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ザ・リベンジ・フロム・デップス~ダンジョンの底辺で這うような暮らしでしたが、配信中に運命の出逢いを果たしました~  作者: D.S.L
第十章:欲を張るなら、力を示せ 

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231.全軍前進! part1

「す、ぅぅぅううう……」


 魔力の循環を感じる。


 一筆書きで、円に内接する逆正三角形。

 世界で2番目に発見されたとされる、第二段階魔法陣。


 夏休み期間中の新開部の活動によって、それが作れるくらいには操作精度を上げていた。


「ふ、ううぅぅぅ……」


 魔力が発揮するエネルギーを、より強力にするだけでなく、それが感じる情報量も、より多量に、細密になっている。


「す、ぅぅぅううう……」


 優れた職人や技師は、パーツに触れただけで、それにどれだけの傷が付いているか、曲がっているか、まだ使えるか、直せるか、そういった事が分かると、聞いた事がある。


「ふ、ううぅぅぅ……」


 それと同等、もしくは、それ以上の精度。

 1つの魔力に、複数の受容器が敷き詰められているかのように。


 その状態を、目指さなければいけない。



「………うん、今は比較的少なめ」


 穴の外から流れ込んで来る情報を元に、周囲の敵の流れを見て、今がまたとない好機と見た。

 これ以上を待っていても、それが来る前に、この空間が見つかる可能性の方が高い。


「俺の方も仕込みは終わっている」


 クワトロが言った。

 

「僕からしても、気になる所ナシ!」


 これはシーズ。


「んー……!イケるわあ……!」


 なんか良くない意味に聞こえるウーナ。


「ロクさん、八雲さん、またちょっと大変になります。頑張って下さい」

「なあに、ジェットコースターだと思っとけばいい」

「舌は噛まないようにするさ」


 気遣うミヨちゃんに対して、二人は心強い言葉で返す。


「ぼ、僕の事も離さないで頂けると……ハイ……」


 戦闘はからっきしらしいディーズは、人質という意味もあって、彼女の拘束、もとい、保護を受けている。


「貴族に雇われて家出少年探してたら、マフィアと一緒に永級のモンスターの中を駆け抜ける事になるとはなあ……。クソオヤジめ…!これはもう、1杯、2杯程度の奢りじゃ済まないからなあ…!店一つ貸切らせてやる…!」


 六波羅さんは、ここに居ない誰か——多分宍規刑事——に向けて、怒りを滾らせていた。


「カワイイ背中」「ちょっかい掛けちゃう」

「言っとくけど、今の俺は半端じゃないくらい察するから。攻撃とかさせないですから」

「チラチラ見てたのに」「触りたい癖に」

「胸とコートの隙間とか」「タイツの網目とか」

「そ、そういう事言うなよ!こらぁ!」

「童貞クン、クスクス」「初心ウブウブ、クスクスクス」

「覗かせてあげよっか」「お手々挟んであげよっか」

「魔が差すのは止めんが、腕の一つや二つは覚悟しろよ?」

「腕だけ?首じゃない?」「痛いだけ?安い安い」


 ドーブル達——二人ともドーブルという名前らしい——が揶揄って来て、俺とニークト先輩で言い返す。この4人にシーズを合わせて、先頭集団になる。

 って言うか、俺の事ナメるの速過ぎでしょ。もっと俺に対して、こう、強者の迫力とか本能的危機感とか、感じないのか?感じない?あ、そうですか。


「よし、それではシーズさん、お願いします!」


「うん、僕からすると、こういうのが得意分野なんだよね。最近細かい事ばっかやらされてたから、フラストレーション?溜まっちゃって。働き方改革って奴が、必要だって思ってたんだ。あれってニホン人(ジッピー)が言ってたヤツだよね?」


 特に意味が薄そうな事を喋りながら、両拳を突き合わせ、左肩を前に出した前傾姿勢となって、


「“一方的に幸せな旅エク・カカウ・カンナビノイド”!」

 

 発進!

 瓦礫の一部を破壊しながら坂を作って駆け上がる!

 彼の魔法は発動時に決めた場所へ移動するまで止まらない、と言うより止まれなくなる呪い!それも魔力を前面に纏いながら、障害物を破壊し尽くし、最短距離で突っ切ってしまう!


「“無量の名を称えよナモー・アミター・バユス”!」

 

 コおン!

 六波羅さんが完全詠唱!


「行っッッくぞおおおお!」


 シーズが開いた道をあとの11人で喊声を上げながらのぼる!


「“割れて芽吹き戻るイマユマナ・ウィラ・コカ”!」


 立て続けにクワトロも詠唱!

 アスファルトを砕きながら左右に伸びる植物!

 勢力を少しでも散らす為の囮用!


 ジィチチ、ジィチチ、ジィチチ、ジィチチ、

 ジィチチ、ジィチチ、ジィチチ、ジィチチ、


 集団全員にビートの加護!

 

 俺と先輩が最前に先行!

 ドーブルがすぐ後ろに続く!

 

「来ます!空から!あと左の道からも!」

「了解!」

「聞いた」「分かった」


 前方に生きた雨が降り、飢えた川を氾濫させ、惨劇の波がこちらに押し寄せる!


〈アハハハハハハハギャハハハハハハハ〉

〈ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ〉


Break(開きます)!」


 魔力爆裂で隙間を穿つ!先輩と二人で中に突入!


「「ォォォォオオオオオオッッッッッ!!」」


 遅れて入ったドーブルを守りながら、ひたすらガムシャラ直進を続ける!

 俺が魔力を何度も起爆し、正面衝突コースの個体を弾き、

 それでも前や横から食い付く、しつこいのを先輩と二人でけ開き、

 殴り下ろし、蹴り上げ、ただひたすらに前へ!

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