんの!」

「いつもは私が肌を出すと、見詰めてくれるじゃないですか?もっと喜んで良いですよ?」

「スケベチビ……お前……」

「やめろおおおおおおおおおお!」

 

 先輩の中で俺の評価がガラガラ崩れ墜ちる音がする!

 風評被害を発生させないと気が済まないのかお前!


「仕方ありませんねえ……」


 カンナの下半身が覆われていく。脚の線が出るくらいシュッとした、黒いスラックスだ。

 太腿部分とか、それ破れない?ハプニングみたいな顔してそういう事やってこない?もう全てが信じられないよ……。


「これでどうですか?注文の多いススムくん?」

「なんで俺が口うるさいみたいな感じになってるの……?」

「ススムくんが妬き餅焼きの、束縛体質なのは、事実じゃないですか」

「そ、束縛とかしないしぃー………」




 と、いつもの悪ふざけを挟まれ苦心しながらも、どうにか先輩への大体の事情説明が済ませる事が出来た。

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